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怒りの涙-Reunion  作者: 高村聡
第5章「一番じゃないと気が済まない」
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第29話 都合のいい女

 休み明け、味気ない日々を過ごしていた。


 ある日のこと、優希と菜々子は遊んでいた。


 優希は携帯に可愛いストラップをつけていた。

「これ? 可愛いでしょ? 優希にもらったんだー」優希は嬉しそうに話した。


 菜々子の心は嫉妬でいっぱいになる。


 こんなの貰ってない。


 貰ったことないのに。


 やっぱり聡にとって大事なのは優希だと思い知らされた。


 菜々子は下唇を噛んだ。


 二人は秘密の関係、感情を表に出さないように必死に隠した。


 自宅に帰ってから、聡に電話する。


 しかし、彼は出なかった。


 

「何で出ないの!」菜々子はベッドに携帯を投げつけた。悲しくて1人で泣く。


 聡に会いたい。会ってもう一度愛し合いたい。

 

 ――どうすれば会えるの?

 菜々子は考えた。


 会いたいと伝えるだけではダメだ。



 何かきっかけがないと。


 ――あの女を殺せば……。

 優希さえいなければ……聡は戻って来てくれるかもしれない。


 菜々子はすぐに行動に移すことにした。


 次の日の放課後、優希と一緒に帰る。


 途中寄り道して帰り、階段のある場所までやってきた。


 菜々子は周りに人がいないことを確認すると、優希を突き落とした。


 頭から血が流れて地面に広がる。


 成功した。


 菜々子は走って逃げる。



 絶対に見つかってはいけない。

 

 捕まったら全てが終わりだから。


 逃げ切った菜々子は、そのまま家に帰った。


 これで良かったのだと思った。


 その夜は、何だか眠れなかった。


 

 翌日、平静を装っていつも通り登校する。


 勿論、彼女は休んでいた。


 佐々木先生から、意識不明で入院していると聞かさせれる。



 まだ優希は生きていた。


 しぶとい女だ。


 彼女が目覚めないか、不安で息が詰まった。

 

 ――池山実加が後ろから押したんじゃないか。

 焦りから、嘘の噂を流す。


 実加は前日に優希と口喧嘩していて、その事はみんなが知っていた。


 だからその噂はすぐに広まった。


 翌る日、奥仲優希は静かに息を引き取る。


 大事な友人を失ったけど、多少の犠牲は必要だ。



 菜々子は一安心した。


 これで聡に会える。


 一方で実加の虐めは過激化していく。


 程なくして、彼女は不登校になった。



 それでも菜々子には関係ない。



 事実は闇に葬られた。


 聡は優希の葬式のために東京に戻ってきた。


 やっと会えた。もう離れたくない。

 

 彼は葬儀で泣きじゃくる。


 菜々子は聡の手を握った。

 

 ――泣いてる姿見ると、きっと喜んでくれるよ。

 でも優希はもう居ない。



 勝者の余裕。


 聡は菜々子の胸の中で泣いた。


「あなたは私のものだよ」その日の夜、二人は身体を重ねた。


 聡に抱かれる度に思う。


 愛されてると感じる。


 この時間が永遠に続けばいいのに。


 このまま、ずっと二人で暮らしていきたかった。


 幸せだった。


 けれど、それは長く続かない。


 彼は葬儀のために戻ってきただけだったから、すぐに別れは来た。



 駅まで彼を見送る。

 

「また、すぐに会えるよね?」菜々子は目に涙を浮かべていた。

 

「うん、会いにくるよ」彼の返事はこの前と変わっていた。


 二人は改札の前で強く抱きしめ合い、キスをする。


 満足感に包み込まれ、菜々子はもう寂しくなかった。


 聡は新幹線に乗った。



 菜々子は見えなくなるまで手を振った。



 それから数日後、聡からの連絡は途絶えたままで、菜々子の元には何も届かなかった。

 

 ――彼は私のもの。

 そう思うだけで寂しさは紛れた。


 でもそう長くは続かない。


 聡に電話してみる。


 しかし、また繋がらない。


 メールを送っても返事はない。


 次第に不安になり、自暴自棄になった。


 

 どうしてこんなことになったんだろう。



 菜々子の中で疑問が渦巻く。

 もしかしたら、彼にとって都合の良い女で捨てられたのかもしれない。


 

 菜々子にとって辛い現実。


 そんなはずないって思っても、考えてしまう。


 彼は優しい人だから、傷つけないように黙っているんじゃないか。


 嫌な予感だけが的中する。

 

 連絡が来ることを信じて待つしかなかったけど、彼は戻ってこなかった。


 毎日のように連絡しても音沙汰なし。


 結局、彼が帰ってくることはなかった。


 

 ――私は捨てられてしまった。

 彼への思いはプツンと切れてしまった。


 

 残ったのは、心の深い傷だけ。



 その傷は時間しか癒してくれなかった。


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