ランプの魔神と三つの願い、その後
みなさん、突然ですが、ランプの魔神を知っていますか?
ランプといっても牛肉じゃないですよ。油を入れて火をともすほうのランプです。まあ世の中にはカレー将軍とかスパイス女王なんて人もいるそうなので、牛肉魔神がいたって、いっこう不思議はありませんけれど……ああ、こんなこと書いてると、無性にビーフカレーが食べたくなってきました。美味しいですよね、カレーライス。
おっと、話がそれました。で、そのランプの中には魔法のランプなるものがあって、その中には魔神が封じ込められていて、ランプをこすった人の願いを、三つ叶えてくれるんだそうです。
人の命を奪ってはならない、人の心を操ってはならない、死んだ人を生き返らせてはならない、願いを増やしてはならないなど、いくつかの制約はありますけどね。
さてみなさん、もし自分の前にランプの魔神が現れたら、あなたは何を願いますか? できれば、答えを考えてから続きを読んでくださいね。
考え終わりましたか?
何を願うかは人によりけりですが、よくあるであろう願いのひとつに、金銀財宝のたぐいがあると思います。これから話す男も、抱えきれないほどの財宝を願ったひとりでした。そしてその男はというと……。
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「わっはっは。立派なお屋敷、山ほどの財宝、うまい酒に料理。ランプの魔神のおかげで大金持ちじゃ。わしはなんという幸せ者だろう!」
ひょんなことから魔法のランプを見つけ、魔神に願いを聞いてもらった男がいました。男の願いはかいつまんで言うと「財宝」と「健康」と「美貌」でした。
使いきれないほどのお金がありますから、贅沢し放題。
でも健康を願ったから、どんなに飲み食いしたってへっちゃら。
美貌は……ジェームス・○ィーンでも沢田○二でもリバー・フェ○ックスでもデビッド・ベッ○ムでもキ○タクでも、とにかくあなたが連想するイケメンだと思ってください。なので女の子にもモテモテです! そこにシビれる! 憧れるゥ!
……え? 顔ぶれが古い? ……まあいいでしょう、話を続けます。とにかく、そんな幸せ絶頂期の毎日を送っていた男のもとに、再びランプの魔神が現れたのです。
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「おお、ランプの魔神ではないか。今ごろ何用かな? ははあん、さてはまたわしの願いを叶えてくれるのかな? わしはこんなに運のいい男なんだ、特別に二度願いを聞いてもらっても、いっこう不思議はないわい」
でも、魔神は首をふりました。
「あいにく、そうじゃないんだ。用は……これさ!」
そう言って魔神が手をひと振りすると……なんということでしょう! お屋敷も財宝もお料理も、煙のように消えてしまったではありませんか!
「な、なんだ! 何のまねだ! わしの財宝を返してくれ!」
男はかんかんになって、魔神に抗議しました。でも魔神は涼しい顔で答えました。
「そうはいかないんだ。だって君の次にランプをこすった人の願いのひとつが『君の願いをすべて無効にしてくれ』だったからね」
「な、なんだとう!?」
そう、ランプの魔神は別に一回しか願いを聞かないわけではないのです。あくまでも「ひとりの願いは三つまで」なのであって、別の誰かがランプをこすれば、魔神はその人の願いを三つ叶えるのです。
「そんなひどい話があるか! 誰だそんな滅茶苦茶な願いをしたやつは! いや、そもそもランプは宝の倉にあったはずじゃないか! 誰がわしの倉に入ったんだ!」
男は顔を真っ赤にさせて、魔神に詰めよりました。
「その願いをしたのは、きみの召し使いの男さ。だいぶ怨まれていたようだね」
召し使いの男。
魔神の言葉に、男は記憶の糸を辿りました。
なにぶんこんなに大きなお屋敷です。とても一人では切り盛りできません。なので、男は金にものを言わせて、召し使いをたくさん雇いました。
でも、大金を手に入れ、イケメンになり、女の子にちやほやされるうちに、男はいつしかわがままで、誰に対しても威張りちらすようになっていました。召し使いたちを見下し、あざ笑い、ときには気まぐれに人前でさらし者にしたこともあります。きっと、それを怨みに思った誰かが、こっそり倉に忍びこんでランプをこすったのでしょう……。
「そんな願いこそ無効だ! わしは財宝と健康と美貌を願ったんだぞ! それが取りあげられるなら、ランプの魔神の役目を果たしていないじゃないか! あらためて願いを叶えろ! ランプの魔神の役目を果たせ!」
「それは無理だよ。なぜってその人の最後の願いは『ランプの魔神――つまり僕だ――を自由にする』だったからね。だから僕はもうランプの魔神じゃないから、そもそも願いを叶える力がないんだ。じゃ、用が済んだから僕はもう行くよ。なにせやっとランプから出られて自由になったんだからね。これから夢だった世界旅行に行くんだ。ああ、もちろん健康も無効になったから、これからは体に気をつけておくれよ」
そう言って、魔神(ランプの魔神じゃなくなっただけで魔神は魔神です)は飛びさって行きました。魔神だけに渡辺○明の曲が似合いそうです。男はへろへろと座りこみ、その後ろ姿を呆然と見ていることしかできませんでした。
ふと手元を見ると、小さな手鏡が落ちていました。財宝のうちに入っていなかったのか、それとも召し使いの誰かの持ち物だから消えなかったのでしょうか。男はそれを手にとって顔を映しました。そこには、イケメンの頃とはほど遠い顔がありました。
「ああ、ああ。何もかも失ってしまった。わしは何という不幸者だろう!」
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このお話はこれでおしまいです。みなさん、あなたの願いは何でしたか? 何を願うにしても、この男みたいにならないように気をつけてくださいね。
魔法のランプって、誰にでも使える武器みたいなものですからね。私だったら、その武器が自分に向かないようにしないと怖くて眠れませんわ。




