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怒りの涙-Reunion  作者: 高村聡
第6章「赤く腫れた頬」
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第40話 ダサくて格好が悪い

「ごめん」迎えに来た果穂にもう一度深く謝る。

 

「気にしないで」彼女は気遣ってくれたが、いつもより距離がある気がした。


 やっぱり、元の関係には戻れないのかもしれない。


 果穂が運転する帰り道の車の中は生きた心地がしなかった。


 これから、どうなるんだろうか。不安しかなかった。


 自宅に戻ると、ずっと気を張っていたせいか、疲労を感じソファで気を失ったかのように眠りについた。


 目を覚ますと既に夜になっていた。


 疲れは取れず、身体がだるい。

 

 起き上がると、床にタオルケットが落ちた。


 果穂が掛けてくれたみたいだ。彼女の優しさに涙が溢れる。


 

「起きたの?」台所から声が聞こえた。顔を出すと、彼女が料理を作っている最中だった。


 食欲はなかったが、出された食事を完食した。


 久しく食べていなかった家庭の味が身に染みた。

 

「今日、泊まって行ってもいい?」

「何言ってるの? ここは孝典の家じゃない」果穂は優しく受け入れてくれる。

 

「ありがとう」聡の目からは涙が溢れた。


 こんな優しい人を裏切ってしまった自分が嫌になる。

 

「お風呂入ってきなさいよ」果穂の言葉に甘えて、お湯に浸かる。

 

 温かい。心の汚れが落ちていくように感じる。


 浴槽の中で泣き続けた。

 

 浴室を出ると、リビングに果穂の姿は無かった。


 寝室に向かうとベッドで寝息を立てていた。


 起こさぬよう、彼女の額にキスをする。


 そして、隣に添い寝し、目を閉じる。


 彼女と同じシャンプーの匂い。



 懐かしい香りに包まれながら眠りについた。


 

「休んでた分、しっかり働いてもらうからな!」

「勘弁してくださいよ〜」聡は、いつもの日常に戻りつつあった。

 

 それは果穂との関係も同じだった。


 あの日のことを水に流してくれたおかげでわだかまりも解け、ギクシャクとしていた関係は修復した。


 ただ、次は無いと釘を刺されたが。それで良かった。


 もう二度も同じ過ちを犯すことはないのだから。


 聡は、神に誓った。



 半年経ったある日、聡は果穂をデートに誘った。


 デートはデートでも、いつもとこれは違っていた。


 緊張感が違うのだ。念入りに計画したサプライズである。

 

 彼女は、どんな顔をするだろうか。


 楽しみで仕方ない。聡は緊張して、口数が減っていた。

 

「どうしたの? 何か元気無いね?」果穂は普段通りではない聡に気付き、声を掛ける。


 なぜだか、心を見透かされてるような気がした。

 

「そう? 元気だけど」そう言って、聡は彼女を予約していたレストランに連れて行く。

 

 日頃は行かない少し高めのシックなお店だ。

 

「今日って何か記念日だったっけ?」果穂は不思議そうな表情を浮かべている。


 その反応を見て、胸がチクッとした。

 

「え? 違うと思うけど」聡は空惚ける。

 言うにはまだ早い。食事を楽しんでからと決めている。

 

「だよね。じゃあ、なんで?」

「たまには、いいじゃん。こうゆう所も」

 

「ふーん。プロポーズでもしてくれるのかと思った」

「んなわけないだろ」彼女の一言に対して、思わず心にもないことを言ってしまい、計画していたプロポーズ作戦は見事に散ってしまった。

 

 聡は、作戦のことを忘れて、食事を楽しんだ。


 食事を済ませてからも、妙に期待されてる気がして、結局言い出せず店を後にした。


 聡が家に帰ろうとした時、果穂は腕を引っ張った。

「帰る道、こっちだよ?」

 

「行きたい場所があるの」彼女に腕を引かれるがままに連れて行かれた。


 そこは、夜景が凄く綺麗に見える場所だった。


 周りには人がいなく、この空間は二人きりだ。


 聡はニヤけた。背伸びして、ディナーの予約なんて似合わないことしなくて良かったんだと。


 ――ダサくて格好が悪いのが僕だ。

 聡は大きく深呼吸する。


 それから、ポケットに入れていた箱を出した。


 

「僕と結婚してください」聡は箱を開けて、指輪を見せた。


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