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19:引っ越し祝い。

 

 「あっ。さすがにキツかった?」


 そう聞かれても答える元気が無い。

 息をしつつ体調を整えるのに専念しないと四つん這いになっているのも厳しい。


 「ちょっと待ってね。」


 少年神が僕の背に手を置くと、その手の置かれた所から温かなモノが流れ込んできた。それは体の中心から次第に体全体へと広がっていき、次から次へと流れ込んで来る。そして流れ込むに連れて体に力が戻り、呼吸も落ち着いて来た。


 「大分良くなったよ。」

 「うん。でも念のためもうちょっとね。」


 僕が立ち上がろうとするのを押さえて、さらに大きな力が流れ込んで来る。


 「あつっ!」

 

 先程までの暖かさとは異なり鋭い熱さが体を駆け巡る。


 「熱い!えっ。痛っ!!痛いって!」


 熱さは痛みへと変わり、立ち上がる事無くその場に転げ回る。


 「あれ?」

 「るいじゅになにしたのーーーー!!」

 「ごめんごめん。魔力あげすぎちゃったみたい。暫くすれば収まるから大丈夫だよ。」

 「本当にー?」

 「神様嘘言わない。」

 「るいじゅだいじょうぶー?」


 ルーファが心配してくれるけれど、痛みで答える余裕が無い。

 10分だろうか。30分だろうか。1時間と言われても納得できる。

 暫く地面を転がりながら痛みに耐えていると不意に痛みが引いた。


 「おっ。適合したみたいだね。」

 「適合?」

 「さっき立つ事が出来なかったのは魔力が尽きかけていたから。そこで僕が君に魔力をそそいであげたんだけど、今後の事を考えて多めにあげたら君の容量を軽く超えちゃったみたい。」

 「超えたからあの痛みか・・。」

 「そんな恐い顔をしないでよ。おかげで魔力の容量が増えたんだから。今までのおよそ10倍。今の世、人の身でこれほどの魔力を持っている人は居ないと思うよ。」

 「その人の持つ魔力より多くの魔力を注げば容量が増えるってことか。」

 「その通りだけど試さない方が良いと思うよ。」

 「どうして?僕の魔力が凄いなら喜ばれると思うけど?」

 

 人類で一番なら商売にする事も出来そうな物だけど・・・。


 「基本的に、魔力の譲渡は僕達の専用スキルだし、人の身でやろうとするなら研究と実験を繰り返した上で身につけられるのは100の魔力に対して1を与えられる程度の物。それに相手の容量以上の魔力を与えるという事は、その容量を壊す事でもある。よほど上手くやらないと・・。わかるよね?」

 「魔力が無くなると。」

 「うん。この世界で魔力は生命力とも深く関わっているから、最悪の場合死んじゃったり、植物人間になったりしちゃうかも。」

 「人の身には過ぎた技ってことか。」

 「そういうこと。」

 「まぁ、痛みはむかついたけど、魔力が増えたなら良しとしてあげるよ。それより何でここに?というよりもどうやって?」

 「いやー意外と大変だったんだよ?」


 腕を組み何かを思い出すかの様に話し始めた。


 「まず召喚陣を用意するのに・・・。」


ピッシャーン!ドンッ!!

 話し始めた少年神に雷が落ちた。


 光の後に残っていたの少年神はぴくぴくと手足を痙攣させ、髪の毛はドリフの様にクルクル、体の一部が焦げ付いている。


 「大丈夫か?」

 「あー。うん。メンド・・。いや、わかったって。」


 顔を上げず地面とキスをしたままぶつぶつと呟き始めた。


 「だ、大丈夫か・・・?」

 「頼むから。あっそれはずるいって。」


 さすがに神様なんだし死ぬ事は無かったみたいだけど、頭の方が・・・。

 心配のあまりルーファと見詰め合っていると、ようやくに顔を上げて立ち上がる少年紳。


 「ルイジュ。これにも魔力を通してくれない?さっき程は魔力は使わないし、体調が悪くなる事も無いはずだからさ。」


 彼が懐から出したのは先程と同じ様な紋様が書かれた紙。


 「他にも召喚しろと?」

 「うん。頼むよ。そうじゃないとまた雷が落ちて来る。」


 空を見えげても雲は無く、落ちて来る様子は無いけど、神に起こる不思議を自然現象と一緒にしない方がいいだろう。それにあの雷が僕やルーファに落ちたらと考えると、ぞっとする。

 まぁルーファなら大丈夫かもしれないけどさ。


 「やってみるけど、気持ち悪くなったら魔力譲渡してよ。痛くならない範囲で。」

 「了解。了解。」


 恐る恐る一枚目の紙に魔力を通す。

 

 「えっ?」


 一枚目だけに通したつもりだったのに他の紙にも魔力が通り、さっきと同じ様に光を放ち始めた。

 少年神あいつはさっき程は魔力を使わないと言っていたけれど、僕の感覚では同じ様に感じる。それでもそれぞれの魔法陣を観察するだけの余裕があるのは、魔力量が増えたからなのだろう。

 今回の光がさっきと違うのは、放ち方や色に違いがあるところだ。黒かったり緑だったり、淡く光ったり点滅したりと見方に寄ってはイルミネーションの様で綺麗だ。


 「きれいだねー。」

 「なんか優しい感じもするね。」

 

 心配してか、傍らに寄って来ていたルーファと喋りながら6つの光を見続ける。

 なんとなく出て来る人?の正体はわかっている。


 最後に大きな光を放つと、現れたのは6人の女性。

 背の順に並んでおり、一番右が一番大きい。そして身長に比例して胸の大きさも変化している。


 「久しぶりね。覚えているかしら?」


 こちらに声をかけてきたのは一番右の女性。神は金髪、優しく微笑んだ顔は相変わらず整っており、180を超えるであろう身長と比較してなお大きな胸。服装は胸元が空いた白いドレスな為、綺麗な鎖骨からのラインと相まってドキドキしてしまう。


 「はい。母がお世話になりました。」

 「光の女神として当然の事よ。お母さんの魂は綺麗で優しかったわ。」

 「そうですか・・。」

 「あの人の子供でもあるルイジュ君には興味があったのよ。よろしくね。」

 「こちらこそお願いします。」

 

 差し出された手を握り返す。想像していた以上に障り心地が良い。


 「私は闇の女神ルーナ。月の女神でもある。それと空間魔法と召喚魔法の担当もしている。よろしく。」

 「はい。」


 ルーナ様は長い黒髪を腰の辺りまで流し、黒いドレスを身にまとっていて、光の女神ソール様と対称とする様な佇まいだ。


 「サラマンドラだ。火の女神を務めている。よろしくな。」


 火の女神だけあって髪の毛は燃える様な赤。目も赤いけど、肌は褐色。それと、握手した手は少し体温が高い感じがした。


 「水の女神ウィンディーネよ。水で困った事があったら何時でも言って下さいね。」


 ルーナ様がソール様と対称だとするならば、サラマンドラ様と対称なのはウィンディーネ様。髪と目は水色、肌は白く、どちらかと言えば凛々しいタイプのサラマンドラ様に対して、ウィンディーネ様はホワホワと優しく包んでくれそうなタイプだ。

 次に待っている女神様は一見中学生くらいに見える方で、薄い緑色の髪の毛を無造作になびかせ、優しい笑みを浮かべている。


 「私は風の女神シルフィード。ルーファがいつも仲良くしてもらっているわね。」

 「僕の方こそ助けてもらってばかりで。」

 「うん。なかよしなの。」

 「ふふ。それにルイジュ君の纏う風は気持ちよくて素敵だわ。これからもよろしくお願いするわね。」

 「はい!」


 握手して驚いた。握った瞬間に体を風が駆け抜けた。


 「これが貴方の風よ。強いけれど優しい風。うふふ。」

 「ルイジュはやさしいの。」

 「そうみたいね。」


 ルーファが風竜な為なのか、シルフィード様とルーファは仲が良さそうに見える。


 「最後に私が土の女神ノーム。グアスランドが貴方に感謝していたわ。ありがと。」

 「そうですか・・・。僕も感謝しています。」

 「一つ言っておくけど、別に末っ子というわけじゃないからね。」


 ノーム様がそういうけれど、見た目は完全に末っ子だ。皆どことなく顔が似ているので余計にそう思ってしまう。特にノーム様は身長も胸も小さいので、見た目だけだったら僕よりも小さいかもしれない。


 「ルイジュ君。私達とも仲良くして下さいね。」 

 「はい。」


 ノーム様まで挨拶と握手をし終わるとソール様が改めて話しかけて来た。


 「では契約を。」

 

 言うや否やオデコにキスをされた。


 「えっ!?」

 「では私達も。」


 オデコに2つ。右ほっぺに2つ。左ほっぺに2つ。


 「まぁキスでなくても良いのですけどね。」


 顔をほのかに赤くした僕にソールさんが教えてくれた。


 「でもこれで何時でも私達を呼ぶ事が出来るようになったわ。もっとも私達が来たくない時は無理だけどね。」

 「あの召喚陣に魔力を通せばいいのですか?」

 「いえ。呼び出したい相手をイメージして魔力を発動するだけで良いわ。絶対の召喚ではないのは私達が女神という力が強い存在だから。ルイジュ君の力だったら殆どの相手は無理矢理召喚できるだろうけど、マナー的にも注意する事ね。」

 「召喚する様に魔力を使えば会話も出来るから有効活用すると良いわ。」 

 「服脱いでいたら恥ずかしいですしー。」

 「ま、どうしてもって言うなら来てあげるわ。」

 「あら、ノールちゃん来るの楽しみにしていたのにそんなこと言っちゃ駄目よー。」


 女三人寄れば姦しいと言うけれど、これは女神にも当てはまるらしい。

 ルーファを交えてお喋りが次々とまわっていく。

 いつの間にかテーブルが庭に置かれてお茶まで用意されているわ・・・。


 「ま、僕も契約しといていいかな?」

 「あ、うん。」


 取り残された形の僕と少年神で握手を交わす。


 「これで契約数は8。あとは2枠。よく考えて契約しな。」 

 「10人まで契約する事が出来るのよ。」

 「召喚魔法のLVと同じだけの数を契約できる。今回は僕を召喚する為にLV10にしておいたよ。ま、引っ越し祝いとでも思ってくれ。それにこうして現世に来れるという事は、僕達も嬉しいしさ。」

 「やっぱりそうそう来れないのか。」

 「教会とかなら少しは顕現できるんだけどね。食事とかをとるにはこうして召喚してもらうしかないんだ。あ、ちなみに召喚中は相手の力量に対して魔力が消費されていくからね。ルイジュの場合は阿呆みたいに魔力があるし、その所為で回復速度もアホみたいだから使ったそばから回復しているから問題ないけどね。」

 「それでも神の召喚を人の魔力で支えられるって結構省エネ?」

 「まぁ僕の場合戦ったりはしないし、力を押さえているからね。それに飛行魔法の為に最初から人類最高峰の魔力を持っていた君の10倍以上って、魔力を知ることが出来る人がたら呆れるか怯えると思うよ?」

 「そんなにか・・・。ま、魔力が尽きるまではゆっくりしていく?」

 「うん。料理楽しみにしているからね。ちなみに何もしないでいれば尽きるまでに千年単位の時間が必要だから。」


 

 どうやらこの少年神くいしんぼう、食事の為に顕現したらしい・・・・。



 あれ?8枠????






—ステータス— 

—ルイジュ・ブラッド(11)—

契約:竜刀りゅうとうグアスランド(創世神、六女神、七竜)

種族:ハーフエルフ Lv69

職業:冒険者(B)

スキル:『無形魔法』 Lv06『光魔法』Lv05『闇魔法』Lv05『火魔法』Lv09『水魔法』Lv06『土魔法』Lv06『風魔法』Lv10『識別』Lv09『重力魔法』Lv10『空間魔法』Lv10『時間魔法』Lv10『召喚魔法』Lv10

固有スキル:『神の書庫ハクタクニナリタイVer1.1』『神通信(オリヒメトヒコボシ)』『神の贋作カメンノキミ』『神託カミサマノヒトリゴト』『飛行魔法』 Lv10

称号:『殉教者ムサシボウベンケイ』『神子エルニーニョ』『天駆ける者コノソラハボクノモノ』『神言ヒフミウタ』『創世神の加護キミハボクノモノ』『老地竜グアスランドの祝福』『老地竜グアスランドの弟子』『若風竜ルーファの祝福』『若風竜ルーファの友』


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