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飛行少年の生活水準向上記。(仮)  作者: 105 秋
終わりと始まり
3/94

03:出会いは突然に

 二日ぶりにバイクで山を走る。


 山を走ると言っても峠を攻める訳ではない。

 道路交通法で許されるスピードで風と景色を楽しむのだ。

 たまにちょっとだけ飛び出ちゃうこともあるけどそこはそれだ。


 愛車は翼がトレードマークのHから始めるメーカーとだけ言っておく。

 このバイクを選んだ理由はいくつかある。

 第一に翼に憧れた事。

 第二に250ccである事。

 第三に乗っていて気持ちが良い事。


 天気は良く、雲も少ない。

 気温も暖かくなり始めもうすぐ桜も咲くだろう。

 そうなると短い冬休みを終え学校も始まる。週に何度もバイクに乗る事は難しくなる。

 後数日は充分に楽しみたいものだ。



 僕が何故バイクで走るのか。それは愛車を選んだ理由にもにも繋がる。

 僕は空が飛びたい。

 なら飛行機にでも乗れと思うかもしれないけれど、それは違う。ヘリコプターも勿論違う。おそらくロケットも違うだろう。


 僕は自分で飛びたいのだ。


 思えば物心がついた頃から思っていた。空を飛びたいと。


 鳥の様に空を飛びたい。虫の様に空を飛びたい。風の様に空を飛びたい。

 箒に乗って空を飛びたい。觔斗雲に乗って空を飛びたい。気を体に纏って空を飛びたい。


 勿論、高校生になった今では身一つで飛べないことはわかっている。



 初めて自転車でスピードを出した時にはその先に飛べる可能性がある様な気がした。

 飛行機に乗った時は部屋の中から外を眺めている気分だった。

 ヘリコプターは音が五月蝿かった。

 スカイダイビングは落ちているだけだった。

 内緒で乗った大型バイクは確かに飛んでいた。ただし地面を。


 バイクでスピードを出せば出す程地面に縫い付けられる。

 だから法定速度。たまに少しオーバーしちゃうくらい。

 そのくらいが一番自由なのだ。


 そろそろお気に入りのカーブに差し掛かる。

 そのカーブの先は切り立った斜面。そのためカーブを抜けた瞬間は目の前には空が広がり、いつもよりも飛んだ気分に成れる。

 立ち上がりに少しアクセルを回すと更に良い。


 ミラーに映る対向車はなし。

 安心してアクセルを回した時に異変が起きた。


 一瞬の白い靄。直後に現れた男の子。

 どう現れたのかはわからない。


 手で掛けた急ブレーキは前輪をロック。直後に後輪が流れ、バイクがぶれる。


 地面に倒れ滑るバイク。


 少年を避ける事はできた。けれど、右手と右足が地面とバイクに挟まれて僕も滑っている。

 不思議と痛さは感じず、熱さだけを感じる。


 視線の先にはガードレール。


 少年は目を見開いて驚いた顔。


 バイクと僕はガードレールにはぶつからず、その下をくぐって宙を飛んだ。


 


 地面に引っ張られる束の間、確かに僕は空を飛んだと感じていた。



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