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09:魔法登録

 朝九時前に北門へ着いたのだけど、すでにアルノルドさんは居た。

 その他に何人もの学生を連れて。

 それにチクバ学院の代表ジジさんもいた。


 「折角だから見せてやろうと思ってな。」


 依頼主の意向には逆らえない。

 逆らう必要も無いしね。


 街を出て暫く進むとアルノルドさんが止まった。


 「ここいらでいいじゃろう。街へはギルドと学園から通達しておるので騒ぎになる事も無いのでな。」


 根回しは充分らしい。

 それにその通達を見てジジさんもやってきたのだとか。


 「わかりました。」

 「では頼む。」


 そう言って渡されたのは一枚の金属板。


 「これを身につけて発動してくれれば登録される。既に登録されているものが新たに登録される事はないので安心して使ってくれ。」


 『炎石塵エンセキジン』の前提である『風刃林カマイタチノウタゲ』や『炎石雨フレア』を発動しても登録される事はないのか。


 「では少し離れて下さい。」


 安全の為に皆に少しは慣れてもらってから刀を抜く。

 あとは昨日やった事と同じ。

 『風刃林カマイタチノウタゲ』を竜刀に込めて『炎石雨フレア』と『風塵ストーンストーム』の準備をする。あとはタイミングを見計らって同時発動すればいい。


 「「オォ・・・。」」


 発動と同時にどよめきが出る。


 「まさかもう一度見せてくれるとは・・。」


 あれ?アルノルドさんが変なことを言っている。


 「見たかったのではないのですか?」

 「今回は『炎石塵エンセキジン』だけかと思っていたよ。」


 確かに同時発動の魔法が登録されるのだったら『炎石塵エンセキジン』だけで良かったかもしれない。


 「まぁサービスです・・・。」


 そう言う事にしておこう。


 「うちの弟子達も励みになるだろう。」


 少しは怖がられるかと思ったけれど皆がこちらを見る目に恐れは無い。

 これが学問の徒というやつか。

 唯一見る目が違うのがジジさん。目を細めて愉快そうだけど、向こうからは何も言って来ないので放っておこう。


 魔法が消えたのちにアーノルドさんが確認した所『炎石塵エンセキジン』はちゃんと登録されていたのでこれにて仕事は終わりである。

 ついでに魔法学院の図書に付いて閲覧許可を願った所、即答で許可が貰えた。

 「才能ある物に魔法学院の知を知ってもらうのは大いに有意義な事だ。」とのことである。学院の為になるつもりは今の所まったく無いけれどありがたく許可を貰って学院を後にする。


 そのまま図書館に行きたくもあったけれどジジさんの目が恐かったので、逃げる様に部屋を後にして今は街の外に居る。

 あの目、なんなのだろう?

 この間狩った角牙鯨ホーンホエールはルーファのお土産にしてしまったので何か狩りをするつもりだ。


 何となく魚の気分だったので洋上を飛ぶ事数十分。

 それは突然飛び出して来た。


 「おっと。惜しいね。」


 僕に向かって飛び出して来たのは大海蛇シーサーペント。その全長は角牙鯨ホーンホエールの軽く三倍。

 船乗りには海の悪魔とも言われ恐れられているこいつは竜の眷属なのではないかとも噂が流れる程の強敵だ。いや、見たら死ぬとさえ言われているので強敵どころでは済まないのかもしれない。

 かつて勇敢な冒険者が港近くに誘い出して討伐しようと試みたけれど、傷を追うと海の底へ逃げてしまったらしい。そう言う意味でも難しい敵だ。


 「キシャァーーー」


 再び襲い来るけれどひらりと躱す。

 

 「ルーファが居ないしなぁ・・・。」


 ルーファがいれば僕達に取ってはそう難しい敵ではない。ルーファが気を引いている間に結界で隔離するか回りを凍らせてしまえば良いのだから。

 でも今はルーファがいないので僕独りでなんとかしなければならない。


 「さすがにこの状態で魔法はきついなぁ・・・」


 飛行魔法を使い、敵の噛みつきや水魔法を避けつつ大きさを見極め、敵の周りに結界を張るのは僕にとっても容易な事ではない。


 「あっ。駄目元でやってみるか。」


 何度も敵の攻撃を避けつつ思いついた事がある。

 竜刀を引き抜き両手で構える。

 目標はこちらに噛み付こうとしている大海蛇シーサーペントの頭。

 

 「キエェェイ!」


 やった事は単純。

 以前試した示顕流の一手。そうあのクレーターを作った一振りだ。

 下は水なので自然破壊もそうないだろう。


 前回よりも上手くなったのか、それとも大海蛇シーサーペントが頑丈だったのか頭は原型を残しつつも口元から切り開らく事が出来た。


 「やりすぎたかな?」


 恐らく僕が強くなっているのだろう。

 狙い通りクレーターは出来なかったけれど、衝撃で大小さまざまな生き物が水面に浮かんでいる。

 津波は大丈夫だよね・・・・?


 「まるっきし自然破壊だな。それに過剰攻撃オーバーキルでもある。」


 おそらく込める力が半分くらいでも倒せたと思う。

 これは切り口の大きさからからもわかる。


 反省しつつも大海蛇シーサーペントを空間収納へと仕舞う。

 その間にも浮かんでいた生き物達が意識を取り戻して慌てて逃げて行く。


 「おっ!?」


 そんな様子を見ていると水面に大きな影が浮かび上がった。


 「何事かと思って来てみれば・・・。」

 「お久しぶりです。」


 水面から顔を出したのは水王竜リヴァイアさんその人だ。


 「どこぞの竜が暴れているのかと思ったよ。」

 「スイマセン。」

 「戦うなとは言わないけれど周りの被害は考えてな。一応津波に成りそうな波は消しておいたが。」

 「はい・・・・。」


 ごめんなさい。やはり津波は起きる所だったらしい。


 「それにしても大海蛇シーサーペントを単独で狩るとはそこいらの竜よりは優秀かもしれんな。例の空間に仕舞い込んでいる様だが腐ってしまうんじゃないか?」

 「大丈夫です。創世神に『時間魔法』を貰った所為か収納すると時間経過を止められる様になりましたから。」

 「それは何とも・・・。」


 もっともその所為で時間経過をさせたいものを一緒に仕舞っておく事は出来なくなったし、常時魔力の消費があるけれど、どちらかと言えばメリットの方が多いので感謝しておこう。

 魔力も何故か有り余っているしね。


 「それにカリズさん達の子供が生まれたらしいのでお祝いに持って行っても良いですし。」

 「ふむ。その話しは私も聞いたがお祝いか・・・。」


 どうやら竜族の間にお祝いを贈る習慣は無いみたいだ。


 「大海蛇シーサーペントは栄養価も魔力量も高い。卵を守っていた二人には良いだろう。それに子供に与える食事としても良いだろうな。」

 「今はルーファが行っているので帰って来次第僕も行くつもりです。」

 「ならば私からの祝いも持って行ってくれても良いかな?。私も行きたい所だが海をそう離れるわけにはいかんのでね。」

 「勿論です。」

 「では少し待っていてくれ。」


 リヴァイアさんが水中に戻ると衝撃で死んでしまった魚も回収する。さすがに小魚を全て拾うことは無理だけど他の生き物の餌となりつつある様なので放っておこう。


 「子供にこれを上げてくれ。」


 戻って来たリヴァイアさんが持って来たのは、空の様に青く澄んだ大きな宝石。

 

 「これは魔石ですか?」


 宝石にしては力がこもっている様に感じる。


 「そうだな。ただ魔物から採れるものではなく、海と空が混じり月の光が降り注ぐ深い海の底に稀にできるもので、人間達は魔晶石と呼ぶが根本は変わらん。」


 魔石は魔物達から採れるもの。魔晶石は自然発生するものと別れているけれどリヴァイアさんに言わせると大きな違いは無いらしい。

 唯一の違いはその籠った魔力の澄み具合らしい。彼女達竜からしてみると魔物から採れる魔石は濁っていて、魔晶石と比べると美味しいものではないのだとか。


 「時間があるようだったらリファイタの所にも寄って見てあげてくれ。あいつは母様に似て子供が好きだから何か贈ると聞けば用意するだろう。」

 「わかりました。」


 リファイタさんも火山から動く事を制限されているのし、代わりに届けることに異話はない。


 「ついでにさっき捕った魚も届けます。」

 「そうして上げてくれ。私達くらいになるとほとんど物を食べなくても良いとはいえ、食を楽しむ心は持ち合わせているからな。リファイタも喜ぶ。」

 「それでは。」

 「あぁ。また会おう。」


 水面に顔を出したリヴァイアさんに見送られて空へと飛び立つ。



 向かうはリファイタさんの棲む火山。




 ついでにゴリガスさんの所にも寄ろうかな。






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