15:研究解析?
説明回と言うヤツですね。
行動範囲が広がった僕がやったのはまずは遊覧飛行。そしてルーファとの遊び?。それと同時に飛行魔法の解析の三つ。
遊覧飛行もルーファとの遊びも飛行魔法を理解するのに必要だったので、飛行魔法の解析を主にやったと言っても過言では無いかもしれない。
あのルーファとの初めての飛行で疑問に思ったのは次の五つ。
・暑さ寒さを感じにくい事
・高速時でも呼吸ができる事
・高速時でも視界が塞がらない事
・雨を弾いている事
・風竜と同じかそれ以上のスピードを得ることができる事
そしてこの事は飛行を繰り返して確信に至った。
疑問を放置しておいても楽しく飛べているので構わないのかもしれないけれど、グアスランドさんに言った手前ちゃんと考えている。彼女との関係はルーファを通して知り合った所為か、優しいおばあちゃんの様な感じで近くに居るととても心地よい。
そのおばあちゃんからの宿題なので頑張れたのもある。
最初こそ色々と考えて悩んだのだけど、僕にはヒントがあった。
エネさんの研究の一つである「固有魔法を通常魔法で再現する。」と言う事だ。彼女の推測では風魔法と光魔法。若しくは風魔法と闇魔法で飛んでいるのではないかという事だった。
それを意識した上で一つ一つの事柄を分解して考えてみた。
まず「雨を弾いた事」。
風を纏っているのだと思ったけれど違う。土埃や落ち葉を巻き上げる事は無かった。しかし飛ばなくても浮いている間は確実に雨を弾く。いや正確には雨も防いだ。
雨の他に試したのは、海水・小石・雪・枝葉・岩・溶岩・ルーファの尻尾。ルーファと二人段々と調子に乗った事は否めないが、最後のルーファの尻尾は大いに参考になった。
順を追って試したけど、まったくダメージを受けない僕を面白がったルーファが繰り出したのが尻尾による攻撃。彼の攻撃を受けてもダメージを喰らわなかったけれど、吹き飛んだ。
あっという間にルーファの姿を見失い、最後はグアスランドさんの体にぶつかって止まった。上空に打ち出されていたら何処まで飛んだか不安になるスピードだったので、助かったよ・・・。
しかしこの事で一つの仮説を得た。
僕が浮くのは重力を軽減しているからなのではないかと。そうだとすればあんなにも軽々吹き飛んだ理由になると思う。もっとも竜の馬鹿力説も否定できないのだけど。
また、重力の軽減が可能であるなら巨体を持つ竜が空を飛ぶ説明にもなる。
そこまで思いつけば『神の書庫』の出番である。
えっ?ズルイ?
持っているものを使うのはズルクナイデス!
まずは重力魔法について。
『重力魔法』:重力を操作する魔法。遺失魔法。
遺失魔法?と疑問に思うのは僕だけではないはず。
『遺失魔法』:かつて存在し、滅びたとされる魔法。ぶっちゃけバランスを崩すので封印中。
それ以上の情報が『神の書庫』には無かったけど、神の知識に無いならば今度は人の知識から探した。
その結果、かつて存在したと言われている魔法は結構簡単に見付かった。
召喚魔法、重力魔法、空間魔法、錬金術、呪術、時間魔法、生命魔法、再生魔法、神聖魔法、創世魔法の十個。
十個の中で『神の書庫』に記述があったのは召喚魔法、重力魔法、空間魔法、生命魔法、神聖魔法、時間魔法、創世魔法の七つ。
『召喚魔法』:契約した魔物や物を呼び寄せる。契約魔法の一種。遺失魔法。
『空間魔法』:空間そのものに作用する魔法。遺失魔法。
『生命魔法』:生命力を与え、また奪う魔法。生物の創造は不可。遺失魔法。
『神聖魔法』:神の力を直接借りた魔法。勇者のみ使用可能。遺失魔法。
『時間魔法』:創世神の力を借りた魔法。対象の時間を操る。世界の時は止められない。つまり「無駄無駄無駄・・・・」や完全で瀟洒な従者になってナイフを沢山投げることは出来ない。遺失魔法。
『創世魔法』:創世神にのみ許された魔法。色々と生み出す。ある意味万能。超チート。
勇者とか気になったけれど一旦置いとく。
他の錬金術や呪術、再生魔法については出て来なかったので存在しないのかもしれない。
ここで一つ考えたのが、もし遺失魔法である重力魔法が使われているのだとしたら、同じく遺失魔法である空間魔法もあるのではないかということ。
そうであるとすると疑問のうち三点は解決する。
空間を区切っているのなら雨を弾く理由になる。
区切っているのなら空気の流れが外と中で違うため呼吸もできるだろう。
暑さ寒さについても同じ事が言える。
もう一つ。ミアさんの研究は「固有魔法を通常魔法による再現」だけど、この事が事実ならいくつかの魔法は再現できる事になる。
ただし、『神の書庫』のことを隠している今は『遺失魔法』に付いて触れる事ができないので説明ができない。
なんとか協力できないものだろうか・・・。
飛行魔法に話しを戻そう。
視界については死ぬ前に比べて身体能力が向上しているとしか言いようが無い。
他のエルフの能力と比べた場合においても飛び抜けた動態視力を持っているので、これは種族の特性ではなく僕個人の特性なのだと思う。
スピードには風魔法が関係していると思う。
なぜなら、風竜は他の竜と比べて飛行速度が早いからだ。青年と思われる火竜と飛び比べをした時も幼竜であるはずのルーファの方が早かった。
となると、飛ぶ事自体にも風魔法が使われていると考えても良さそうだ。
その様な僕の考えをグアスランドさんに報告してみた所、驚いていた。
グアスランドさんの考えでは、重力を軽減し風魔法か翼で飛ぶというのが竜族や大型の飛行種の飛行方法ではないかということだ。竜族は飛ぶという事について深く考える事は基本無いらしく、彼女以外の竜は「何となく飛べる」で満足しているみたい。
何故、グアスランドさんが飛ぶ事に付いて考えたのか。それは既に飛ぶ事ができなくなった事と長い時間があった事、それに彼女自身が変わり者だからだと言っていた。
飛行魔法だけでなく、見識は広く知識も豊富で様々な事について教えてくれた。
それに追加してエネさん達による魔法の授業とウェルザード王子の紹介による武術の稽古。
毎日が新たな発見と知識に彩られ退屈する事が無い。
勿論飛ぶ事も忘れてない。ほぼ毎日飛んでいるのでこの街に住む人のほとんどが僕の事を知っているくらいだ。
こうして年月はあっという間に流れ、僕は11歳の誕生日を迎えることになった。
今までも説明が多い?デフォです。。。




