23:新生活始まってます。
結局ソールさんも朝まで残こって朝食を食べていった。朝食は残ったすき焼きと卵をご飯にかけたものだけだったけど、満足そうだったのでいいよね?
それから暫くは入れ替わり立ち代わり女神達がやって来て裁縫をし、食事を取り、一緒にお風呂に入っていった。
彼女達の話しに寄よると、少年神は仕事が溜まっていて来る事が暫く来れないらしい。
また、布や食事代として彼女達が使っているいくつか道具をくれたけれど、いずれも神具なので換金したら問題が出そうだ。それでも色々と欲しいものがある様なので僕が稼いでこないといけないだろう。ちなみに神具は何かの拍子に世に出回るのも恐いので、この島限定の制限を掛けてもらった。
一例をあげるとこんなものがある。
ー神具:神の裁ちバサミー
切れぬのもは蒟蒻のみ。一説には某怪盗三世の仲間が使っていた刀を打ち直したとか。ルイジュの島よりの持ち出し不可。破壊不可。
武器に転用したとしたら・・。恐ろし過ぎるわ・・・・。
「これはーー?」
「それは毒だ。」
「こっちはー?」
「それも毒だね。」
今日は珍しくギルドの依頼を受けて薬草を採取している。
基本的に街間の配達だけで大丈夫なのだけど、ル―ファが人形に成れる様になったので山の幸を二人で探すついでに薬草採取をする事にしたのだ。
ルーファもアケビや山菜など今まで食べたことが無いものを採れるとあって楽しそうだ。
ちなみに会話からも分る通り、ルーファは毒キノコの違いとかは判断できない。
彼女が毒の有無を判断できないのには訳がある。植物に詳しくないというのもあるけれど、彼女は毒すらも食べる事が出来る為に違いを意識する事が無いらしい。
竜によっては毒を好む竜も居る様だけどルーファは「苦くて美味しくないからすきじゃないー。」ということなので、今回収穫した毒は薬なんかに使うつもりではある。
まぁそれはともかく今夜は山菜の天婦羅とキノコご飯かな?
「んまーい。おかわりっ!」
ルーファがキノコご飯を一気にかき込んでこちらにお茶碗代わりの丼を突き出した。
人形に成ったといってもその正体は竜。ルーファの食べる量はこの家の中で一番多く、時にはその体の体積以上の量を食べる事もある。
「ほら。」
「あ、私にも下さい。」
「こちらもお願いします。」
「はいどうぞ。」
シルフィールドさんとノームさんにもご飯をよそう。
「むっ。」
「そんなに急ぐんじゃない。まだあるから。」
ルーファが再び丼飯をかき込もうとしたので注意する。
折角食べるのだから味わって食べて欲しい。
「ほんと?」
「ああ。まだ半分以上ある。」
「ならいいや。」
「残ったらオニギリにしておくから夜中に食べたくなったら食べてもいいぞ。」
「はーい。」
といいつつも自分のお茶碗にもキノコご飯をよそう。
炊飯釜の中は話した通り、まだ半分以上残っている。この炊飯釜は二升炊き。つまり一升以上残っているということなのでそうそう無くならない。
それでも今日は久々に女神が勢揃いしているのでこのペースだと食べきる事になるかも。女神達もその体からは予想できない程食べるのだ・・・。
少年神はあれ以来会っていないので良く知らない。
別に呼んであげない訳ではなく、ただ忙しいらしい。どう忙しいのかは女神達に尋ねても笑っているだけでよくわからないけれど、聞いた所で神の仕事とやらを手伝える訳もないので良く聞いていない。
連絡した時に涙声だったのでよっぽど忙しいのだとは思う。
ちなみにこの炊飯釜もまた神具である。
ノームさんとサラマンドラさんの共同作品で名を「炊飯戦隊三号」。三号なのはその前に二台作っているからで、効果は次の通りになる。
ー神具:炊飯戦隊三号ー
ご飯のおいしさに神々がこだわり作り上げた一品。土鍋で炊く美味しさを備えながら全自動で炊き上げてくれる。保温・予約機能は勿論、炊き込みご飯、おこわ、お粥等、白米以外も美味しく作る事が出来る。
ルイジュの島よりの持ち出し不可。破壊不可。
一号と二号も同じ様なもので、大きな違いは一号が5合炊き、二号が1升炊きという事ぐらいだ。段々と大きくなっていくのは彼女達の食事量が増え続けている為だが、一応これ以上の大きさは作らない事にしている。
だって女神様はいくら食べても太らないと言っても、僕が量を作るのが大変だからさ・・・。
こんな感じに家の中はだいぶ住みやすくなってきた。
家具家電の類いはことごとく神具にバージョンアップされているし、家や風呂も女神達の手で強化が施されている。いつの間にか拡張された部屋は女神達の私室となり、同様の技術で食料庫はいくらでも入れる事が出来る収納へと進化した。
家庭菜園は最早農園と言える規模の上に四季を無視した状態で、どの野菜も何時でも収穫可能。最近は僕とルーファで集めた植物も増えて、僕は何処に何が植わっているのか最早分らなくなった。その他にも新たに池が生み出され、そこには淡水の魚が放流されている。といっても養殖という訳ではなく、池から伸びた川が島中を巡り、それぞれに則した自然環境が形成されているらしい。
特にサラマンドラさんは渓流での釣りがお気に入りらしく、山の中には幾つもの渓流が生み出されていてそこに良く通っている。なんでも渓流事に住む魚の種類がちがうんだとか。
シルフィールドさんのお気に入りは裁縫。特に洋服作りで彼女の部屋にはミシンや織り機の様な神具やマネキンが並んでいた。素材は買って来たものだけでなく、僕とルーファが狩った獲物の皮や魔石なんかを使っているらしい。特に魔石から作り出したという布は軽くて肌触りがいいので僕のお気に入りだ。
この布も売るのはヤバそうだけど・・・。
他の女神達にもそれぞれお気に入りの趣味がある。
ソールさんはお菓子作り。調理器具が充実しまくっているのは彼女の影響が大きい。
ルーナさんは風呂と酒と昼寝。趣味なの?と聞きたくはなるけれど、本人曰く最高の娯楽で、特に露天風呂→酒→縁台で昼寝のコンビネーションが最強らしい。今度、将棋でも用意してあげようかね?
ウンディーネさんは演奏。自分で楽器を作り出す事もあるし、他の女神に作ってもらう事もある。どのようにしたのかは分らないけれど、複数の楽器を同時に操って曲を奏でたのには驚いた。
ノームさんは陶芸。特に神具を作り出すのではなく、普通の道具で色々試行錯誤して作り出すのが楽しいのだとか。うちの食器の大半は彼女の作品だ。近々ガラス制作にも手を出したいと呟いていたけれど、どうするのかな?
こんな風に過ごしている女神達だけど、基本的に島から出る事は無い。
唯一の例外は船を出しての海釣りくらいだろう。船と言っても小さなボートなので島からそう離れる事は無い。
彼女達が島から離れないのには理由がある。
最初は召喚主である僕から余り離れることが出来ないのかと思ったけれど、違うらしい。通常の召喚の場合は召喚主から離れれば離れる程力は弱くなり、維持に必要な魔力も増えるらしいけれど、彼女達にそれは通用しないとのことだ。理由は神様使用だから。
じゃあ何で?と訪ねると話しは簡単で、世界に対して無闇に影響を与えない為なんだと。
むやみやたらに神具を生み出しているけれど、殆どは島から持ち出す事が出来ないし、外と内の複合結界によって神の力が漏れない様にしているらしい。
なので必然的にこのような事態が発生する。
「ルーファちゃんが言ってた高楼鳥の皮焼きが食べたいなー。」
「コンランの83年物を探して来てくれ。」
「銀鉄が足りない!」
「新しい柄の布があったら買って来て下さい。」
つまりお使いである。
さらに言わせてもらうと女神達がお金を持っている訳もないので、全て費用は僕持ちとなる。神具の事を考えたら安いのだろうけれど、僕が稼ぐのにはどうしても限界がある。
依頼もそうだし、狩りもあまりに狩りすぎると獲物が減るし、素材は過剰供給で値下がりしてしまう。実際に一角野牛は数が減ったしまったので今は狩るのを止めているくらいだ。素材に関して言えば他の大陸や離れた街に持っていけばいいのだろうけれど、それでも限度はあるだろう。なにより新しい街で色々と訪ねられるのは面倒臭い。
どうしようか?




