004-オマケ 情緒不安定
事務所を飛び出したゴールドは悠を求めて自宅へと走る。
鍵の認証までの時間すらもどかしく、開錠された瞬間に扉を開け、部屋へと駆け込む。後ろからシルバーが何度か呼ぶ声が聞こえてはいたが、気にする余裕はなかった。
ブレシード姉様のことを考えるとーーー怖い。
いますぐ悠に抱きしめられ、頭を撫でてほしい。
「ハルーーー!!」
リビングにて彼の名を叫ぶが、そこに姿はなく、返事もない。
そのことにゴールドは上の階で寝てしまっているのだろうかと来たばかりのリビングから上階へと階段を駆け上がった。
「あ、お嬢様!」
階段にさしかかるとき、追いついたシルバーの姿があったが、そんなこと気にすることなく悠を求めて走る。
「ハルーーー!!」
上階に到着し、書庫エリアや多目的エリアを見まわし再び名前を呼ぶが、やはり返事はない。
「ハル!」
自室のベッドか?と思い確認するが、そこにも彼の姿はなかった。
自室から出てきてなおキョロキョロするゴールドに、追いついたシルバーは怪訝な顔をしていると、ゴールドが質問をしてくる。
「悠は?」
「いらっしゃらないんですか?」
お嬢様の言葉にシルバーは不安になり、
ゴールドは従者の言葉に不安が広がった。
ざわつく心に可能性を考えたゴールドは、ここより上にあるジムにいるかもしれない!と思い、すぐにでも確認したくて走りだす。
シルバーも事態を察し、そんな彼女についていく。
結論を述べると悠はいなかった。
ジムに併設しているキッチンエリアにも、バルコニーにも、もしかしたらと探した全部屋に悠の姿を見つけることはなく、ゴールドは再び戻ってきたリビングで立ち尽くす。
「………悠?」
「お嬢様。もしかすると他のエリアに行ってしまい戻ってこれないのかもしれません」
安心させるために口にするが、内心ではシルバーも焦っていた。
いますぐにでも自身が口にした可能性を確認しに行きたかったが………それは出来ない。
「なんでーーー悠がいないの?」
「お嬢様、大丈夫です」
「大丈夫?なにが大丈夫なの?」
普段とは違うお嬢様の様子。まるで迷子になってしまった子供のように不安げで、感情の振れ幅は大きくなり、瞳の奥には恐怖が浮かぶ。
「なにが大丈夫なの!」
混ぜこぜになる感情が暴れ、内にとどめることができなくなり、あふれだした気持ちのままゴールドはシルバーに向かって叫んでしまう。
ビクッとするシルバーの姿に、ゴールドは “ はっ ” として申し訳ない気持ちになる。
ーーーけれど、
そんな気持ちすら感情は塗りつぶす。
「あ、あ、あぁ、あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
抱えきれない心は拒絶し、髪を掻き乱す。
気持ちを吐き出すように発していた言葉は、やがて息を吐き出すだけとなり、酸素を無くした肺が苦しみを訴え、咳き込んだかと思うと、
「ヒューー、ヒューー」
と苦しげな音を鳴らすと彼女は意識を失った。
「ーーーお嬢様!」
シルバーは倒れ込む主人を慌てて抱きとめる。
グッタリとしたゴールドに、シルバーは何度も呼びかけるが反応はなく。脱力した彼女の身体を支えきることができず、ゆっくりと床へ誘われていく。
「シルバー、いまの叫び声は!」
異常事態に気づいたカッパーが駆け寄り、状況を察するとシルバーに代わりお嬢様の身体を支えつつ床に寝かせ、呼吸や心拍といった状態を確認する。
名前を何度も叫ぶ従者の声が沈んでいく意識のなかで聞こえていたが、ゴールドは遠くの出来事のように感じつつ闇に溶け込んでいく。
「………悠」
自分が求める相手の名と涙をポロリとこぼして。




