004-1 そして悠は姿を消した
ノーレッジこと、パーク・リー・ノーレッジというゴールドの顧問弁護士に晩乃悠という存在がバレてから数日。
ゴールドのフラストレーションは溜まっていた。
キュア・リトルベアだとゴールドと悠の親密な距離感に困った顔をして軽く注意する程度だが、ノーレッジは違う。
「ゴールド、悠と密着しすぎよ!」
「ゴールド、節度を持ちなさい!」
「ゴールド、キチンとしなさい!」
「ゴールド、仕事こなしなさい!」
ゴールド、ゴールド、ゴールドとノーレッジはことあるごとに小言を口にして悠からゴールドを引き離そうとする。
「あんたは、私のママかぁぁぁ!」
「どう、どう、どう」
発狂する私を悠は嗜めるが、叫びたくなる気持ちを抑えることができなかった。
ノーレッジが色々と気に掛けてくれているのもわかるが、彼女の監視もあって普段なら私の我儘を甘んじて受け入れる悠も、ノーレッジの視線を気にして遠ざける。
それだけではなく、ここ数日で私以外のメンバーとも距離が縮まっている雰囲気を感じ、自分だけが蚊帳の外のような気がしていた。
そのせいで溜まっていく苛立ち。
「悠はどうして私に手を出さないの!」
「なにいってんのかな、君は」
正当な主張のはずなのに悠にデコピンをされる。
パチン!と音を響かせたおでこを押さえながら、ゴールドは悠を睨む。
「でも、私以外には手を出してるじゃない」
「誤解をまねくような言い方やめて!」
遺憾そうな顔をする悠にゴールドは畳みかける。
「カッパーの胸ボタンが飛んだとき、服のなかに手を突っ込んでたじゃない!」
「ゴールドが片付けずに散らかしていたコントローラー踏んづけた結果ね」
「でも、なかなか手を引き抜かなかったよね」
「……………」
「それに、シルバーのズボン脱がしたじゃん!」
「誤解ある言い方やめて!たまたまベルトが壊れてズボンが落ちただけだから!」
「でも、暫く凝視してたよね」
「……………」
「ノーレッジには少女漫画のお手本のような壁ドンをしてもいたし」
「そのあと腹パンされたけどね」
「キスしそうなくらい顔を近づけてさ!」
「それに関しては、突然ゴールドが背中に飛びついてきたからでしょう」
ジト目の悠から、ゴールドは顔を逸らす。
そのまま、ブスッとしながら口にする。
「なんか私より皆と仲良くして気に入らない」
その言葉に、悠は呆れた表情をかえす。
「その目は節穴かな? どちらかといえば諸々の出来事のせいで距離をとられているよ」
思い出したように、悠が溜め息をこぼした。
「ノーレッジの部下であるキュアちゃんなんて、他の人とのハプニング見ちゃっているから俺がいたら大きく迂回されるくらい避けられてるしね」
「でも、彼女のスカートの中身も見たよね」
「それは、迂回した彼女が転けたから………見たくて見たわけじゃ」
「ノーレッジいわく視線逸らさなかったって」
「……………」
「あまり私以外ーーーノーレッジやキュアを相手にラッキースケベしていると訴えられるよ。彼女は弁護士だし」
「いや、訴えるって。そもそも事故でーー」
今度はこちらがジト目を向ける。
「女性に迫って」 「ぐっ!」
「パンツを見て」 「ぐっ!」
「胸揉んでも?」 「がはっ!」
悠は致命的なダメージにソファに沈み込む。
その様子を眺めながらポツリと呟いた。
「本当、Jカル主人公め」
「ーーーなんかいった?」
「ううん、別になんでもないよ」
そんな言葉を返したけれど、悠が自分以外の彼女達と仲良くする姿を思い出し、ゴールドは胸がモヤモヤしてしまう。
「あっ、ちょっと!」
だからゴールドは悠の体に被さり、逃がさないように腰に腕をまわして抱きしめる。
その行動に驚く悠だったが、なにかを察したように空いている手で頭を撫でてくれた。
すこし雑なのに、心地よい感触。
やっぱり彼と一緒にいると心が落ち着いて、心が満たされていく。
ーーーーーだから、
離したくなくて。 逃したくなくて。
「悠、ごめんね」
彼に聞こえないように呟き、瞳を閉じる。




