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第2話

 事務所に駆け込んだ俺は、ゴミ箱をひっくり返して漁る。

 ゴミが床に散乱して一気に汚くなったが気にしない。

 必死に手で描き分けて目当ての物を探す。


「あれからゴミは捨ててなかったはず……!」


 さほど時間をかけずに、俺は求めていた物を発見した。

 それは「遺書2」の便箋だった。

 コーヒーの染みが付いたそれを慎重に開き、続きから内容を読んでいく。


『宝くじが当選した君は、大慌てでこの遺書を発掘して読み始めたことだろう。別に恥じることはない。それが当然の反応だからね。オカルト否定派の君も、私の予知能力を信じたと思う。だから改めて依頼を申し込みたい』


 手紙の送り主——比良田仙心が依頼したいのはよく分かった。

 それより俺の行動をピンポイントで的中させていることが気になる。

 振り返ると最初の段階から先読みされていた。

 事前に書いた手紙とは思えない精度である。

 予知能力はおそらく本物だろう。


 認めることに悔しさを覚えた俺だったが、次の文章で何もかも吹っ飛んだ。

 俺は目を見開いて同じ箇所を何度も読み直す。


『もし依頼を受けてくれるなら、百万円の百倍……一億円を報酬にしよう。君はまた宝くじを一枚買うだけでいい。悪い話じゃないと思うがね』


 報酬が一億円だと。

 普通なら馬鹿げていると鼻で笑うところだが、こいつは前金を宝くじで渡してくるような奴だ。

 信憑性はかなり高い。


(一億あれば借金を完済してもお釣りの方が多いぞ。最高じゃねえか)


 金額の大きさに自然と口角が上がってしまう。

 冷静に考えれば、一億円に見合う依頼なんてリスクそのものだ。

 しかし、細かいことはどうでもよかった。

 ノリと勘で生きていく。

 それが俺のモットーである。


「分かった。一億円の仕事、やってやるよ」


 俺の答えを見透かしていたかのように、手紙はスムーズに話を進めていく。


『依頼を受けてくれてありがとう。明日、そちらの事務所に私からの荷物が届く。そこに依頼内容を記録してあるから確認してほしい。以上だ』


 手紙はそこで終わった。

 そして翌朝、事務所に段ボールが届いた。

 中には古いカセットテープと小型のレコーダーが入っていた。

 カセットテープは①から順に番号が振られて何本も詰め込まれてある。


 俺は年季の入ったツールに呆れる。


「時代遅れにも程があるだろ……」


 ぼやきつつも①のテープをレコーダーで再生する。

 するとノイズ混じりの女の声が聞こえてきた。


『時代遅れで悪かったね、インチキ霊能者の笹垣君』

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