02.5:王族の集い
Side王様と言ったところです。
小さな光がケイラク山脈へと飛んで行く。
「行ってしまったか。」
彼はここから出た足で出発した様だ。
「父上はルイジュ君を利用されるおつもりですか。」
少し不機嫌な声で尋ねるのは長女エネザベード。
「国を守る為なら何者も利用するさ。」
「彼は竜の友だという事をお忘れなく。」
いつもと変わらぬ声で注意して来るのは次男ウェルザベード。
「忘れぬよ。だからこそ利用したくなるのだがな。」
「彼もその親も国に縛られる事を望んでいないでしょう。成人の折にはブラッド家から抜く様にとの書状もありますし。」
次期国王であるロバートも内心では彼を留めておきたいのだろう。その声には諦めていない何かがある。
「ルイジュ君は優しいですし、国を見捨てる様な事はしないと思いますけど・・・。」
末娘のサルーンは彼を利用する事は反対か。
「優しいからこそ彼の優先順位はこの国が一番では無いだろう。」
それが国を背負う我らとの違い。
「そうかもしれませんが・・・・。」
「彼が気に入ったのならサルーンが嫁に行くか。」
王家は代々ハイエルフであるし、その嫁ぎ先も力のあるハイエルフが多いがハイエルフでなければいけないと決まっている訳でもない。
寿命の異なる夫婦は片方が残されてしまうという悲しむこともあるが、上手くいく場合も多い。それに同じ種族であって寿命が同じだとしても片方が先に行くのは世の常だ。
「「えっ。」」
娘二人が驚いている。
「ルイジュ君はまだ十一歳ですよ。」
「私のお婿さんですか。」
「エネ姉さんもルイジュ君に惚れているの?」
「ちょっ、馬鹿。彼はまだ子供だ。」
「冗談のつもりだったのだが・・・。」
思ったよりも良い策になるかもしれん。少なくとも無理矢理に国に縛り付けるようならば竜と共に反発もするだろうが、自ら選んだ伴侶ならば無下にもできないだろう。それに王族の伴侶になるという事は国に関わる事と同じなのだから文句も言えまい。
「冗談が過ぎますわ。」
二人共顔が赤い。娘達に脈はありそうだが彼はどうか。
エルフの結婚に年は関係ないとしても彼はまだ十一歳。
期限は成年するまでの四年、上手く行くだろうか。
さらなる成長に期待して稽古をつける騎士にも厳しくする様に言っておこう。
少なくとも男親を越えるだけの力を蓄えてくれよ。
ぶん殴って死なれる訳にもいかないからな。




