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ロリユーカイ(prototype)  作者: 冬時宇井好
20/31

003-7 彼女達


どうしてこんなことに?


「あの〜、ゴールド」


「……………なに?」


晩乃悠クレノハルの言いたいことが理解出来ているのだろう、不服そうな顔でゴールドが聞き返す。


普通なら悠は何も言わない。


だが、ゴールドの声は耳元で響き、顔を向ければ彼女の顔が間近に迫るーーー抱っこを強制されている状況では文句も言いたくなる。


ただでさえ絵画から飛び出してきたような整った顔をしているのに、キスできそうな距離で、大きく綺麗な瞳で見つめられては落ち着かない。


朝、寝落ちした図書エリアのソファで目を覚ますと、なぜかゴールドも一緒に寝ていた。


そのことに驚きはしたが、それはいい。


「そろそろ降りない?」


「や〜だ!」


だが、起床してから現在まで理由もわからず、ゴールドが離れてくれなくて困る。


なんども降りるようにお願いするも、全部却下。


仕方なく、金髪幼女を抱っこしたままダイニングまで移動してきた。


「お嬢様……何をなさっているのですか?」


「なんで……お嬢様おんぶしてるんすか?」


そんな悠達を見て、朝食の準備をしていた執事然とした服に身を包んだシルバーが呆れたようすで聞いてくる。


そして、タイミングよく朝の準備を終えてきたカッパーも現れ、純粋な疑問をぶつけてきた。


「いや、離れてくれなくて」


そんな2人には、そう答えることしか出来ず。


「お嬢様、もう朝食ですから降りて下さい」


「いやだ!」


「そのままだと、ご飯食べられないっすよ」


「い〜や〜だ〜!」


2人が説得してくれようとするが、金髪幼女の決意はかたいようで強く抱きしめられる。


そこ首だから、あまり強く絞めないで!


ーーーなにがあったの?


と、2人が視線だけで訊ねてくるが、コッチが教えてほしい。


原因不明だからこそ、この状況なのだ。


「ゴールド。せめて着替えさせて」


「いいじゃん、そのままで」


「ゴールドも着替えられないでしょう」


「家から出ないから問題ないもん!」


「お嬢様、お仕事どうするんですか?」


「いいの!このままでいいの!」


そう言い放つと、ゴールドは拗ね、悠の肩に顔を埋める。


その姿に、悠とシルバーとカッパーの3人は互いに見つめ合い、従者組2人は肩をすくめた。


(自分に子供がいたら、こんな感じなのかな?)


こんなこと考えてるなんて知られたらゴールドに怒られそうだな………なんて思いつつ、状況が改善しないので仕方なく彼女を抱っこしたまま席につく。


結局、食後もゴールドは離れてくれなかった。


朝食も悠の膝のうえで食べ、食後も席を立つ悠に抱きつかれたまま移動。


「悠、テレビ見たい」


ゴールドの指示に従い、リビングのソファに座り映っていたニュースを見る。


英語なので内容不明だが、画面的に株価や経済的なニュースが流れ、なかなか芸能エンタメや一般的な事件などのニュースが流れないところを見るに専門チャンネルなのかもしれない。


そんな画面をゴールドは真剣に見ていたかと思うと、気になる内容があったのか画面をネットに切り替え、詳しく情報を探す。


情報を精査する表情に、彼女の意外な一面を見た気がするが……抱っこされている状況では台無しである。


「シルバー、端末をーー」


「こちらで宜しいでしょうか、お嬢様?」


「ん、ありがとう」


ゴールドの言葉が終わる前に、シルバーから端末を差し出してきたので “ ギョッ ” としたが、二人の間では普通らしく受け取った幼女は端末を起動すると証券会社らしきサイトを開いた。


ーーーサスシル。


瀟洒なメイド……もとい瀟洒な執事は主人の要望に対する先回りが凄い。


ダイニングで、まだコーヒータイムを堪能しているカッパーと大違いだ。


「お嬢様。そろそろハル様を解放されてはいかがですか?業務対応も御座いますし」


「いや!今日も自宅ココで対応するから必要な書類関係を後で持ってきて」


「……承知しました」


納得してなさそうだが、主人の意思が固そうなので諦め、頭を下げる。


実害のある悠としては、すんなり引き下がらないでほしい。


助けて!とシルバーに訴えるも、帰ってきたのはクビを横に振る姿と、その後の『頑張って下さい』と言いたげな瞳だけだった。


そんな現状に、悠は解決策はないかと考えているとーー妙案を思いついた。


「ねぇ、ゴールド」


「なに?」


作業が終わったのか、ゴールドが端末を置いてテレビのニュースへと目を戻したタイミングで悠は声を掛ける。


それに顔を向けることなく答えた。


「いいかげん、一度離れてくれないかな?」


「いや!」


「身嗜み整えるだけだからね!」


「やだ!」


「ゴールドも身嗜み整えた方がいいでしょう?」


「ふん!」


子供のイヤイヤ期のように拒否され、少々イラッとしたので思いついた案を実行することにする。


「どいてくれないと酷いことしちゃうよ〜」


「やればいいじゃん!」


その返答を聞いた瞬間、



ーーーコショ、コショ、コショ、コショ。



ゴールドの脇から脇腹にかけて両手でくすぐった。


擽られたゴールドは笑い出し、身を捩る。


思惑通り、ゴールドは擽りが弱いようだ。


「悠、やめて!」


笑い声を上げ、身じろぎしながら金髪幼女が言ってくるが当然やめない。


「くすぐられるのが嫌なら、一旦離れるんだ」


ニヤニヤとしながら告げる姿に、お嬢様の笑い声に様子を見ていたシルバーとカッパーが呆れていたが、構わずに続けた。


にやけて笑う悠が気に入らなかったのか、ゴールドは笑い声を我慢する。そして離れてやるものかと悠の服を握り締めた。


「ほらほら、もっとくすぐっちゃうよ〜」


「ん、はぁ、どか……ない」


「なら、しかたない!」



ーーーコショ、コショ、コショ、コショ。



「ん、はぁ、はぁ、んっ!」


「ほら、降参したら?」


そう聞いてみたが、彼女は降参するつもりがなく、声をころし、息を荒くしながら、堪える体をビクッビクッと揺らしていた。


続く擽りに耐えきれず、ゴールドが潤んだ瞳で自分を見る。


( ―――あ、やべ )


潤む瞳に、ドキリと跳ね上がる心臓。


ゴールドの涙目で溶けた表情が、戯れだった行いがいやらしい雰囲気を醸し出し、悠は慌てて手をとめた。


擽っていた時間は僅かだったが、ゴールドは終わった攻めにグッタリとし、悠の胸に顔を沈め息を整える。


その光景はまるで、幼気いたいけな幼女にーーー


「よからぬことした後みたいっすよ、悠」


「………変態!」


やめて! そんな目でみないで!


悠自身も彼女の表情を見て、そう思ったからシルバーは蔑む目を向けないで下さい。


そんな視線から流れるように、空気をかえようと、グッタリしているゴールドに声を掛けた。


「ゴールド、ごめん。ヤリすぎたね」


「……………」


「あの、ゴールドさん。大丈夫?」


反応のない彼女が心配になり、顔を覗き込もうとしたとき、ゴールドが顔を上げ “キッ!“ と悠を睨みつけてくる。


『悠のバカァ!!!!!!』


そして、ゴールドは叫び声とともに悠の顎を的確に捉えた拳を放った。


「ーーーがっ!」


その拳は、綺麗に悠の意識を刈り取るのだった。


「あ、あの、お嬢様」


「き、綺麗に決まったっすね」


気を失った悠に戸惑う、二人。


そんな二人にゴールド “ キッ !” と睨みような視線を向けて言い放つ。


「離れないから!」


「「……………」」


「離れないから!」


「「あっ、はい」」



     ★



ゴールドの拳が顎を捉えた所までは覚えている。


結局ゴールドを引き剥がすことは出来なかったようで、胸に重さを感じ、顔を向けると寝息をたてて眠る彼女の姿があった。


目元には擽ったさいの涙だろうか目尻がうっすらと濡れ、小さな手は悠を逃さないように服を掴んでいる。


「ゴールド、こんなとこで寝ると風邪ひくよ」


「ん、ん〜」


ちょっと意地悪しすぎたかもしれない。


先程のやり取りで疲れてしまったのか、ゴールドの眠りは深そうだ。


ごめんね。と、彼女の頭を撫でる。


シルバーとカッパーは近くにいないようだ。


二人が近くにいればブランケットなんかをお願いするのだが、


(やれやれ、仕方ない)


気持ちよさそうに眠るゴールドを起こさないように、抱っこしたまま立ち上がった。


動きを感じとった彼女が手を首に回してくる。


「ん〜〜?」


「自分の部屋のベッドで寝ようねぇ〜」


起きたわけではない彼女に、悠は落ちないように体勢を整えると、彼女の自室へ連れていこうと歩き出した。


歩く振動で起こしてしまわないように揺れに気をつけながら歩く。


抱っこする彼女の体温は温かく、心地よい。


階段を使うか?と、考えたが起きそうだったのでエレベーターを利用することにする。


ここに来て初めて使用するエレベーター。


幼女を抱っこしていたのでボタンは押しにくかったがーーーなんとか呼べた。


到着を知らせる音が鳴り、扉が開く。


「……………」


「……………」


無人だと思っていたエレベーター。


そこには二人。見知らぬ女性が乗っていた。








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