会えない日々
「純くん成分が足りない……」
会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたいよぉ~!
ていうか、会ってもいいんじゃない? 少しくらい会ったって何も変わらないんじゃないかな?
「よし、電話しよう」
SNSを開いて純くんとのメッセージ画面を表示させる。そして通話ボタンをタップしようと思ったところで、ふと我に返る。
「いや、やっぱりだめだ」
告白された日に私が泣いてしまったことで、過去とは大きく変わってしまったんだ。ただ、私が泣いてしまっただけでだ。
結果的に見れば、私と純くんの関係については何も変わっていないけど、先輩たちとくじらちゃんの関係は大きく変わっている。
それを考えると、本来会っていないはずの日に会ってしまったら、修復できないくらいの何かが起こってしまうかもしれない。
「過去の私はなんで平気だったんだろう……」
これくらいが普通と思っていたんだっけ? ありえないよね。今の私だからってわけじゃない。世間一般のカップルで考えて、この関係は絶対におかしい。
だって、夏休み初日に映画を一緒に観に行ったきり一度も会ってないんだよ。もう八月に突入してるっていうのに……。
電話で話したことなんて一回もなくて、メッセージも極めてシンプル。朝に『おはよう、今日も一日頑張ろう』、夜に『おやすみ、明日も頑張ろう』といった短いやり取りだけ。
「純くんのばーか」と、つぶやいたと同時にメッセージの受信音が鳴った。
『こんばんは。今日も暑かったね。倉住さんは、明後日の夜は何か用事があるかな? もし暇だったらで構わないんだけど、一緒に夏祭りの花火を見にいきませんか?』
純くんからデートのお誘いメッセージだった。当時、このメッセージ見たときは本当に嬉しかったな。
ああ、思い出した。当時の私も、会いたいという気持ちは強かったんだった。電話で話したいとも思っていたし、メッセージのやり取りも友達とするみたいに、もっと気軽にいろいろ送り合いたいって思ってたんだった。
だけど、自分から行動する勇気がなかったんだよね。だからこのメッセージを見たときは、小躍りするほど喜んだのを覚えている。
でも、今の私はこのメッセージを見てもちっとも嬉しくない。だって、今年の夏の花火大会は雨で中止になるから。花火大会が中止になったら、私たちのデートも中止になるんだ。
それを知っていても、過去の私と同じようなメッセージを送らなければならない。本来であれば嬉しいはずのメッセージに気が滅入る。
『こんばんは。うん、今日も暑かったね。花火大会のお誘いありがとう。明後日の夜は何も予定ないよ。是非一緒にいきましょう。』
うん。全然覚えてないけど、当時の私が打つとしたらこんなメッセージだと思う。
メッセージを送信すると、すぐに既読がついた。純くんからの返信も早かったけど、ただただシンプルに集合場所と時間を決めて、いつも通りに就寝の言葉を交わすだけのやり取りだった。
そして花火大会当日。万が一もあるかもしれないと期待をしていたけど、やっぱり今日は雨で、純くんに会うことは叶わなかった。




