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02:我慢できんかったです。。。

 四度目の目覚めも天井を見ていた。三度目と違うのは母親が居ない事。

 それだけを確認すると我慢していた事を試す。


 勿論『飛行魔法』だ。


 使い方はわかる。ありがたい事に知識も魔力操作も身体制御も少年神が習得させてくれている。


 ゆっくりと。


 ゆっくりと魔力を込めベッドから浮く。

 赤ん坊体は弱いので万が一を考えて高さは出さない。

 その代わりにベッドの上を軽く移動し最後はうつ伏せになってベッドに降りる。


 やばい。


 楽しい。


 顔がにやける。


 早く空を飛びたいものだ。



 そんな思いは声と共に体を持ち上げられた事で吹っ飛んだ。


 「今飛んでいたわよね!?もう魔法が使えるの?でも空飛ぶ魔法なんてあったかしら?」


 どうも母親に見られていたらしい。

 そりゃベッド周りに居なくても目の届く範囲に普通は居るよね。

 考えが甘かった。


 反省している僕を再び僕をベッドに置くと母親は足早に部屋を出て行った。



 まずったかな?







 二日後、父親らしき人物が神官を伴ってやって来た。

 生まれた日から父親を見たのは初めてだけど、母親との会話からわかった。それと、どうやら父がエルフらしい。特徴的な尖った耳が母とは違う。

  

 「よろしいですかな?」


 「お願いします。」


 父親の許可を得て神官が僕の額に金属を置くと呪文を唱え始める。


 「神の祝福の元この子供にルイジュの名を授ける。」


 これは命名の祝福だ。本来は一年目の誕生日にやるものだけど、母親が魔法を見た事により大分早まったのだろう。

 魔法の発現が見られる子供には早めにやると少年神が言っていたし・・。


 「神の名の下にルイジュの魂の顕現を願う。『創造名刺クリエイトステータス』」


 僕の額の金属が小さい一枚の板になる。

 こちらからは見れないけれど、手にもつ父親にはこう見えている事だろう。


ールイジュ・ブラッド(0)ー

種族:ハーフエルフ Lv01

職業:

スキル:

固有スキル:『飛行魔法』 Lv01

称号:『翼を得た者ヒナドリ



 「むっ。」


 名刺ステータスを見て父親が短くうなり母親に渡す。同じように母から渡されて確認をし、少し驚いた様子の神官と嬉しそうな母親を連れて父親は別室へと移動して行った。



 固有魔法がバレた訳だけど心配する様な事は特に起きなかった。変化と言うならば一週間に一度くらいは父親が顔を出す様になった事と、母親が読み聞かせてくれる絵本が勇者の物から魔法使いの物に変わったくらいだろう。



 順調に月日は流れ三歳の誕生日も過ぎ、すでにハイハイも掴まり立ちも卒業している。意識が飛ぶ事も少なくなり、言葉も話し始めた。最初に発した言葉は「ハハ」。勿論母親を喜ばせる為だ。父親についてはまだ何も言っていないけれど、今か今かと待っているのはわかる。次はしょうがないので「チチ」にしてやるつもりだ。いや、一週間に一度なのだしもっと遅くても良いか?


 そんな平和は突然と破られた。


 大きな物音と声。


 部屋に入って来た母親は僕を抱えると窓から外へ飛び出して走りだす。


 「ごめんね。泣かないで。」


 そう言う母親の声の方が泣きそうだ。

 

 「ハハ・・・・。」


 追いかけて来る足音は複数。どれくらい近いか判らないけれど何本かの矢が頭上を通ったのは見た。


 「待てっ!」


 制止を呼びかける男の声は前方から。黒い服に身を包み剣を上段に構えている。


 勿論母親は待たずに走る。


 『ウィンドカーテン!』


 魔法の発動と共に男の横を駆け抜け、その足が止まる事は無い。


 後ろから付いて来る足音もまた止まらない。


 どれほど走ったのか。母親の息は激しく乱れている。


 「止まれ。何者だ。」

 

 先程とは違う男の声。母親の足が止まった。

 合わせて追いかけて来た足音も止まる。


 「この子を。よろしくお願いします。」


 「何があった。」


 「名前はルイジュ。私の子です。よろしくお願いします。」


 男にもたれかかる様に僕を預けると母親はその場に倒れた。

 振り返り見れば母の背には三本の矢。それに右肩は斬られ胸元まで服は引き裂かれ全身を赤く染めている。


 「あぁ。子供は任せろ。」


 「ありがとう・・。」


 「しっかりしろ!!おい!医者と治療師を急げ!!!」


 男が叫ぶ中母親の手がこちらに伸びる。


 「ルイジュ・・・。」


 僕も手を伸ばすと男が僕を地面に下ろしてくれた。


 「ハハ様。」

 

 その手を握る。


 「ルイジュ・・。いっぱい生きるのですよ。愛しい子・・・・・。」


 その手から力がなくなり母の手の重さが増した。


 「ハハサマ・・・・。」


 目が熱い。



 頬も熱い。



 ただ母の手だけが冷たくなって行く。



 涙が止まらない。






 こうして僕は二人目の母を失った。



 



一話あたりの文字数はどれくらいが読みやすでしょうか?

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