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怒りの涙-Reunion  作者: 高村聡
第6章「赤く腫れた頬」
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第39話 嵌められた罠

「間違えました」聡は思わず、玄関から出ずに扉を閉めた。


 受け取り手が間違えましたと言うのはおかしいと思いながら、見間違いかと覗き穴でもう一度確認する。


 

 ――ガチャッ。

 姿を確認する前に、何者かによって扉は開かれた。

「え?」聡はよろけた。開けたのは、やはり2人の男だった。


「結城孝典さんですね?」男たちは尋ねてきた。凄く嫌な予感がする。

 

「あ、はい」聡が返事すると、警察手帳を見せてきた。


 ――終わった……。

 扉は塞がれ、逃げ場が無い。もうどうしようもなかった。

 

 居場所はなぜバレてしまったのか。これを知っているのはただ1人だけ。

 

 聡は麗香を見た。

 

「ごめーん。話しちゃった」彼女は両手を胸の前で合わせ、ペロッと舌を出して悪びれる様子もなく言った。


「なるほど、僕はまた嵌められたのか」もはや笑うしかなかった。


 

「お話聞かせていただけますか?」

「はい……分かりました」聡は仕方なく応じ、両腕を差し出した。

 

「いえ、この場で大丈夫です」刑事は腕を下ろさせる。

「どうぞ、中に入って下さい」麗香は刑事を家の中に案内する。

 

「失礼します」聡は戸惑っていた。浦原菜々子殺しの犯人として、最も疑われていたはずだからだ。


 2人の男がリビングテーブルの向かい側に座る。


 威圧感がすごい。逃げられない状況だった。

 

「最初に確認しておきますが、結城さんで間違いないですね?」

 

「はい、そうですけど……」

「では、お伺いします。浦原菜々子が亡くなったことはご存知ですね?」


「はい、知っています」

 

「発見されたのは浦原の自宅で、目立った外傷などはありませんでした」



「死亡推定時刻は、午前7時前後。ちょうどその頃、マンションの監視カメラから、あなたが慌てて出ていく姿が確認しています」



「前日の夜に浦原と帰宅し、彼女の部屋に一晩泊まりましたね?」


 

「はい、間違いありません」

「前日のことを詳しく聞かせてもらえませんか? 」


 

「浦原と小学校の同窓会に行っていました。そこで飲んだ後、二次会には行かず、彼女の家に行き泊まりました」


「なるほど、その流れは監視カメラの映像からも確認されています。それから?」



「次の日、彼女の家で普通に朝を迎えました」

「では、慌てて家を出た理由をお聞きしてもよろしいですか?」


 

「それは浦原が私の恋人の梅崎に身の危険が迫ってると、脅されていて」

「どうして、脅されたんですか?」


 

「昔の話をしたからです。聞かれたく無いことがあったみたいで」

「本当に脅されたんですか?」


「本当です。嘘はついてません」

「それで、梅崎さんには何かありましたか?」

 

「いいえ、特に何もありませんでした」

「では、なぜ嘘をついたのでしょう?」

 

 

「分かりません、早く出て行って欲しかったのかもしれません」

「それで、その後自殺したと?」


 

「自殺? 自殺だったんですか?」


「はい。司法解剖の結果、タリウムによる毒死だと診断されました」


「そのタリウムですが、夫の清水大洋さんが亡くなった時の物と成分が一致しまして」


「実行犯の森尾和希から一部を受け取っていたみたいです。これは、森尾からも証言が取れてます」刑事が言っていることが事実ならば、菜々子がまだ人を殺そうとしていたことになる。


 

 新たに被害者が出なくて良かったと思う反面、あの日あの時記憶が戻っていなければ、自分もしくは誰かが殺されていたかと考えるとゾッとする。


 

「じゃあ、僕に聞きたいことって何ですか?」

「実は、浦原の遺書が見つかりまして」



「遺書?」

「そこに書かれていたが、『雅は生きている』その一文が残されていました」


 

「雅は生きている……?」聡はその言葉を聞き、ハッとさせられた。

 

 

「浦原の交友関係を当たってみたのですが、雅という方はいらっしゃいませんでした。あなたならご存知かと思いまして、何か心当たりありませんか?」


 

「分かりません」聡は嘘をついた。バレないか不安だった。


「そうですか。ではまた何か思い出されたら、ご連絡ください」刑事たちは名刺を置いて、玄関に向かう。


 

「ご協力ありがとうございました」

「あ、はい。ご苦労様です」麗香が見送り、刑事たちは帰っていく。


 聡は無言のまま、座り込んでいた。



 ――雅が生きている!?

 そんなはずがない。


 針谷雅は死んだはずだ。


 それになぜ、浦原がその事を知っているのか。


 

「どうしたの?」麗香が聞いてくる。

「何でも無い」聡は立ち上がった。

 


「もしかして怒ってる? 私が刑事さんに居場所を漏らしたこと」

「いや、それは別にいいよ」


 

「じゃあ何? ムスッとして。もう疑いは晴れたのに」

「そうだな。もう終わったことだよな」聡は忘れることにした。


 

 針谷雅が生きてようとも、もう関係の無いことだ。



「果穂のところに帰りなよ、連絡してあげるから」

「うん。ありがとう、助かったよ」聡は頭を下げ、麗香に礼を伝えた。


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