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11:日々の始まり

 朝起きると直に例のアナウンスが流れた。


―称号『闇の女神ルーナの加護』を得ました―


 もう好きにしてくれ。



 朝ご飯はハムエッグにサラダとパンだった。

 いい加減お米が恋しいけれどこの世界にあるのだろうか。何となくだけど有る気はしているので後で調べてみよう。


 朝食後、研究所に向かい飛ぶ。低い位置で浮く事もできる様になったので、飛行魔法を維持しておくだけならもう中庭に出る必要も無い。

 ついでに飛行魔法のLvも上げておいた。


 新たにやる事は無いようでエネさんがこの世界の文字について教えてくれる。

 といっても僕は『神の書庫ハクタクニナリタイ』の影響でこの世界の言語どころか神言さえも理解しているの覚えるのは発音だけだが、それもこれまでの三年間で大体マスターしている。あとは『神の書庫ハクタクニナリタイ』をつかって応用するだけだ。

 そんな僕を見抜いたのか、エネさんの性格なのかはわからないけれど、エネさんは僕に一度教えたら後は自習をさせる。空いている研究室に本と共に放り込まれて終わりだ。

 教えるのが下手すぎると思う。それでも僕には問題ないけれど・・・。


 聞いた所エネさんは本が好きでいつの間にか覚えていたので他の人がどう覚えていったのかわからないらしい。そして僕が同じ様に覚えると喜んでくれた。

 (いつかエネさんの子供が文字を覚えるのを苦労することがあったら謝らないといけないな・・・。)


 与えられる本は最初こそ絵本だったけれど、次第に魔法の本が増え、エネさんの所で埃をかぶっていた本までも運ばれて来た。

 様子を見に来てくれたカルアさんも最初こそ呆れていたけれど、僕が本を読める事がわかると必要ない本をくれる様になった。おかげで魔法関係の知識はどんどん増えるけれどもっとこの世界の事についてとかも知りたい・・・。


 ちなみに、米はあるらしい。

 『米』:イネ科イネ属である稲の果実である籾の外皮を取り除いたもの。あきたこまち、こしひかり、ひとめぼれの三種類がある。おにぎり美味しいよね。コンビニのおにぎりもおいしい。だれか海苔もつくってくれないかなぁ。


 おそらく少年神あいつが地球の日本に行った時に食べて気に入ったので、この世界でも作ったのだと思う。米があるのは嬉しいけれど、何処で栽培しているとかの情報は無い。

 世界地図の情報はくわしくあるけれど、何処がどの国であるとか国境についての記述もほとんどなかった。文化についても記述が無い事が多いので少年神あいつが行った所しか乗っていないと考えるのが妥当だろう。


 そんな風に日々を過ごすうちに父親へ王の命が下された。


 ウェルザード王子が言っていた通りに爵位返上の上にゴーガス村へ家族と共に赴任するという内容だ。出発は準備のでき次第と言われているので準備を既に進めていた父達は数日中には出発するのだろう。


 



 見送りの人は少ない。僕とメリナそれとウェルザード王子の三人だけ。


 父、次兄、祖父は馬。義母は馬車の中。従者はもう一台の馬車と御者にわかれている。荷物が少ないのは色々と処分したからだろう。

 父と祖父は再びこの地に戻るつもりは無いらしい。




 昨日、神木の母が眠る場所で少し父と話した。





 父と二人母への挨拶をしに来た。他に供は居ない。


 花を捧げ無言で祈ると父が口を開く。


 「ルイジュ。俺は父親として失格だった。」


 確かにあまり顔を見せなかったけれど、暮らして行けたのは父のおかげだ。


 「それに家長としても男としてもだ。暴走を止める事ができた立場に居たのに止める事ができず、自由に生きて来たあいつを貴族という堅苦しい物に押し込めその羽を捥いでしまった。それでもあいつはお前が生まれた事を喜んでいたよ。」


 母親は何故冒険者になったのだろう。父の言う通りに自由を求めてだったのか・・・。

 それはもう誰にもわからない。


 「だからせめて騎士として俺と親父は一騎士として王国の為に生き、死ぬつもりだ。それが生きる事を許してくれた王への恩返しでもあり、家を継がねばならないケインの為になる事でもあろうからな。そして、その生き方を選んだ以上お前の助けになる事は殆どできないだろう。金銭面での援助くらいなら多少できるだろうが・・・。」


 「大丈夫です。幸い王家の皆様はよくしてくれますし、成人までには一人で生きて行ける様になるつもりです。それに固有魔法もありますし、いつかは世界を見てみたいと思っていますから。」


 寂しくないかと言ったら嘘になる。ただ母と別れた時程の寂しさも悲しさも無い。


 「すまんな。俺が言える事は自由に生きてくれということだけだ。世界が見たいのなら母のように冒険者になるのも良いだろう。自由になりたいのならブラッドの名を捨てるのも一つの手だ。貴族というのはその名が有るだけで多かれ少なかれ面倒に巻き込まれる事も多いからな。勿論特権もあるのだがメリットとデメリット両方を考えて判断するが良い。相談には何時でものる。恐らく王子も相談には乗ってくれると思うが・・。」


 「はい。」

 父も貴族というしがらみで苦しむ事も多かったのだろう。その声には重みがある。


 「ただし、名を捨てても俺が父親だと言う事は変わらん。何時でも頼って来い。頼りがいの無い父親かもしれんがな。」


 「ありがとうございます。その時が来たらお願いします。」


 「元気でな。」


 最後にきつく抱きしめられて母の前での会話は終わった。








 「ルイジュ様。」


 メリナの手が肩にかかる。


 「うん。」


 「メリナはルイジュ様が大きくなるまで一緒に居ますからね。」


 「えっ!?結婚しないつもり?」


 「な・何を言うのですか!」


 「だって後十年もしたら確実にメリナ行き遅れじゃん。」


 「そこは僕がもらってやるよとか、メリナはいつまでも綺麗だから大丈夫とか言えないのですか。」


 「そんな無責任な事は・・・。」


 「一度きっちりお話しする必要があるようですね。」


 「はははは。」


 僕らのやり取りにウェルザード王子が笑い出した。


 「まぁメリナ孃が行き遅れない様にルイジュ君はしっかりと勉強するんだね。まぁ王城で働いていたと言えば嫁の行き手もあるだろうさ。」


 「ウェルザード様、そう言う事ではなくてですね・・・。」


 ウェルザード王子の笑い声とメリナの怒る声が父達を追いかけて森へと消えて行く。



 それに見上げれば鳥が森の奥へと飛んで行った。



 僕には翼がある。



 メリナやウェルザード王子も側に居る。



 寂しくなったら神木に行っても良い。



 それでもたまには父親の所に顔を出そう。




 僕には翼があるのだから。






闇の女神ルーナの加護』:闇の女神の加護を得た人に現れる称号。闇魔法への補正が付く。


—ステータス— 

—ルイジュ・ブラッド(3)—

種族:ハーフエルフ Lv01

職業:

スキル:『無形魔法』 Lv01

固有スキル:『神の書庫ハクタクニナリタイ』『神通信(オリヒメトヒコボシ)』『神の贋作カメンノキミ』『神託カミサマノヒトリゴト』『飛行魔法』 Lv10

称号:『殉教者ムサシボウベンケイ』『神子エルニーニョ』『天駆ける者コノソラハボクノモノ』『神言ヒフミウタ』『創世神の加護キミハボクノモノ』『風の女神シルフィードの加護』『光の女神ソールの加護』『闇の女神ルーナの加護』

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