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17:引っ越し

 

 タツギさんを連れて飛び回り、材料を確保すると島へと運ぶ。そこには弟子の皆さんが既にいて、次々と材料を捌いて建てていく。さらに僕が死蔵していた魔物の骨や皮なんかも使うことになった。特に大海蛇シーサーペントの骨と角牙鯨ホーンホエールの角は魔物避けや魔導具の材料となるらしい。

 道理でギルドの買い取り額が高いはずだよ・・・。

 そんなわけで、急遽タツギさんの提案で魔道具も設置する事になった。僕としては魔法で色々と済ますつもりだったのだけど、魔法を使わなくて良い利便性や、職人としてのこだわりを熱く語られて思わず許可を出した形だ。


 風呂の給湯器に追い炊き機能、台所の給水器、部屋の灯、トイレの水洗機能と汚物の分解機能、さらには床暖やエアコン、食料庫の冷蔵・冷凍庫化、オーブン等とそこいらの貴族の家よりだいぶ立派だと思う。

 それに数々の魔導具にあわせる様に家も広くなった。台所と居間が別なのは勿論、その他に部屋が6個もある。倉庫は別でだ。


 来客も無い。一人と一竜の暮らしだという事がわかっているのだろうか?

 





 「いやー。つい熱が入っちまったぜ。」


 家が完成し、タツギさんは満足そうだけど、先程弟子の人がこっそり教えてくれた。

 熱中して一人用である事を忘れていたらしい。


 「ま、増築分はサービスってことでよ。」


 多くの魔導具も材料は僕持ち(足りない分は狩りに出された。)で、作ったのはタツギさんとお弟子さん達、それと少しの外注ということで費用はそれほどかかっていない。

 この家用の魔導具を制作、設置できるということがタツギさんが有名になった理由なんだとか。王家や貴族・有力商人の家の注文も多く、弟子入り志願も多いらしい。そんな事は知らなかったので、途中で工賃とかの増額を申し出たけど断られた。タツギさんがそんな調子だからお弟子さん達も勿論受け取ってくれない。僕の出来る事で返そうと、練習用に魔石や各種材料を多めに提供したので勘弁してもらおう。

 相場はわからないけれど、驚いていたくらいだから充分足りたと思う。


 ちなみにタツギさんもお弟子さん達も魔法学院の卒業生なんだとか。

 


 テーブルやタンス、ベッドなんかも作ってくれたし、食器や布団は空間収納にしまってある。だから直にでも暮らす事が出来るのだけど、完成のお祝いという事で皆で宴を開く事にした。

 醤油や味噌を使った料理や、日本酒も振る舞い、皆喜んでくれたと思う。一番喜んだのがルーファの狩って来た一角野牛ホーンバッファローの後ろ足を丸焼きにした物だったのは少し悔しかったけど・・・。

 ちなみに一番人気がなかったのは鮪の刺身で、タツギさん以外は手もつけなかった。どうも魚の生食は浸透していないみたいだ。肉の生食はあるのに不思議な感じ。


 お土産として作っておいたお菓子皆にあげて、クスターに送り届ける。

 仕事とはいえ一週間以上も家族と引き離してしまったので、皆の家族へのせめてものお礼のつもりだ。


 街に来たついでに宝石職人のイガンの所に行き、お菓子のお裾分けと配達依頼を受ける。

 配達を済ませて夕方まで狩りをすると、学園都市の家へ。ドアの隙間には相変わらず手紙が刺さっているけど、さすがに日が暮れてからは人影がない。いくら都市の横とはいえ魔物も出る街の外。日暮れには門が閉まる為か、使者が待機している事は無いようだ。

 手紙は全てゴミ箱へ。

 重要なものもあるのかもしれないけれど、サルーンさんとアルノルドさん、ギルド以外のものは処分しても大丈夫だと思う。


 生活に必要な最低限のものだけを残して次から次へと空間収納へしまう。特に家用に残しておいた調味料類は忘れない様に・・・。


 島に戻る頃には真っ暗だったけれど、特に問題は無かった。

 ルーファと一緒だから襲い来る敵は居なかったし、場所も間違える事が無いからだ。僕も昼間だったら直に島の場所が分かる程度には周りを把握している。大体の位置まで飛んでいくつかの小島を目標にすれば良いし、いくつかの街からの方角は何度か飛んで覚えた。


 「明日からは暫く狩りをしようか。」

 「いいよー。しばらくぶりー?」


 食料も大分使ったし、お金も減った。ギルドの依頼よりも狩りをして稼ぐ方が僕達には効率が良い。登録更新の為の依頼はイガンさんの所の依頼で充分だしね。

 それにここの所、資材運びとかのついでにしか狩りをしていなかったので、久しぶりにルーファと遊びがてら狩りをするのも悪くない。


 「明日は大物を狙おう!」

 「りょーかいしました。たいりょー。」 


 ルーファは新しく出来た大屋根の下へ、僕はベッドへと別れ、それぞれ明日に備えて夢の中へと旅立つことにした。








 「あーさーだーよー!」


 ルーファのでかい声で起こされた。


 「起きたみたいだねー」


 寝室としている部屋の窓の外にルーファが居た。

 

 「ああ。おはよう。」


 朝といってもまだ日が昇っている最中だぞ?。


 「早くないか?」

 「だって楽しみだったんだもん。」


 僕の二度寝の為のささやかな抵抗は、ルーファの嬉しそうな声によってあえなく破れることになった。

 作り置きのオニギリで朝食を済まして家の外に出ると、既にルーファの足下に今日一匹目となる獲物が横たわっていた。


 「えへへ。ほめてー。」

 「ルーファが食べなくていいのか?」

 「うん。もうこれ二匹食べたから。」


 一匹目でなく三匹目だったらしい。

 ルーファの頭を撫でて鑑定後に空間収納にしまう。この初めて捕えたプテラノドンの様な鳥は夜食鳥ヨアケ。日の出と共に狩りに出る為、夜を食う鳥とされていて、主食は小魚の群れで魔物っぽいけれど鳥らしい。



 「朝ご飯探していたら海の上に居たの。」


 朝食を求めて飛んでいた所をルーファの朝食とされてしまったらしい。


 「そっか。今日は海。明日は山でいいかな?」

 「いいともー!」


 やる気が溢れ出ているルーファと共に空を飛ぶ。

 索敵は任せてしまおう。


 今日の獲物はいつもの角牙鯨ホーンホエールを始め、大鴨女オオカモメ×3・海飛竜シーワイバーン×1・海大鰻うみおおうなぎ×30・青石海亀サファイヤタートル×1・緑海月グリーンムーン×4・多触手海花ショクシュマジン×6と大量だった。特に海大鰻うみおおうなぎは多すぎるし、ヌルヌルなので一日で解体するのは厳しい。それに多触手海花ショクシュマジン以外に魔物がいないので別の日に一日かけて解体するつもりだ。


 翌日は約束通りに森へ。

森で狩れたのは森牙象フォレストマンモス突撃猪ファンゴーの二種類だけ。他にも獲物を見つける事が出来たけれど、ある程度の大きでないとルーファが狩りにくい。それでも森牙象フォレストマンモスを3匹、突撃猪ファンゴーを11匹狩れたので充分だけどね。

 帰り際に港湾都市クスターに寄って突撃猪ファンゴーを半分売る。


 「一頭丸ごとですか?」

 「うん。駄目なの?」

 「いえいえ。殆どの冒険者の方は解体されて持って来られるので、驚いてしまって。」

 「ここに出すのは拙いよね?」


 さすがにカウンターが壊れるだろう。


 「その御様子ですと、子供でもないのですね・・。こちらにどうぞ。」


 買い取りカウンターの横を開けてもらって、奥の倉庫へとお姉さんと進む。

 

 「おっ?どうした?」


 倉庫で待っていたのは髭もじゃのおっさんだ。


 「こちらのルイジュさんが大物の買い取りを望まれてますので。」

 「物はなんだい?」 

 「突撃猪ファンゴーです。」

 「突撃猪ファンゴー一匹じゃ取りには行けないぜ?解体して運んで来る方が良いと思うな。」

 「いえ。ここに持ってくれば良いですか?」

 「ああ。街の外まで持って来てくれれば取りには行くが、解体して肉屋とかに分けた方が儲になると思うんだがなぁ・・・。」

 「では。」


 許可を得たので空間収納から突撃猪ファンゴーを5匹取り出す。


 「えっ!」

 「おぉ!?」


 おっさんもお姉さんも驚いているのは無理も無い。空間収納を僕以外に持っている人は知らないからね。それに今までギルドに来た際には使わずに手で持って来ていたし。

 隠していたのは目立たない為だけど、もう今更だ。それに家を建てる際にも使いまくったので、何人かの人は既に知っている。

 だから隠す必要も無くなった訳だ。


 「5匹とはさすが竜の友なだけはあるな。」

 「解体して売るのが面倒だったので・・・」

 「そりゃ一人で5匹は面倒だろうさ。突撃猪ファンゴーで高いのは牙だが、肉も皮も売れるしな・・。」

 「それではお願いします。」

 「そんなに時間はかからん。少しだけ待っていてくれ。」

 「はい。資料室にいます。」


 そう。今回、突撃猪ファンゴーを売りにきたのはついでであって、資料室で獣の有用箇所を調べるつもりでギルドによったのだ。なぜなら、家を建てるときに幾つもの骨なんかが魔導具の道具になったし、その時聞いた話しでは、幼竜が噛みにくいと言っていた大海蛇シーサーペント皮なんて一メートル四方で金貨一枚になるらしい。

 皮だけ剥いでおけば良かったよ・・・。

 資料室は受付の女の子が寝ているだけで、他に誰も居なかった。冒険者には人気がないのかな?

 それでも調べたい事に付いては大体わかった。特に海の獣については学園都市やエルフの国が海に面していない事もあって資料が少なかったので、ここの資料は有益だ。


 「精が出ますね。」


 本から顔を上げると先程寝ていた女の子が居た。


 「勝手に読んでしまって申し訳ないです。」

 「いえいえ。そんな事は構いませんよ。寝ていた私が悪いのですし、それよりも寝ていた事は内緒にして下さいね。」

 「了解です。」


 羞恥心からか少し顔を赤くしているのが可愛らしいな。







女の子とのフラグではありません。

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