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ロリユーカイ(prototype)  作者: 冬時宇井好
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001-3 こうして私は誘拐されました!



ーーーー おや?おや?おや?



あのあと警察は直ぐに到着し、軽く事情聴取すると、犯人は車で近くの警察署へ搬送された。


その後、悠も各種手続きのため警察署へ。


犯人を捕まえてくれた女性に関しては喫茶店での聴取だけで解放されたので、悠は謝礼を支払おうとしたが、


「いやいや、受け取れないよ!」


と、辞退されたのでお礼の言葉だけにとどめる。


警察署では長時間拘束されるかと思ったが、警察へ受け渡そうとした際に犯人の男が最後の抵抗をしたことで公務執行妨害を犯してしまい、起訴内容が固まったためか、悠は各種手続きをすると帰宅が許された。


犯行動機については金銭目的。


海外旅行のパンフレットを見ていたので、バッグに金目のものが入っていると思ったらしい。


今回の不運は簡単に解決してくれたようで、悠は安心して帰路に就く。



(ーーーー おや?おや?おや?)



最初に気づいたのは、駅のホーム。到着した電車に乗ろうとしたときに、見知った人が別の扉から電車に乗り込む姿を見た気がした。



(ーーーー おや?おや?おや?)



そんなこともあるだろうとも思ったが、自宅の最寄駅に到着した電車から降りると、知り合いも降りてくる。



(ーーーー おや?おや?おや?)



たまたまかな?と、考えた・・・・・・けれど。


改札を出ると、同じ改札から出て。


自宅への帰道、後ろを歩く気配を感じて。


途中、店に入ったときは居なくなったが。


自宅マンションに到着したときには後ろにいた。



(ーーーー おや?おや?おや?)



ここまでくると無視できないので、マンションの自動ドアを前に立ち止まると、悠は振り返る。


そこには磨かれた銅のように輝く髪に、鍛え抜かれていながら豊満な身体が着ているスーツの内側から主張する女性の姿があった。


それは、窃盗犯を捕まえてくれた彼女でーー。


スマホを耳に当てていた彼女は、


「あ、私です。到着しました〜」


と答えつつ、悠を見ながら笑う。


その後、通話相手と少し会話すると電話を切り、スマホをしまいながら彼女が話し掛けてくる。


「こんなところで会うなんて、奇遇ですね」


「奇遇・・・・・・ですね」


本当に奇遇なのだろうか?と疑問だが、表面上は笑顔で相手に答えた。


「犯人を捕まえていただいた件、改めてお礼を」


「いえいえ、当然のことをしただけです」


「それはそうと、どうして “ここ” に」


悠の言葉に、彼女は頭を掻きながら答える。


「いや〜、上司がこのマンションにいまして」


「あ、そうなんですか?」


苦笑するように答える彼女が嘘ついている様子はなく、言っていることが本当なら、さきほどの通話での言葉も納得できた。


「せっかくの日本なのに、ろくに観光もできず残念ですよ。本場の寿司、天麩羅、コウベビーフ、ラーメンとか食べ歩きたかったのに」


「あはは、それは残念ですね」


「本当ですよ! 仕事ですけど、わざわざ日本に来たのだから高級店のひとつにでも連れてって、奢ってくれてもいいのに!」


彼女の様子に大丈夫そうだと判断した悠は、他愛のない会話をしつつ、自動ドアを開けると二人でマンションの中へと入る。


「何階ですか?」


「あ、最上階お願いしま〜す」


エレベーターに乗り込むと、彼女の目的の階数ボタンを押し、自分の住んでいる階数を押す。


自分が住んでいるのはタワマンではないが、家賃が少し高目のマンションなので、最上階と聞いた悠は『彼女の上司は稼いでるんだなぁ』なんて考えつつ、到着までの時間を彼女と話しつつ過ごした。


到着音が鳴り、開く扉。


「せっかくの日本だったのに事件に巻き込んでしまって申し訳ありませんでした」


「いえいえ、本当にお気になさらず」


「お時間があるかどうかわかりませんが、日本を楽しんでください。それでは」


「はい。また、会いましょう」


無邪気な子供のように手を振りながら言ってくる彼女に、悠は「そうですね」と答えながら扉が閉まるまでの間、小さく手を振り返す。


完全にエレベーターの扉が閉まり、悠は緊張を解くように息を吐き出した。


彼女は人当たりが良かったが、やはり知らない人と話すのは知らず知らず緊張してしまう。


人懐っこく、綺麗な女性だったので話すことに悪い気はしないが、今後会うことはないだろう。


(ーーー少々、残念だったかもしれないな)


なんて思いながら自宅の扉の前へ。


「ただいま〜」


返答なんてないことを知りながらも玄関扉を開けた悠は口にすると、背負っていたバッグを手に持ちかえつつリビングの扉を開ける。


「おかえりなさいませ」


すると、そこには居るはずのない、メイド服を着た、色白で、銀髪の小柄な女性が立っていた。


「へ? えっ? えっ?」


状況を理解できずに困惑する悠に、メイド姿の彼女は洗練された仕草でお辞儀をしながら告げる。


「お迎えにあがりましたーーーハル様」と。



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