長い時間をかけて
長い長い夢を見ていたようだった。
私は、きっと無知で愚かだったから、わかるのにとても長い長い時が必要だった。
目が覚めれば、生みの母が目の前にいた。泣いていた。私が、死んだころよりもまだ、小さかった。昔は、怖くて怖くてたまらない存在だったのに。
「あなたのせいよ。生まれてこなければよかったのに。どうして。」
明らかな拒絶。でも、あの頃はわからなかったものがあった。生みの母は、私を拒絶しても、離れようとはしなかった。私が泣けば、世話をするし、あやす。それは、まだ、幼いながらの母親の行動だった。
でも、目に見えて疲労していた。寒い狭い小屋の中、二人で過ごしていた少しだけ暖かかったその場所で、彼女は、限界だった。ゆっくり、ゆっくり死に向かっていった。
部屋の隅に敷いた一枚のぼろ布をまとって私をそばに置き、起き上がれない体で私をじっと見ていた。そして、小さな、かすかな空気が少し揺れるほどの声で
「ごめんね。わたし、ダメだから、なんにもしてあげられない。これから、なにがおこるのかもわからない。ごめんね。まもれなくて。わたしの、ゆいいつのかぞくなのに…はじめてのわたしのいばしょなのに。まもってあげたかったのに…わたしのこども」
それが、最期だった。少し暖かったその場所は、急に震えるほどの寒さになった。からっぽの寒い、誰も助けてくれない
まるで牢のよう
そこまで思って、私はすべてを思い出してはっきりした。前回の人生。それだけでなく今までの人生を。