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ロリユーカイ(prototype)  作者: 冬時宇井好
28/31

004-4 そして悠は姿を消した


カッパーは上階にある共用エリアの本棚を前に書籍を読んでいた晩乃悠クレノハルを見つけると、読んでいるモノを確認しつつ声を掛けた。


「それはお嬢様が好きな本で、まえに一緒に見ていたアニメの日本のラノベっすね」


「そうだね」


「おもろいっすか?」


「まぁ、そこそこ売れた作品みたいだし面白いんじゃない………俺には判断できないけど」


短い付き合いだが、悠らしくない言葉に首を傾げつつ、本題ではなかったので「そおっすか!」と軽くながす。


「それはそうと、さっきはありがとうございましたっすね」



「別に、お礼を言われるようなことはしていないよ。物音が気になって行ってみたら、カッパー達が話をしていて、ながれで思ったこと話しただけだし」


そうは言うが、エレベーターホールから部屋への遮音はしっかりしているので、エレベーターホールでの会話が室内に聞こえてくることなんて殆どない。


「ふふふ」


だから、あんなにタイミングよく顔を出した悠はノーレッジ様の様子のおかしさに気づき、様子を伺っていたのでないかとカッパーは勝手に思うことにした。


本人は認める気もなさそうだし。


「なに、笑って?」


「いえいえ。まぁ、助かったことは事実なんでお礼を言っとくっすね」


「はいはい」


と、やれやれといった感じで答える悠に、カッパーは真面目な顔をして本題を告げる。


「それで勝手なお願いなんすけど、ブレシード様の件で私やシルバーを助けてくれないっすか」


その言葉に、悠は書籍からカッパーを見る。


「いや、巻き込んだ側として失礼なのは重々承知なんすけど、私では対処できないし、いくら優秀とはいえシルバーにも荷が重いと思うんすよね。


 だから、ノーレッジ様にバレたときも対応できた悠の力を貸してほしいんすよ!」


吹き抜けからお嬢様達に聞こえないように声の大きさには気をつけつつ、悠に頭を下げた。


けれど、悠からの反応は悪い。


それどころか、頭を下げるカッパーの行動に対して溜め息を吐き出す。


まさか、そんな反応をされるとは思っていなかったカッパーはおそるおそる顔をあげる。


そこには、どうしたものか?というような顔をした悠が、こちらを見つめていた。


「先程の件、ゴールドに言わないのは何故?」


「ーーーーー⁉︎」


「本来なら真っ先にゴールドに伝える内容に思えるけど、君達は報告してないよね」


お嬢様達に伝わらないように声量は抑えているが、その声は普段の悠と雰囲気が違い、仕事を進める時のノーレッジ様やーーーブレシード様を前にした時のような緊張を感じさせる。


「そ、それは……」


普段とのギャップに萎縮してしまっていると、


「あぁ、ごめんね。冷たい言い方になったかもしれないけど別に責めてるわけじゃないよ」


と悠は口にして、その後にボソボソと「また悪い癖が」と呟くと、柔らかな表情に顔を戻した。


「ただ、色々と事情を教えて欲しいのと、君達が希望している成果が知りたいだけなんだよ。


 事情もわからない。要望もわからない。


 それでは俺も思うように動けないしね……」


困ったように笑う、悠。


彼の言う通りだ。と、カッパーは思う。


こちらが抱えている問題点も伝えず、こちらが求めている要望も伝えず、ただ良い感じに助けてくれ!なんて酷いクライアントでしかない。


そんな任務ーーー私だったら断っている。


悠は、なにもわからない状況の中で良く協力してくれている方で、不義理を働いているのは間違いなく私達だ。


それを理解しつつ、まだ事情を語ろとしない私は酷い奴なんだろう。


「例えばだけどーーー」


沈黙する私に助け舟を出すように悠は口を開く。


「あの部屋は使用していないみたいだけど、用意してあるってことは………そういうことであるという認識でいいのかな?」


そう訊いてきた彼が指差すのは、お嬢様のプライベートエリアとは吹き抜けを挟んで反対側にある部屋で、お嬢様のエリアと同じように寝室と多目的エリアが設けられている空間。


普段からシルバーがしっかりとメンテナンスしているので綺麗に整っているが、使用された気配のないエリア。


そんなエリアに対しての質問に、カッパーは一瞬何を言っているのか理解できなかったが、悠の言いたいことが分かると驚いた顔で彼を見る。


「なるほどね」


私の表情が答えだというように悠は頷く。


そして、私の頭を優しく撫でた。


「不安がらないでも、俺は君達の味方でいるから安心してよ」


悠は返答を待たず、持っていたラノベを本棚に戻すと、別の1冊を抜き取り、お嬢様達がいる下の階へと歩いて行く。


撫でられた髪を触り、少し照れくさい気持ちになりつつ、私は彼の背中を眺める。


普段感じることのない感情にモヤモヤしつつ、彼の言葉に安堵していた。


迷惑ばかりかけてしまっているが……


もう少しだけ、彼の背中に寄り掛からせてもらおうと思いながら。



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