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G

作者: 内津安
掲載日:2026/02/11

ぼくはゴキブリ。

だからいつも暗い部屋の隅っこでじっとしている。でも、ご飯を食べないといけないから人間がいなくなってからダイニングへ行くのだ。ダイニングに置いてある乾麺をこっそり持ち帰って部屋で食べるんだ。人間は気づいているみたいだけど、ぼくに何も言ってこない。

ご飯を食べたらトイレの時間。ぼくはゴキブリの中でも清潔感があるほう。だからいつも空のペットボトルに入れてる。ちゃんとふたを閉めて臭くならないようにしてる。それでも人間が入ってきたときは臭い臭いというのだけれど。

だから、たまにぼくは水浴びをしに行く。たまに。前はいつだったけな。覚えていないや。覚えていないんだったら、ずいぶん前ってことだな。人間は毎日毎日入ってるみたいだけど、めんどくさくないのかな。人間は人間に合わないといけないみたいだから、大変なんだよきっと。

外は真っ暗。ぼくは独りだ。でも仲間がいる。そいつらと仲良くいつも意思疎通している。ぼくらはゴキブリ。でもたまに人間が紛れ込んでくる。人間はぼくらに人間になれっていってくる。でもぼくらゴキブリが人間になるなんてできっこないじゃないか。人間は明日仕事があるだとかいってあきらめた。ぼくらゴキブリの勝利だ。人間のいる夜は嫌いだ。

昼は家の中に人間はいない。だからぼくは自由になる。この間いっぱい大声出して遊ぶ。あと欲も処理するね。昼は人間が来ないから、ゴキブリ同士で仲良く欲をあげてあそんでみんなで処理するのさ。そしたらあとでそれを思い出して独りでも処理できるんだよね。

ゴキブリ同士で話すのは楽しいけれど、ゴキブリ同士でよくケンカしちゃうのが玉にキズ。どうせみんなゴキブリなのにどうしてこんなに言い争うんだろう。って前までは思ってたけど、最近気が付いたんだ。ぼくもみんなと喧嘩しちゃうなあ。間違ったことを言っちゃたときにゴキブリたちはそれをめちゃくちゃ掘り返して攻めてくるんだ。ぼくは恥ずかしくて恥ずかしくて、でもすごくいらいらして、ついついそれを隠すようなことを言っちゃて。そしたらみんながもっと攻めてきて。だから間違ったことを言わないようにしようって思ってるよ。それにすぐ認めるようにしようってね。

ゴキブリは独りでも世界を動けるから、ゴキブリ同士でつるむことよりも実は人間の観察をしてるのが多いってしってた?人間はゴキブリにならないように無駄な努力をした馬鹿ばっか。ゴキブリになったほうが幸せなのに。たまにぼくらを認めてくれる人間がいたり、人間のことを尊敬してるゴキブリもいるけどそんなの知ったこっちゃない。わざわざ人間になったやつとゴキブリになり切れない半端物なんていなきゃいいのに。でもぼくは人間がいないと生きてけないみたい。なんか人間が頑張って仕事してるらしい。人間はぼくらのためには働いてるつもりはないだろうけど、人間が頑張ったのがぼくらゴキブリのためにもなってるみたいだよ。ゴキブリは頑張らなくていいから、幸せだよ。やっぱり人間よりゴキブリのほうがいいんだ。


なんかつまんなくなってきた。ぼおーっとしてみる。ゴキブリのぼくにはたくさん時間がある。自由がある・・・。

あれ?

なんでぼくは自由なのにこそこそと食べ物をとりにいったんだ?

なんでぼくらは幸せなはずなのに、つまらなくなることがあるんだ?


あれ? なんで?


ぼくは


え?


僕は



一体・・・





なんでゴキブリみたいのになっちまったんだ?

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