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『日本改造計画』

『日本改造計画外電』その弐拾伍『多夫多妻』ドラマ(11)アフリカと氷河期世代

作者: 桃太郎

 本日は、就職氷河期世代になる事を余儀なくされた男とアフリカ人女性の物語だ。


 * * * 


「白川清子です。本日は、お時間を頂戴して頂き感謝申し上げます。泥沼太一様。」

「『NPO法人 竹取御殿 白川清子』さんですか。一体何の御用でしょう。」

「私共は、就職氷河期世代をメインターゲットとした結婚相談所です。」

「知っているよ。ネットで調べたからな。」

 等と言う無駄口を叩かない太一だった。

「こちらをご覧ください。」

 そう言って分厚いファイルをテーブルに乗せ、中身を太一に見せた白川清子。

「お見合い写真ですか。プロフィール付きなんですね。」

「はい。お手を煩わせません様、付け加えるなら、全員共通する特徴がございます。

 一つ、来年三月に高校卒業する十八歳であること。

 一つ、今年の地方公務員採用試験合格者であること。

 一つ、アフリカ出身者であること。

 一つ、妊娠に障害がないこと。

 一つ、日本語、日本の習慣に堪能であること。

 一つ、日本に帰化するためには、日本人との結婚が必要であること。

 以上になります。」

「成程、そういう条件だからこそ、日本人なら誰でもよい。

 就職氷河期世代で、今はベーシックインカム頼りのおっさんでもよい。

 兎に角、結婚したい訳ですか。」

「それは、否定しません。ですが、結婚すればあなたの助けにもなります。」

「何の助けです。」

「まず、収入です。地方公務員、地元市役所の職員ですから。

 次に、彼女達は、日本料理が得意で、下手なものはいません。

 その他の家事は、家電が3ってくれますから問題ありません。」

「そう言えば、今の役所の職員は、一日13時間勤務+昼食夕食休憩計2時間。

 そう聞いた覚えがあります。」

「はい。法改正により、役所勤務の職員は、月水金勤務、火木土勤務、日曜勤務。

 そのように、担当分けを行い。週39時間労働に抑えています。」

「成程、そこでプロフィール情報に、月水金、火木土勤務と記載されてますね。

 では、持ち帰って検討します。」

 そして、白川さんから受け取った紙製の手提げ袋にファイルを入れて持ち帰った。


 * * * 


 後日、ファイル中の一人の女性とお見合いする太一だった。

「お初にお目にかかります。黒川正子18歳、アフリカ、マリ共和国出身です。」

「泥沼太一56歳です。今は個人事業主契約満了につき無職です。」

「では、後はお若い二人にお任せしましょう。」

 『NPO法人竹取御殿』の面々は、部屋を後にした。

「では、話せる範囲内で、あなたの事情を教えて下さい。黒川さん。」

「ハイ。ワタシは、七年マエにマリで、何者かにラチされました。

 で、日本にツレテこられ、日本式のキョウイクを受けました。

 日本食の作り方もベンキョウしました。

 衣食住は、日本政府からシキュウされていました。

 ですから、生活に不自由ありませんでした。

 こうして、コウムインシケンにも合格。

 来年三月には、高校を卒業できます。以上ですね。」

「……成程、概ね理解しました。で、和名を名乗っているのは帰国の意思なし。

 そう解釈しても良いのですね。」

「ハイ。ワタシとしては、日本にホネを埋めたいと考えています。」

「しかし、私と結婚するメリットは、日本国籍だけでしょう。

 それだけで、満足ですか。」

「そんな事は、ありません。あなたと、結婚すれば、子供もできます。

 そうすれば、ワタシは、『国母』アツカイです。ユウグウされます。」

「確かに結婚すれば、外国人でも準国民扱い。ベーシックインカムも支給される。

 但し、国民が年間七三万円に対して、準国民は半分支給される。

 更に、出産すれば物価半減も適用される。制度は把握しています。」

 等と言う無駄口を叩かない太一だった。

「では、こちらから結婚の条件を提示します。全て受理して下さい。」

「ハイ。なんなりとオネガイ申し上げます。」

「五つあります。まず、最低でも定年まで仕事を継続する事。

 次に、結婚式、新婚旅行、結婚指輪無。

 三つ、家事並びに収入の管理は全て私の担当。

 四つ、有責は一件につき百万円の慰謝料。 

 最後に、子供は運によるもの、できなければ諦める。」

「分かりました。全てジュリします。」

 こうして、泥沼太一と、黒川正子の結婚は、成立した。


 * * * 


 こうして、太一、正子の結婚生活は始まった。

 新居は『NPO法人竹取御殿』が用意した借家だ。

 夫の書斎(六畳)一間、夫婦の寝室(六畳)一間、子供部屋として四畳半二間。

 キッチン、リビング、風呂、トイレなど至れり尽くせりの間取りに家賃格安。

 妻は、月水金を13時間労働している為、その間は、家事を夫が担当。

 火木土は。買い物のみ夫が担当。その他の家事は、妻が担当。

 日曜は、月水金に食べる料理を二人で作って冷凍保存した。

 兎に角、妻の献身が凄まじい。妻の料理は、全て美味しい。家事も問題ない。

 微妙な事すらない。更に、感謝の意、あなたのおかげなどの言葉が毎日ある。

 これだけレベルが高い十八歳の女性と結婚できただけでも人生逆転している。

 後は子宝だけと言う感じになった。


 * * * 


 今日は、『竹取御殿』による聞き取り調査の日である。

「本日は、お時間を頂戴して頂き感謝申し上げます。泥沼様。」

「お久しぶりです。白川さん。」

「では、今月のご様子は。如何でしたか。泥沼様。」

「まず、何の不平不満も言わない。家事も過不足ない。仕事もできる。

 欠点らしい欠点の見つからない。素晴らしい妻です。

 むしろ、私は何もできていません。」

「そんな事は、ございません。ワタシには、モッタイナイ旦那様です。」

「……では、お子さんは如何でしょう。」

「旦那様が、毎日沢山ハゲンデいます。いずれデキます。」

「本当ですか。」

 と言う無言の視線を太一に向けた白川だった。

「妻にせがまれるまま、頑張っています。とは言え運の要素が強い事柄です。

 努力と結果は、必ずしも一致しません。今言える事はここまでですね。」

「分かりました。本日は以上にしたいと思います。」

 こうして、お開きとなった。そして、この十か月後、ご懐妊した黒川正子だった。


 * * * 


 子供が、誕生した事で母親(81歳)との同居を決めた太一だった。

「なんなのかしらねぇ。今どきの娘さんは、出産しても外で仕事かい。太一。」

「母さん、子育てに対する最大貢献は、金を稼いで子供に使う事だよ。

 それに未来母さんの介護だって必要になる。彼女の働きは重要だろう。」

「そんなもんかねぇ。」

 子供のおしめを替えながら、つぶやく母親だった。


 * * * 


 本日は、『NPO法人 竹取御殿』の忘年会である。

「本日は、皆さんお集まりいただき、ありがとうございます。

 我ら『竹取御殿』の年内ノルマ2473名の成婚達成しました。

 これもひとえに、皆さんのたゆまぬ努力の賜物です。ありがとうございます。

 飲み物は空いましたね……では……乾杯!」

「いやーーっ! ホント、よかったっすよね。パイセン!」

 一つ年下の後輩に背中をバシバシ叩かれて辟易とした貌になる白川。

「確かに、真理子ちゃんの担当を私が。一部受け持ちました。」

「えへぇーー……。それにしてもロスジェネのうれのこりオヂ。

 いっぱいいましたよねぇ。よくぜぇーーんぶはけましたよねぇ。」

「飲み過ぎなら、少し休んだ方がよろしくって、真理子ちゃん。」

「らいりょーーぶぅっ! ワイン、アカ、おねがいしまぁーーす。」

「いわゆる就職氷河期世代も最年長が60代に突入した。

 だからといって、彼らに18歳のアフリカ人をあてがった訳ではない。

 公務員試験に落ちて、浪人した二十歳以上をあてがった。

 中には、60代の就職氷河期世代や、女性もいる。

 それらは、他のNPO法人が、担当している。」

 等と言う無駄口を叩かない白川だった。


<END>


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