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08:報酬と対価

 特に夜襲も異変も無かった。


 寝る前に考えたのは一つの事。

 それはルーファがいない時に限って敵の襲撃があったという事は、偶然ではないのかもしれないという事。

 ルーファが居る事に因って以前よりも少なくなった敵と、不意に訪れた強敵の消失。

 そこに導かれる様にして敵が襲って来たとは考えられないだろか。


 確かめようも無いけれど、もし悪魔がルーファの居ないうちにと考えたのだとしたら・・・・。


 そこまで考えて考えるのを止めた。

 いくら考えても答えが出ることなどないだろうし、精神衛生上良くはないだろうからね。


 朝食は昨日食いそびれたご飯の残りをオジヤに。

 溶き入れる卵は比較的高級品な為、そのうち鶏でも飼いたい。

 街の外でも育てられるかな?


 朝食後学校へ向かう。

 学校が始まって暫くたつが別に授業を取っては無い。目的は図書館だ。

 しかし、残念な事に門で呼び止められた。ギルドマスターが呼んでいるらしい。


 ギルドはいつもより人が多いけど、昨日程じゃない。

 勝手知ったるなんたらでマスターの執務室へ向うが、特に呼び止める人はいない。

 助かるけど、こんな警備状態で良いのだろうか?

 まぁ、マスターに害をなせる人をそこいらの職員が止められる訳も無いので気にするだけ無駄か。


 昨日とは打って変わって机には書類の山。

 書類相手だと敵を斬る様にはいかないらしい。


 「あぁ。来てくれたか。まずは昨日の報酬についてだが、ここのギルドの受付で受け取ってくれ。ギルド員でなくても受け取れる様にしておいた。今回だけはルイジュ君かサルーン王女の保障があれば身分証もいらない。」


 渡されたのは5枚の紙。

 いずれも昨日の報酬の受け取り表で、受取人は騎士とメイドさんになっている。


 「もう一つは指名以来。爺さんから昨日使った魔法について知りたいそうだ。まぁ受けるも受けないも自由だが結構報酬はいいぞ。」


 報酬は白金貨三枚。

 情報提供にしては高い気がする。


 「もっとも提供後は他の人に使われても文句は言えないし、魔術書にも乗せられちまうから考えて受けてくれ。」

 「まぁ受けますよ。」

 

 他の人に真似できないとは思うし、別にアレ一つが僕の魔法という訳でもない。


 「そうか。なら下で受注手続きをしてくれ。」

 「それだけですか?」

 「ああ。その依頼を断る様なら幾つか聞きたい事もあったが、爺さんが知ったら教えてくれるだろうからな。たぶんその報酬には一番最初に教えろって意味もあるんだろう。」


 高い報酬はそう言う事か。


 「あと、騎士達をギルドに呼びつける訳にもいかなかったというのもある。」


 確かに騎士の所属はオビリアン王国であり、今はサルーン王女の指揮下にある。

 いくらギルドマスターとはいえ勝手に呼び出すのはまずい。


 「なんなら報酬を受け取って配ってくれても構わんぞ。」

 「ねこばばするかもしれませんよ?」


 するつもりは無いが。


 「ねこばばするぐらいなら最初から山分けに何てしないだろう?」

 「まぁそうですね。」


 山分けでなかったらこの十倍以上の報酬を僕は得ていた事になるので、もっともな指摘だ。


 「それでは頑張って下さい。」

 「剣で切れる敵の方が楽だよ・・・・。」


 疲れ切った顔で見送ってくれるギルドマスターの目の下には隈も有る。昨夜から寝ずに書類仕事をしているのかもしれない。

 

 受付で報酬を受け取ると共に依頼も受ける。ついでなので騎士さん達の分も。


 騎士さんもメイドさんも報酬を受け取ってくれなかったのでサルーンさんに渡しておく。

 皆一律に「王女の命令でしたので。」だそうだ。

 国に仕えるってそう言う物なのかね?


 初めて出向く魔術院はその敷地内に幾つもの建物が立ち、それぞれ統一感など無い。

 あるのは、学生が皆同じ様なローブを着ているという事くらいか。制服みたいだ。

 その中で剣を持っている僕は目立つのだろう。

 ジロジロと見られる。

 その中でもあまり露骨にこちらを見て来ない人達の中にエルフの女の子が居たので声をかけると、アルノルドさんの研究所は有名らしく直に教えてくれた。

 

 その研究室は学園の最奥、街を囲む塀を背にして構えられていた。

 他の建物に比べても大きく、それに比例して出入りする学生の数も多い。

 受付らしき所に声をかけると直にアルノルドさんが現れて僕を案内してくれた。

 出会う人出会う人皆挨拶をちゃんとしていくのは慕われている所為か、偉い所為か。多分両方なのだと思う。

 

 案内された先はアルノルドさんの私室兼研究室。雰囲気はエネさんの研究室に似ている。

 乱雑に積まれた紙の束をずらして椅子に座ると早速説明を求められた。


 「昨日見た魔法は風魔法かのう?火魔法かのう?岩が飛んでいたようじゃが土魔法ではあるまい?どちらにせよ儂は今まで見た事が無い。」

 「火魔法と風魔法の複合魔法です。」

 「なんと。複数属性を使う者は居るとしても、同時発動を成すとは若いのに良く修練したのじゃな・・・。」


 加護七割。スパルタ二割。座学一割。と言ったところなので修練を積んだというのは違う気もする。


 「それで組み合わせはなんじゃ?『風刃カマイタチ』いや『風刃林カマイタチノウタゲ』は入っていそうじゃが。」

 「はい。『風刃林カマイタチノウタゲ』と『炎石雨フレア』と『風塵ストーンストーム』の組み合わせです。」

 「な、なんと三つの複合とは・・。それに風魔法が二つじゃと?同一属性の複数同時発動は不可能とされておるのにそれをいかなる手段で成したのだ?もし、同一属性の複数同時発動が可能となれば不可能とされた死者蘇生の可能性が・・。」


 質問なのかどうかわからないくらい興奮してブツブツ呟き始めてしまった。

 彼の興奮を冷ます為にもまず言っておこう。


 「おそらく他の人には出来ませんよ。同一属性の複数同時発動。」

 「何故じゃ?」

 「この竜刀りゅうとうグアスランドの能力を使っているだけですから。」

 「ふむ。杖でもなく刀。それに魔法の能力が有るというのか。」

 「こう見えても神具ですから。それに魔法を纏わせる事が出来るという能力ですので魔法の能力というのとは違うかもしれません。」

 「神具か・・・。まさか生きているうちにもう一度見る事になるとは思わなかったぞ。」


 結構長く生きていそうなものなのに・・。神具ってやっぱりそういう物なのか。

 まぁ持ち主が手放した神具はメルティナさんが回収して封印をしている様なので、数は出回っていないのだろう。

 けれども、自慢する人は多そうなので見ようと思えば機会はあると思う。どっかの貴族とか王族とかさ。特にアルノルドさんの立場にあれば。


 「ともかくこれに『風刃林カマイタチノウタゲ』を纏わせて発動前を保持して、『炎石雨フレア』と『風塵ストーンストーム』の複合魔法『『炎石塵エンセキジン』を発動。それに準備ておいた『風刃林カマイタチノウタゲ』を重ねて発動したのです。」

 「『炎石塵エンセキジン』とは聞いた事が無いが自分で考えたオリジナルか?」

 「そうですね。正確には火魔法の師匠みたいな人と一緒に考えましたのでオリジナルだと思います。」


 人ではないけど、まぁ嘘でもないだろう。


 「そのような人がまだ在野にいるとは世界は広いのう。こう見えても火魔法、土魔法共にLv10。さらに他の属性も闇以外ならそれなりに使えるのじゃが高レベルの魔法を組み合わせる事は叶わんかった。やはり複合魔法は魔力のコントロールか?」

 「はい。低レベル同士の複合と基本は変わりません。あとは慣れと二つの魔法のバランスです。」

 「簡単に言ってくれるが、その低レベルの複合に普通の人は苦労するのじゃよ・・・。」

 

 そもそも僕の場合は『飛行魔法』が『重力魔法』『空間魔法』『風魔法』の少なくとも三つの同時発動だったので体が覚えている部分が大きかったのだと思う。

 それにメルティナさんの巨大な魔力量に対して調節するのはとても勉強になった。


 「そう言われましても、やる方法はそれしかないですから・・・。」

 「まぁ一般人には出来ないと諦めてもらうかの。」

 「そんなんでいいのですか?」


 折角高い報酬を出したのにこれじゃ収穫が少ないだろう。


 「しょうがあるまい。それにやってもらう事はまだある。『炎石塵』と昨日の複合魔法の登録をしてもらう。」

 「まさかここでですか?」

 「そんな訳はあるまい。明日、街の外に移動してじゃよ。予定は大丈夫か?」

 「はい。」

 

 図書館に行くか、料理をするくらいしか予定は無かったので大丈夫だ。


 「では明日九時に北門前で待つ。準備はしておくので身一つで来てくれて構わんぞ。」

 「わかりました。」


 研究室を出るとついでに図書館へ向かう。

 魔術院の図書館はどんなものなのだろうか気になっていたのだけど、残念ながら入れなかった。

 魔術院の学生か特別な許可がいるらしい。


 明日、アルノルドさんに頼んでみよう。


 僕はそう決めて大人しくチクバ学院の図書館へ向かうのであった。


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