17:街を人任せに作ってもらおう。
いつもより心持ち多め?
溜まっている書類を片付けている最中にわかったのは、秘書さんがいう程に街の制作は遅れていないと言う事。
秘書さんとカリズさんが奮闘してくれたのは勿論だけど、各街の責任者も自分の権限の中で最大限に頑張ってくれていたと思う。
それに職人達や住人になる人達、各国の対応もとても協力的な様に思える。
まぁ冒険者ギルドはちょっと五月蝿いみたいですが・・。
各街を回り結界と神殿ギルドの為の発行機を設置していく。
考えていた通りに街は順調に形になって行っている。
街がこれほど早く形になったのは、今まで作られて来た街とは違い塀を作らなかったからという理由もある。
いや、一応塀がないといったら嘘になるか。「ただし、塀と言うよりは柵」という注意書きが付くだけで。
木を組み合わせて街の外周においているだけなので、弱い敵はともかく人を襲う様な魔物達を防ぐ事はできない。それを補っていたのが竜族の存在だ。
実力は大抵の敵に対応できるし、その存在を固辞すれば基本的に魔物は近寄ってこない。これはルーファやリファイタさんたちと過ごしているうちに気付いて居たけれど今回の事で確信が持てた。
獣達は絶対的な強者に挑まず、その差に気付かないのは人だけという事実。
盗賊より獣達の方が賢く見えるよ・・。
ルファの国は7つの都市から構成される予定で、現在は5つの街の建設と今まであった1つの街を整備中。
今回の新しい街の建設に伴って各街の名前を決めることになった。
まず、既にあった唯一の街が火の都市サラマンドラで国の一番西に位置する事になる。
反対に一番東に位置するのが風の都市シルフィールド。オビリオン王国がとの交易都市で、向こうが認めるならば自由都市国家群との交易都市にもなる予定。
その自由都市国家群の南に存在する農大国ギムル。そことの交易都市になる予定なのが土の都市ノーム。ノームからはサラマンドラとシルフィールドとの街道も整備している。
僕が引きこもっていた宿を中間点としてオビリオン王国から行く事ができる様にする港湾都市が水の都市ウンディーネ。
ウンディーネからルファの国へ直接来ようとすると、光の山岳都市ソールへと来る事になる。その名の通りケイラク山脈にそびえる山の中に存在する都市で、規模はそれほど大きくないけど代わりに石造りの街並はギリシャの神殿とマチュピチュを混ぜた様な美しい都市になる予定だ。
光の都市ソールから火の都市サラマンドラへは山道が続くことになるけど、途中に存在するのが闇の都市ルーナ。地竜達が掘り、ドワーフ達が固めたトンネルを抜けた先にある大渓谷を使った都市で、周りに出て来る魔物を考えないで良いのならば一番静かで自然豊かな都市になるだろう。
各都市には何故か各属性に適したダンジョンが存在している。
勿論僕が作ったから各都市にダンジョンがあるのだけど、世間的には何故かということになっている。気付く人は何となく気付いているし、冒険者ギルドを始めとする対立組織は怪しんでいるのだろう。
残念ながら証拠が無いので僕が作ったとは世間に知られる事は無い。
ダンジョンの基礎となる魔晶石の属性によりそのダンジョンの属性が定まるらしく、そこに出て来る魔物の種類やアイテムの種類が決まって来る様なので各都市に属性の冠をつける事になった。
名前を女神達から貰ったのは、この世界において属性とそれを司る女神達の存在は大きく子供でも知っている名前の為、皆が覚えやすいだろうという考えからだ。
恐れ多いと言う人達は特に竜族に多かったが女神達は喜んでくれたし、6大竜王を通して女神達の許しを伝えてもらったので、かえって都市に対する思い入れが強くなったみたいだ。
街の警護や建設に力を注いでいるのはこの影響が多分にあるのだと思う。
さて、水の都市ウンディーネを除く五都市の中心に作る予定なのが首都ルファになる。
全ての都市が完成してからそのノウハウを活かしてより良い首都を作る予定なので、その予定場所にはまだ何も無い。
この首都の名前については、女神達の名前の都市があるのだから少年神が自分の名前を付けろと言って来たけれど、それは無理な相談で国の名前から名前を決めた。
少年神の名前をつけなかったのは、まずこの世界で創造神の名前が無い事と創造神の信仰が希薄であることが挙げられる。僕や女神達は少年神の名前を知っているし、人に伝えても良いのだけれど、彼の名前は神語であり普通の人には理解する事ができないのでやってない。
まぁ、世界創造の際に女神達の名前だけを伝えて自分の名前を伝えなかった少年神が悪いのだから、諦めてもらうしか無い。
交易とダンジョン以外にこれと言った産業は今の所無いけど、街が完成し順調に行くようだったらばその先の展望もある。
各街の特色を使った物と、街道を利用した物の二つで、分りやすいのは水の都市ウンディーネ。
周辺に作成予定の村落での漁業とタルヴォさん達の宿を中心とした温泉街。温泉街のほうは安全な街道を使った観光を銘打つ予定だ。
他にも観光や農業、学問等色々な案が皆から寄せられているけれど、まずは各都市を作り上げる事を優先している。
街を回り、話しを聞くと基本的にいうことは皆同じ。
「人の世界に慣れぬ竜族には荷が重い。」
「今の仕事ですら一杯一杯である。」
「神託を受けた方(僕)の仕事をするなんて恐れ多い。」
「力を持つ者が上に立つべきである。」
「先の事を考える余裕が今はない。」
こんな感じだ。
まず各街の責任者は全員竜族で、各都市の属性に則した竜族を竜の里より派遣してもらっている。
つまり、火の都市には火竜。地の都市には地竜といったようにだ。
彼等は次世代の6大竜王になるのだけど、ここで彼等竜族の仕組みを説明しよう。
竜族は大きく分けると4つに分ける事ができる。
一つ目が言わずと知れた6大竜王。竜族のトップで女神達の神託を直接受けるとされている。
二つ目が竜の里。ここでは幼竜の生育及び教育をすると共に各地へ散らばっている竜族の連絡所ともなっている。また、ここを取り仕切るのは各属性竜の老竜達で一部では長老衆とも言われているらしい。
連絡所であるがために6大竜王からの指示もここから伝えられる事が多い。
三つ目が先程話した次世代の6大竜王とみなされている竜達で、各属性竜の中で二番目に力の強い竜が選ばれる。一番目は6大竜王だ。彼等は普段仕事がある訳でもないので他の竜と同じ様に過ごしているが、強い竜族が残す魔核を優先的に体内へ取り入れたり、現役の6大竜王に仕事を言いつけられたりするらしい。
かつてルーファがグアスランドさんの魔核を食べたのはこれにあたり、ルーファは次世代の風竜王らしい。もっともルーファは未だに幼いのと、既に国の名前になる程に責任あるとみなされて街の責任者には向かないと判断された。その為にルーファのお母さんが街の責任者を務めている。
ちなみに次世代の火竜王はカリズさんらしい。
リファイタさんもカリズさんも酒好き、食事好き、仕事はさぼり気味と何となく共通点が多いのはこの所為なのだろうか?
最後の四つ目はこれら三つのグループ以外の一般の竜ということになる。
このように各街の責任者は次世代の竜族のトップであり、かつ、6大竜王の次に力をもつ人達をいうことになる。
そんな彼等を呼び出す事にした。
勿論秘書さん達には断っている。ちゃんと断らないと後が怖いからね・・・。
場所は首都の建設予定地。何処でも良かったのだけど、ここなら誰も居ないからというだけだ。
「それで何の用だい?仕事を抜け出させてくれたのは嬉しいけど、このメンバーを見る限り飲み会ってこともなさそうだし・・。」
カリズさんが頭をかきながら僕に聞いて来た。
他の竜達も僕に注目している。
「飲む物も食べる物も用意していますが、まずは準備です。」
「準備?まさか今からここで作るのかい。」
「いえ。こうです。」
特殊な結界を展開。
皆が何かを言う前に召喚魔法を同時展開。
僕の周りに浮かぶ6個の魔法陣。
召喚魔法を見た驚きか、魔法の同時展開を見た驚きか、話しかけて来る人は居なかった。
邪魔もされなかったので召喚魔法はちゃんと発動。
色々な色の光の後に現れたのは6柱の女神達。
「呼ばれて。」
「飛び出て。」
「じゃんじゃかじゃーん。」
「どんどんパフパフ。」
「女神戦隊。」
「メガミンジャー・・・。」
最後乗り切れていないノームさんだけが嫌そうな顔をしている。
竜の皆が驚くのも無理は無い。
こんなノリ、僕も知らなかったもの・・・。
「えっと紹介しますね・・?」
固まってしまった竜族の皆さんに話しかけるべきか、女神達に話しかけるべきか。
悩んだ僕は女神達は放置して竜族のフォローに回る事にした。
「信じられないかもしれませんが、女神様達です。」
「あ、あぁ・・。」
「右から準にノームさん。ウンディーネさん。ソールさん、ルーナさん、サラマンドラさん、シルフィールドさんです。」
「うん。わかる。わかるんだが・・・。」
カリズさんだけがかろうじて反応しているけれど、他の皆はまだ固まったままだ。
「ちょっとハズしたんじゃない?」
「だから私は嫌だったんです。」
「ノームが中途半端だからじゃないの。」
「やっぱり戦隊物より魔法少女のほうが・・。」
なんかごちゃごちゃ言ってる。
「普通じゃ駄目だったんですか?」
「「「「「駄目よ!」」」」」
「だ、そうです。」
ノームさんの瞳は既に諦めを物語っている。
「ルイジュが構ってあげないから姉様達はアニメや特撮を沢山見ていたみたいですよ。」
「それで、はまったと?」
「そのようです。私としては時代劇を見たかったのですが、数の暴力に屈しました。」
そう言うノームさんはよく見ると着物を着て、日本刀らしきものを腰に挟んでいる。
彼女も少なからず影響を受けている様だ・・。
「創造神に言ってもう一台テレビを作ってもらえない物でしょうか?」
「いや、それは僕にはどうしようも・・。」
島のテレビは何時の間にか地球の番組が見てる神仕様へいつの間にか変わっていた様だけど、やっぱり創造神の仕業か。
「というわけで、これ以上姉様達が変にならない為にもルイジュを定期的に帰して欲しいのです。」
「はぁ・・。」
うん。カリズさん。
その何とも言えない様な顔、全てを物語っているよ。
「よくわからない」でしょ?
「その為に貴方達が責任者となり、皆を導きなさい。」
「それは御命令でしょうか?」
「いえ、あくまでも女神達からのお願いです。」
互いの立場を考えた時に命令もお願いも変わらない気がするぞ。
現に気を取り直した竜達はその場に跪いて頭を下げてしまっているし。
「そもそも荷が重いだ、よくわからないだと、ルイジュだってよくわかってないですから大丈夫です!」
その意見には全面的に賛成だ。
「今直に全てを引き継げとは言いませんが、各々の街くらいなんとかして下さい。」
「よいですね?」
「私達の名前を冠しているんだ。良い街にしろよ。」
「困った事があったらルイジュが相談に乗るから大丈夫ですよ。」
「そうですそうです。」
女神達のお話し合いも終わった様だ。
「では、乾杯しますか?」
「良いわね。」
「ルイジュ。出して出して。」
「はいはい・・。」
「はいは一回でいいのよ。」
動けぬ竜達を横目に空間収納からテーブルや椅子、そして料理とお酒も取り出し、所狭しと並べて行く。
「よし。皆さん座って下さーい。」
「折角だから、カリズはこっちへ来い。」
「あら、良いわね。」
女神達は自分の属性と同じ竜族を隣に座らせるらしい。それぞれ引っ張って行って自分の隣へと座らせた。竜族の源が女神達なのだから、子供や孫の様な感じなんだろうか?
残った僕はカリズさんとシルフィールドさんの間の余った席へと座る。
「じゃ、皆の親睦と国の発展を祈って。」
「「「「「「かんぱーい。」」」」」」
女神達の唱和で、よくわからない宴は始まった。
まぁ和やかで、女神達がとても楽しそうだ事だけは記しておく。
何人かの竜は結構親しげに話す様にもなっていたしね。
胃薬が必要になった竜族がいたことも、紛れも無い事実だけど・・・。
300ptを越える事ができました。
新記録樹立中です。ありがとうございます。




