おいしいごはん。
おいしいごはんをつくったら、笑ちゃんが食べてくれる
家族みたい。
ごはんは大事、大事
笑ちゃん
あかりと2人っきりでいるの、もうやんなったの?
あかりだって、もう気まずいかもしれないって、ダメかもしれないってかんじてるよ?
もっともっとダメになるかもっしれないって
でもあかり学校もちゃんといってるし
お外ではきちんとした子、してるでしょう?
笑ちゃんが外の子ともお話しなさいっていうからサークルだって入ったし
アルバイトだってしてる
だいじょうぶでしょお?
これ以上おちていったりしないでしょう?
「ねぇね、どうしたの?」
悩みの原因が口きいた。どうしたのじゃないし、あかりは今あんたのせいで悩んでんの。あぁ、笑ちゃんなんでこんなん拾ってきたの?猫とか犬だって、あかりはぎりぎり許してきたのに
「ねぇね、にぃにはどこいったの」
「あかりはあんたのねぇねじゃないし笑ちゃんはあんたのにぃにじゃない」
冷たく言い捨てた。だって今ここ他に大人居ないし、こんな小さい子相手にいい顔すんの馬鹿みたいだし。
「あかりちゃん、笑ちゃんね、困ったことがあったらあかりちゃんに言いなさいって言ってった」
「あっそう。あかりは笑ちゃんから何も聞いてないよ?」
笑ちゃんはあかりにそんなこと言ってないもん。まだお仕事してるはずの時間にいきなり帰ってきて「ごめん、また拾った、今日仕事遅くなる」って言ってまたすぐ出て言っちゃったし。あかりは怒ってるの。この前の猫ちゃんだってやっと里親探してくれるところに預けたばっかりだったのに、また拾ってきて
「あかりちゃん、あたしお腹すいた」
なにこの子、さっきから冷たくしてんのにずうずうしいなあ。
「笑ちゃん言ってたよ、あかりちゃんがいじわるしたら笑ちゃんがあとでおこってあげるって」
「あかり意地悪なんかしてないもん!」
なにこの子!むかつく、むかつく!得意げな顔なんかしやがって!笑ちゃんはあんたの味方なんかじゃない、あかりのことあんたなんかが理由で怒ったりするわけないじゃない!生意気、生意気、生意気、生意気!
「あかりちゃん、ごはんつくるの上手だね」
「当たり前でしょ、笑ちゃんのために作ったやつだもん」
結局オムライス作ってやった。笑ちゃんの晩御飯作るついでに。だって言いつけるとか言ってうるさかったし、もし笑ちゃんの機嫌悪くなったら怖いし。
「あたしねえ、今日ひとりでごはんつくってたら笑ちゃんがいっしょにおいでって言ったの」
「ふーん、あんたんちどこ?」
「山岸さんちまがったとこ」
「山岸さん知らないし、」
なにこの子、山岸さんって誰よ。なんでこの子がご飯つくってる所に笑ちゃんが居るの?誰か知り合いの子?まさか浮気なんて……ありえないよね笑ちゃん。
「あんたのお母さんって笑ちゃんの知り合い?」
「ううん、たぶんちがうよ、あたし笑ちゃんと会ったの今日がはじめてだもん」
なにそれ全然わかんない。笑ちゃん誘拐してきちゃったの?
「あんた、帰んなくていいの?」
「……うん」
どうしたんだろう、今まで頼んでもないのにぺらぺら喋ってたのに、なんか俯いてるんだけど。子どもって何考えてるかわかんないから嫌い。
「あかあさんねえ、あたしはひとりでごはんたべれるから、夜はたべてきなさいっていうの」
「それでねえ、あたしいつもコンビニでごはんつくるの」
「もういいよ、わかったから」
わかった。
わかってしまった。この子が笑ちゃんに拾われた理由。全部なんて聞かなくたってわかる。だって
「あたしね、笑ちゃんがここに連れて来てくれて嬉しかったよ」
あかりも同じ。
そういうことか、笑ちゃん、ねえ?あかりと同じだから連れてきたの?今までの犬も猫も皆そうか。なあんで気がつかなかったんだろう。なるほど、見れば見るほどあかりに似てるじゃん、大きな目、高い声、にこにこ、にこにこ機嫌伺ってる顔……腰まである長い癖毛。
ねぇ、ねぇ笑ちゃん。
ずっと怖くて聞け無かったんだけど、笑ちゃんはさあ
あかりだから、
拾ったんだよね?