03:竜群飛
ケイラク山脈に戻ると、ルーファとリヴァイアさんだけでなく、他の竜も残っていた。
「お待たせしました。」
「いや、お役目を果たしてくれてなによりだ。牙はこちらにまとめておいたが、ルイジュ君は隠して置く場所はあるか?」
「ここでどうでしょうか?」
『空間魔法』を使って異空間への口を開く。
かつて持っていた人が居たという、固有スキルの『空間収納』を参考に生み出した魔法だ。
「時間の流れが止まったりはしませんけど、容量は多いですし誰かに取られる事も無いはずです。」
『空間収納』は空間に穴を開け生き物以外の物を収容することができるスキルで、その中に入れておくと時間の流れが止まると言われているが、僕が作り出したこの魔法は時間は流れる。多分時間の流れ云々は神聖魔法あたりが関係しているのだろう。
なぜなら勇者が持っていたと言われている能力だし・・。
それに、同レベルの『空間魔法』の使い手いたら盗まれる可能性もあるらしいけれど、遺失魔法の使い手に遭遇するかの可能性はまず無いだろうと思うから安全だ。
生き物が入れられない理由は不明。自分の腕さえ入らないので出し入れの際は意識して出したいものの一部を浮き出し、それを引っ張るしか無い。
異空間に空気があるかすら不明なので入れられなくて良かったとも思えるけどね。だって手を入れた途端宇宙空間だったのでペチャンコになりましたとかシャレにならないし。
「便利な魔法があるのだな。そこに仕舞ってくれ。」
リヴァイアさんに言われて牙を仕舞う。
「それで武器の件だが、私達に付いて来てもらっても良いか?ルイジュ君は飛べようだが・・。私の背に乗ってくれても構わない。」
牙を仕舞い終わった僕にリヴァイアさんが話しかけて来た。
「ルイジュは僕よりも早いよ!」
「そうか。なら問題は無いだろう。」
ルーファが僕の代わりに答えてくれた。
「出発するぞ。」
リヴァイアさんの掛け声で残っていた竜達が空に舞う。
少し遅れて僕とルーファも空に舞い、彼等の後に着いて空を行く。
「遠いの?」
「僕達にかかれば直だよ。」
確かに早い。いつものルーファより少し遅いくらいのスピードで空を飛んでいるけど、いつもより飛びやすい。
不思議に思ってキョロキョロしていると声をかけられた。
「群れで飛ぶのは初めてかな?それに私が一緒だと飛びやすいのよ。」
「お婆様。」
「もうルーファ。お婆様は止めてと何度も言ったでしょ。」
「だって・・・。」
「ルイジュ君も止めてね。あ、私はイドリアって言うの。リアって親しみを込めて呼んでくれると嬉しいな。」
確か彼女はグアスランドさんの最後に泣いていた竜だ。
「リアお婆ちゃんとでも呼んでやってくれ。」
そう声をかけて来たのはメルティナと呼ばれていた竜。
「私はメルティナ。あっちのはソレイズ。皆ルーファの婆さん世代さ。特にリアお婆ちゃんはルーファの祖母になるからよろしく呼んでやってくれ。」
「お婆ちゃんはいやぁ〜」と追いかけるリアさんとからかいながら逃げるメルティナさん。
「すまんね。私達は普段こうやって会う事も少ないから二人共テンションが上がっている様だ。」
二人が離れると今度はソレイズさんが近づいて来た。
「いえ。僕もルーファとああやって飛ぶ事もありますし。」
「そうか。二人が良く尋ねてくれるのを喜んでいたよ。礼を言う。」
グアスランドさんの事だろう。
「僕も色んな事を教えてもらいました。」
「そうか。母上は子供好きだからな。」
「母上ですか?」
「うん?聞いていなかったかい。私とリヴァイアは母上の子だよ。これから会うリファイタもね。メルティナとイドリアは所謂私達とは従姉妹の関係に成る。そして母上は叔母上達その世代の最後の一人だった。」
どこか遠くを見るソレイズさん。何を思い出しているのか。
「母上達はそれぞれ属性の違う六姉妹として生まれた。それぞれに子も生まれたが、母上はあまり子育てを熱心にしない母上達の代の竜には珍しく子煩悩でな、他の姉妹の子供も育てていたのだよ。さらにその子達の子、孫にあたる者たちにも世話になった者は多い。だからこそ母上の最後にあれだけの竜が集まったという訳だ。」
「六姉妹って女神様みたいですね。」
「そうだ。母上達は六女神の力を受けて生まれたとされる最古の竜だ。全ての真なる竜は母上達から始まり、全てが家族でもある。」
そうだとすると不思議な事が一つ。
「皆さん女性ですよね?」
どうして子供が生まれたのだろう。
「不思議かい?」
「はい。」
「人は皆同じところを不思議に思うのだね。私達竜は雄雌の違いはあるが雄がいなくても子供を授かる事ができる。片方が雌であれば卵が生まれるのだが、そうだな・・・。人は肉体的接触を持って子を生すが、我らは精神・魔力体といったものの交わりで子供を生すのだよ。」
男がいなくても子供はできるのか・・・。
「もしかして異種族間でも可能なのですか?」
「確かに居たぞ。叔母うえの一人が人との間に子をなした事があった。その子は巨大な力を持つことができ人には勇者と呼ばれたが、その力の所為か伴侶との間に子をなす事ができなかった。本来種族として持たぬ力を持って生まれてしまった場合は何処か歪んでしまう場合もある。だから私は無闇に竜との間に子を作る事は進めない。」
そう言ってソレイズさんはメルティナさん達と一緒に飛ぶルーファを見た。
「まぁよく考えての行動なら止めはしないが、君たちはまだ子供だ。子を持つのには早いだろう。」
「えっ。ルーファって女の子だったのですか?」
「ん?知らなかったのか?てっきり私は二人はそう言う関係かと・・・。」
「ただの友達です。」
「どうしたのー?」
「ルーファとは友達だって説明していたの。」
「そうだよー。仲良しなんだから。」
「そうか・・・。それならよい。ほら目的地が見えて来たぞ。」
暗闇の中に赤々と光る山が見えて来た。
「リファイタも荒れておるな。」
何かを誤摩化す様にソレイズさんは呟くとその高度を落とし始め、僕達もそれに続いて山の頂上へと降りて行くことになった。
毎日更新を出来てる人って凄いんだなと思う・・・。
僕は駄目かもしれません・・。




