04:転生きーめた。
「それで僕はどうなったの?」
「呼吸、脈拍、脳波いずれも無し。見た目にも助かったとは誰も思わないでしょう。ごめんなさい。。。」
涙こそ流していないけれど今にも泣きそうな声で謝って来る。
「つまり死んだと。」
「はい・・・。」
「いまいち信じられないのだけど。姿こそないけれどこうして喋っているしね。」
「ご覧に成られますか?」
少年が宙に指を指すとスクリーンが生まれた。
「ちょうど救急隊が着いたようですね。」
スクリーンにはどこか見覚えのある山と崖。壊れたバイク。それにストレッチャーに積まれた物体。手足は変な方向に曲がりヘルメットには大きなへこみ。それだけなら死んだとは思えないけれど、胸から突き出た木の枝は真っ赤に染まっている。大体心臓の位置だ。
「はい。心臓に木が刺さり即死でした。」
考えている事もわかるらしい。
「そうです。ここは僕の部屋の様な物なのですけど、ここでは僕に対して感情も考えも伝わります。けど意識体である貴方と会話をするにはここに来てもらうしかなかったのです。御免なさい。」
「わかった。」
「・・・。」
「・・・・。」
「それだけですか。」
「うん?お詫びは受けるよ。」
「もっと僕に対して怒るとか、人生を嘆くとかを予想していたのですけど・・・。」
「うーん。父さんや母さんには申し訳なく思うけど、死んじゃった物はしょうがないし、それにこうやってよくわからないことができるってことは僕の理解の外にある出来事でいまいち死の実感が無くてね。」
「はぁ・・・・。本当の気持ちの様ですね・・・。」
「ま、僕の分君が長生きしてくれれば良いよ、あと道路に飛び出すのはもう止めようね。」
「はい。すいませんでした。」
「うん。それでこの後はあの世とかに行くのかな?知ってる?」
「えーと。樹一さんの魂は既に審査の門へと行っています。」
「と言うと?」
「ここに在るのは樹一さんの意識だけです。」
「魂と意識は違うのか。」
「はい。」
「それで?」
「樹一さんには二つの選択肢が在ります。一つはここで意識を散らす事。この場合は普通に死んだのとかわらず、意識は霧散し魂は新たに使われます。もう一つは僕の世界に来てもらう事。こちらの場合は世界や魂、体は変わりますけどこれまでの意識を持ったまま新たな人生を歩む事ができます。」
「君の世界?」
「そうです。僕は神様という仕事についていまして・・・。」
「神様?」
「わかりにくかったら世界を創造して管理している人と言い換えても構いません。」
「その管理している世界は地球じゃ無いということかな?」
「地球どころか宇宙から違いますから樹一さんの知っている世界ではないです。人以外の種族や凶暴な魔物なんかも居るので嫌でしたら断ってくれても構いませんけど、僕が管理しているのはそこだけなのでそこ以外の選択肢はないのです。」
「だから二択か。確かに日本よりも危険な環境にいって生きて行くのは辛いかもしれないからここで人生を終えるのも手かね。」
「意識だけでしたらお好きなだけここに居てくれても構いませんけど・・・。」
「君とお喋りする以外にやることある?」
つい神様に向かって君といってしまったけど、本人は気にしていない様だしまぁいいか。
土下座から始まった所為か、見た目の所為か、どうも神様と言われても敬う気持ちになれない。
「ないです。僕も仕事があるのでいつも居るわけではないですし。それと敬うとかしなくていいですから。どちらかと言えば僕の命の恩人ですから。」
考えが読まれているのを忘れていた。
「それはありがたいけど恩人?」
「他の世界では神といえども死にます。まぁ大抵の神は死ぬ前に自分の世界に飛ぶ様にプロテクションを掛けているのですけど、出現直後はプロテクションがかかっていませんからあの時バイクに轢かれていたら僕は死んでいましたね。」
「神様が死んじゃうと世界も滅びるとか?」
そうなら恐すぎる。神様が他の世界に行くことは止めていただきたい。
「そんなことはありません。管理が滞るでしょうけれど神達の組合で誰かに引き継がれるでしょうから。引き継がれて神の方針が変われば世界の変革や、一度廃棄した上での創造はありえますけど。」
「一人一個じゃないんだ。」
「神としての力によって違います。世界を創造できる力を持つと神となり一つの世界を持ちます。その世界の発展や他の方法により神は力を増し、複数の世界を管理する様になるのです。規模が多くなると自分の下に神が付く事はありますけど、重要な権限は持ち続けるのが普通ですね。その力の事を僕達は創神力と読んでいますけど、先程述べたプロテクションの行使や他の神との取引でも使えるのですよ。」
「もしかして魂もその力の一つか?」
だとしたら意識だけがここにある理由かもしれない。
「そうです。そこに住む人の意識も創神力の一部にはなりますけど、魂に比べたら微々たる物なので今回は特別に無料で譲ってもらいました。」
「泣いて喚いて土下座するのってある意味脅迫じみていると思わない?それにちびっ子から創神力を奪うなんて人聞きが悪いじゃない。」
突如少年の隣に妙齢の女性が現れた。とても美人である。美人と言っても色々あるけれども、一言で言うならば僕好みの美人である。それに引き締まった体に程よい大きさの胸元。そして意思の強そうな目。もし生前に見かけていたら思わず告白したかもしれない。
「あら、ありがとう。」
彼女にも僕の考えは伝わってしまう様だが、その美しい顔を微笑みにかえてこちらに声をかけてくれたので良しとしよう。もうこの幸せのままに意識を消すのが最適なのではないだろうか。
「あらあら。それ程褒めてくれるのは嬉しいけれど、神の中には私なんかより全然綺麗な人が多いわよ。」
そう言われても目の前に居る女神が僕の最上級であると確信する。
「それに意識を消されちゃうと折角ちびっ子に譲った創神力がもったいないわ。」
「なら生きます。」
反射的に答えてしまった。
「それにちびっ子の世界には魔法があるから空飛べるわよ。」
「えっ。」
「譲った後に少し調べさせてもらったけれど空を飛びたかったのでしょう?」
「はい。」
「なら、生きてみなさいな。運が良かったらまた私と会えるかもしれないし。」
「頑張ります。」
何を頑張れば良いのかわからないけれど頑張ろう。
「よかったわ。私は仕事が溜まっているので帰るけど、ちびっ子に色々教わってから転成しなさいね。」
「はい。またお会いできる日を楽しみにしています。」
「私も楽しみにしておくわ。」
女神は微笑みながら出て来たと同じ様に唐突に消えた。
「彼女は地球を始めとする八十八の世界を統括する大女神。僕の元上司でもありますけど、そんなにですか?」
僕の気持ちを読んで少年が教えてくれた。
「そんなにです。」
無いはずの頬が熱く感じるのは気持ちの現れか。
「まぁ転生してくれる気になったのは嬉しいです。」
「あっ。」
名前を聞きそびれた。
「彼女の名前は人間である樹一さんには発言できないです。」
それでも知りたい。
「驚ahコω+8囈a怖ェです。」
「驚ahコω+8囈a怖ェ様か。」
「なんで発言できちゃっているのですか。」
「なんでだろう?愛の力?」
「もうそれで良いです・・・・。」
何かを諦めた様な声で少年は次に僕が生まれる世界に付いて教えてくれた。
所謂「神様のミスによる転生もの」です。
なんか画期的な転生方法ないでしょうか?