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04:葬儀

 

 母の元に戻ると先程の女性と甲冑の男性、その二人に追加して神官と思われるお爺さんが出迎えてくれた。


 どうやら見送りの儀を明日の夜に執り行ってくれるらしい。


 家に一度帰りたい所だけれど、今は検証や犯人の証拠集めをしているので僕も入れないらしい。心苦しいけれど教会への寄付は今度にしてもらう。今は母に安らかに眠ってもらうことが最優先だ。


 城に戻ると言うウェルザード王子が父に知らせてくれるそうなので、僕が知らせるのは一人だけ。家政婦のメリナだ。彼女は現在一度実家に戻っているそうだ。それを聞いてロバードさんが知らせてくれる事になった。なんでも家が近いらしい。


 母の血を綺麗に拭き取り、三人で食事をとりながら話しをする。

 今まで色々とお世話をしてくれている女性は養子院ようごいん総責任者マザーでエミリアさん。年齢は内緒らしいけれど珍しい事にハイエルフ。

 神官のお爺さんはエミリアのんの旦那さんでアスキンさん。ハーフエルフなのでエミリアさんと年齢的な見た目が釣り合わないけれど仲良し夫婦だ。養子院の隣に併設されている教会の神官長でもある。

 二人共名字は無い。神官として神に仕える人達は総じて名字を持たない。これは神に対して一個人として相対し、信仰をするかららしい。


 ちなみに当の神様からしてみたら真摯に祈ってくれるなら個人だろうと集団だろうと構わないと言われている。

 でも少年神あのこの名前とも違うし関係ないのかな?


 今回の見送りの儀は参列者も少ないので準備は僕とエミリアさんだけで終わる。

 この見送りの儀は死んだ人への最後の別れと、神様の元へ死んだ人の魂が迷わず辿り着ける様にする為の儀式だ。魂が迷うと死霊等と言った魔物になると言われている。なので街の外で誰かが死んだときも簡易ではあるけどなるべく見送りの儀を行うべきなんだとか。

 僕としては通夜と葬式をまとめてやる様なものだと思っている。


 時間となり集まった参列者は、神官であるアスキンさんとエミリアさん。僕、父親、父の監視役でもあるウェルザード王子、母の最後共に看取ってくれたロバートさん、家政婦のメリナ、それと初めて見る次兄とその母でもある第二婦人。最後にこれまた初めて見る祖父。

 母は家族が無く、冒険者として生きていた時に父親と出会い結婚した為、ここらに知り合いが少ないらしい。そしてその数少ない知り合いは冒険者である為、依頼を受けている関係で街にはいなかった。


 アスキンさんが母の前に立ち一冊の本を開くと厳かに言葉を発する。

 「光の神の導きによって、魂が安らかなる命の源へと無事辿り着き、新たなる生命の礎となりますようにお祈り申し上げる。」

 

 光の神が誰だかわからない今、僕が頼むのは一柱の少年神。


 「魔を近づけぬ光よ此処に顕現せよ。」

 『聖なる光セイントライト


 アスキンさんが発した光魔法の優しい光に包まれて少年神の顔を思い出し祈る。


 (植oし2三美。頼む。)

 (任せて。)


 返事があるとは思わなかったけれど、『神通信オリヒメトヒコボシ』が発動したようだ。


 (それにしても僕の名前まで呼べる様になっているとはね。)

 (そんな事はどうでも良いから、母さんを頼む。)

 (そんな事って、結構重要なことなんだけど・・・。まぁいいよ。自分の世界の創神力の循環も僕の仕事だから頼まれなくてもちゃんとやるけれど、希望がある?記憶を残す事は無理だけれど君の子供に転生するくらいならできるけど。)

 (いや、転生してしまえば母様ではないのだからそんな事はしなくていいよ。ただ魔に落ちるのを防いで欲しいのと、できれば寿命を全うして幸せに生きて欲しいのを願うのは駄目か?)

 (幸せかどうかは個人の尺度だから難しいけど、次も人に生まれ、誰かに殺される様な運命を避けられる為の祝福をしておくよ。)

 (ありがとう。)

 少なくとも誰かと殺し合う運命に無ければ、この悲しみを繰り返す事は無い。

 (礼には及ばないよ。それともう一つサービス。)

 (サービス?)


 僕への回答は無く、唐突に『神通信オリヒメトヒコボシ』は打ち切られた。


 「「おぉ。」」


 その声が発せられたのは誰からだったのか。

 声を発した人も発しなかった人も驚いている。


 アスキンさんの光が治まった母の元へ天井から光が降り注ぎ、淡い光を放ちながら少年神ともう一人髪の長い女性が降り立った。少年神はこちらを見て微笑み、女性は母の頭を撫でる。


 一言も発せずに頭を撫でると再び中に浮き上りはじめ、その後に付いて行くのは紛れも無い母の姿。


 (彼女は光の女神。)


 (一柱じゃないのか?)


 (伝言も預かったよ。)


 こちらからは話しかけられないので『神通信オリヒメトヒコボシ』とは違う事らしい。ただ少年神の言葉だけが頭に響く。


 (君が生きていてくれてそれだけで嬉しいと。精一杯生きて欲しいと。)


 (わかった。ありがとう。)


 こちらの言葉が届かないのはわかっているけれど、それでも感謝を述べる。

 

 涙が止まらないけど今は止めなくても良い。


 姿が見えなくなり光の全てが消えるまで誰も一言も言葉を発する事は無かった。



ー固有スキル『神託カミサマノヒトリゴト』称号『神言ヒフミウタ』を得ました。ー


 頭の中に響くアナウンス。確認は後でするとして、言葉を失っている皆に声をかける。


 「最後のお別れを済ませましょう。」





—ステータス— 

—ルイジュ・ブラッド(3)—

種族:ハーフエルフ Lv01

職業:

スキル:『無形魔法』 Lv01

固有スキル:『神の書庫ハクタクニナリタイ』『神通信(オリヒメトヒコボシ)』『神の贋作カメンノキミ』『神託カミサマノヒトリゴト』『飛行魔法』 Lv10

称号:『殉教者ムサシボウベンケイ』『神子エルニーニョ』『天駆ける者コノソラハボクノモノ』『神言ヒフミウタ

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