05:調味料
(さて、どうするか。)
目の前には塩、大豆、小麦、米。
クスターで買い集めた物である。
何故山になるほど買ったのか。それは調味料の作成をしようと思ったからである。
この正解の料理は塩と香草、香辛料それと蜂蜜、あとは動物の血で調理されている。
クスターで米を見つけた時は飛び上がる程嬉しかった。
こちらでは米を炊くという習慣はなく、大抵は粉にして加工するかよくてリゾットもどき。ちなみにチーズも無い。
塩と香草なのはエルフ達だけなのかと思っていたけれど、どうもそんな事は無いらしい。
勿論素材から染みでた美味しさもあるし、特にスープは僕の好みなんだけど、やっぱり米には醤油が欲しい。
幸い大豆も見付かったので味噌と醤油を作ろうと思って買って来たわけだ。
そして困った。
味噌は親父が趣味で作っていたのでわかる、醤油は何となくしかわからないけど最悪味噌の上澄みを利用しようと思っている。
味噌は大豆を洗って水に付けたら擦り潰し、塩と麹を混ぜ合わせた物と混ぜて固さを整えたら味噌玉を作って密封保存。六ヶ月程で出来るはずだ。
困っているのは「麹」。
カビの一種だとは思うけれどまさかお風呂場の隅に生えているカビでは無いだろう。
少なくとも見た目は白っぽかった。断じて青や黒ではなかった。
困った。
図書館で調べてみたけれど麹というものには辿り着かなかった。
そもそも人に聞いても「なにそれ?」である。
『神の書庫』にも無い。
そもそもカビの知識なんて無い。
精々青カビがペニシリンの材料?くらいだ。
(もや○もんの説明ちゃんと読めば良かったかなぁ・・・。)
何を考えても後の祭りなんだけど、一つ可能性がある。
ただしこんな事で使って良い物なのか。
(いや、こんな事ではないか。これほど悩んでいるのがその証拠!)
覚悟を決めてスキルを使う。
発動するスキルは『神通信』。
つまるところ神頼みである。
(というわけで、お久。)
(何が「というわけ」なのさ?確かに久しぶりだけど。)
(あれ、僕の思考をよんでいるのではなかったの?)
(そんな事はしないよ。失礼じゃない。)
(だって、『創世神の加護』をくれた時タイミングよすぎたぞ?)
(あぁ。それは君が僕の事考えたからだよ。僕達神様は僕達の事を考えている時だけはこちらに声が届くんだ。もっとも他の女神達はその機能をオフか制限しているけど、僕の場合は君以外に考える人が居無かったから良く聞こえたよ。それにしても他の女神の加護を名乗ろうとするなんて、いけずじゃない。)
(ただ単に、それが目立たないと思っただけだよ・・・。)
(そういうことにしといてあげる。それで今日はどうしたの?)
真実なんだけどね・・・。
(えっと頼みがあるんだ。)
(君から僕に頼みだなんて珍しいね。『神通信』すら何年も使ってないのに。)
それはいざという時に使える様にしておきたかったからだ。
まさか味噌のことで使うとは自分でも思っていませんでしたよ。
『神通信』
(で、なに?)
(この世界に麹ってないのか?)
(コウジ?なにそれ。)
(やっぱりないのか・・・。味噌とか醤油を造る時に必要な菌なんだけど、僕の知識じゃどうやったら良いかわからなくて。)
(ふーん。味噌とか醤油を造るつもりなんだ。)
(まずかった?)
(いや、問題ないよ。その世界の食生活は地球と比べて遅れているからね。君の気持ちもわかる。そうだねぇ。なんとかして上げても良いけど、一つお願いを聞いてくれる?)
(なに?痛いのとかは嫌だよ。)
(そんな趣味は無いよ。ただ、完成したら僕にもお裾分けして欲しいなぁーって。TKGとかしたいし。)
(それは問題ない。)
(じゃあいくよー。)
何処に?
ありふれた突っ込みは頭の中だけです。その頭にアナウンスが響いた。
―称号『別冊神の書庫』を得ました。―
ー称号『神の書庫』と統一されます。ー
―称号『神の書庫Ver1.1』を得ました。―
Ver1.1って・・・。
(それじゃあ来週くらいにはよろしくね。)
(ちょっ・・・。)
少なくとも六ヶ月以上はかかるのに、一方的に『神通信』を切られた。
来週取りに来ても出来ていないのは少年神が人の話しを聞かなかった罰だ。しょうがないよね。
あれ?神様って取りに来れるの?
まぁそんな疑問は考えてもしょうがないのでバージョンアップした『神の書庫Ver1.1』を使用して麹をGETするとしよう。
まず可能性として引っかかったのが稲麹。稲につくらしいので、米が作られているこの世界にも存在していると大いに考えられる。
行って来ました海洋国家群にイズケ帝国。
いずれも海を挟んで反対の大陸に属する国で、米の産地でもある。
空を飛んで稲作地域を見つけたら降りて『識別』
ただひたすらそれの繰り返し。
四日程かけて入手した時にはとうとう『識別』がLv10になってしまいましたよ。
役に立つからいいけどさ。
それから一日かけて菌の分離。
更に二日かけて結界を利用していくつかの種類に分けた菌を蒸したお米と混ぜて保温。さらにほぐして保温。
あっというまに一週間たってしまった。
それでもちゃんとできたものはある。駄目だった物もあるけど・・・。
(もしもしー。)
『神託』か?
(もしもーし。聞こえていたら返事してくれると嬉しいなー。)
(聞こえているよ。)
(お。味噌と醤油は完成した?)
(しない。ようやく麹菌の目処が立った所だ。発酵させなきゃいけないし、味噌は6ヶ月先。醤油はもっと先。)
(えーーーー。そんなの時間がかかるの?)
(かかるの!それよりもなんで会話が出来ているんだ?『神託』だろ?)
『神通信』の必要性が怪しくなるぞ?
(違うよ『神通信』だよ。)
(一年どころか十日もたってないんだが・・・。)
(うん?君何年も使っていない時間があるからまだ結構余裕あるよ。)
(つまりは一年間で一回分溜まって行くのか・・・。)
(あれ?一度使ったら一年は使えないと思ってた?なんで?)
(織姫と彦星なんていうからさ・・・。)
確認しとけば良かった。
(ふーん。まぁ発酵とやらに時間がかかるのかー。)
(そういうこと。上手くいくか判らんから半年先ではなく、僕が言うまで待っていて下さい。)
(えー。)
(神に取って一年や二年は大した事無いだろ?)
(神様にとっても一年は一年。一秒は一秒です。それよりもぱっぱと作っちゃおうよ。僕も応援するからさ。)
(応援で出来たら苦労はしません。)
(大丈夫。まだ余裕あるから。)
(余裕ってなんの?)
(えいっ!)
疑問に対する返事は無く、返って来たのはアナウンス。
ースキル『時間魔法』Lv10を得ました。ー
(おいっ!)
(それでぱっぱと作れるでしょ?)
(いいのかよ。)
(もうこれで君の神創力はいっぱいだから新しいスキルをあげることはできないけどね。あと悪用は止めてね。女の子のお風呂を覗くとかも駄目だよ。もっとも世界の時は止められないけど。そう言う意味では過去をやり直すとかも無理だし・・・。まぁお醤油よろしく。)
(精々努力します。)
(じゃまたねー。)
通信は切れた様だ。
まずは近くにあった果物で試してみた。
どうやら魔力を混める量と触れていた時間で進行速度は変わるようで、一気に魔力を混めるのではなく何回かに分けた方が良さそうである。
ちょっと多めにやった結果、果物は木になって枯れてしまった。
実がならなかったのは受粉をしなかったからかな?
とにかく試行錯誤しながら制作に戻る。
失敗作は時間魔法で時を飛ばしてしまえば地に帰るので問題なく失敗できる。
それでもそのまま放置は拙そうなので一応埋めておいているけどさ。
最初の一週間で出来たのは、味噌、醤油。
翌週には日本酒、みりん、酢、マヨネーズ、ソースっぽいもの、豆板醤。
さらに麹は関係ないけど、ケチャップ、バター、ラー油。
保存食として各種佃煮、漬け物、干物等。
今回は制作時間というよりも材料調達にかかった時間の方が多い。米は海の向こうで買った方が安いし、香辛料も各地に買いに行った。
各地に買いに行ったのは、そうしないとお金がもたないと判断した為である。
それでも念願のTKGをした時には至福を感じたし、煮物は調子に乗って作りすぎた。まぁルーファも気に入って残らなかったのでよかったけど。
次は鰹節を考えている。
ちなみに味噌と醤油はいつの間にか半分無くなっていた。
少年神の仕業と思われる。
稲麹については諸説有るようですが、ここではこれで押し通します。
まぁフィクションですし。
許して下さい・・・・。
—ステータス—
—ルイジュ・ブラッド(11)—
契約:竜刀グアスランド(創世神、六女神、七竜)
種族:ハーフエルフ Lv61
職業:冒険者(B)
スキル:『無形魔法』 Lv06『光魔法』Lv05『闇魔法』Lv05『火魔法』Lv09『水魔法』Lv06『土魔法』Lv06『風魔法』Lv10『識別』Lv09『重力魔法』Lv10『空間魔法』Lv10『時間魔法』Lv10
固有スキル:『神の書庫Ver1.1』『神通信』『神の贋作』『神託』『飛行魔法』 Lv10
称号:『殉教者』『神子』『天駆ける者』『神言』『創世神の加護』『老地竜の祝福』『老地竜の弟子』『幼風竜の祝福』『幼風竜の友』




