001-1 こうして私は誘拐されました!
「いろいろ落ち着いたので、旅行に行こうかと」
そう告げるとデバイスの画面向こうにいる女性二人が苦笑しながら頷いた。
彼女達は自分こと、晩乃悠が立ち上げようとしている事業の協力者であり、宝くじが複数回当選してから訪れた不運な問題に対して助力してくれた仲間である。
最近まで悠に降りかかってきた災難を知っているため、心から賛成してくれた。
「どこに行く予定なんですか?」
そう聞いてきたのは、ボブの黒髪ストレートで小柄ながらも眼鏡をかけた姿は出来るキャリアウーマンを思わせる町家聖歌で、多彩な彼女には事務に、経理に、外注するほどでもないデザインなんかを頼んだりしている。
「米国かなぁ、海外行ったことないので」
「・・・・・・日数は?」
聖歌の隣に並んで映る女性も旅行の話題が気になったのか話に加わってきた。
「1から2週間くらいの予定・・・・・・かな」
まぁ、プログラマーである彼女ーーーボブウェーブの髪を紫色に染めた少々パンクっぽい 柚ノ木縁が気にしているのは・・・・・・。
「勿論、その間は連休に追加して休んでいただいて大丈夫ですよ。最近、忙しかったですし」
「やったーーー‼︎」
素直に喜びを表現する、聖歌さん。
逆に紫は休みなんて興味なさそうに「ふ〜ん」なんて口にしながら、テーブルに肘を載せ、手の平にアゴをのせる。
ただ、画面越しながらも少し口角が上がっている感じはするので嬉しいは、嬉しいのだろう。
「なんだったら、一緒に行く?」
「ーーーい⁉︎ 行かない」
冗談半分ーー行くといえば連れて行くつもりーーで聞いたが、一瞬驚かせただけで断られた。
「聖歌さんは?」
「魅力的ですが、私は私で休みを楽しみます」
ーーーーーですよね〜。
毎日のように顔をあわせているのに、休みの日も一緒だと休暇にならないですもんね。
会社員時代に社員旅行に行ったことがあるが、楽しさよりも煩わしくてしかたなかったもんな。と思い出しつつ苦笑する。
画面向こうの聖歌さんが紫に "何か" 言いたげな視線を向けていたのが気になったが、
「いつから行くか決まったら教えて下さい」
「了解で〜す」
といった感じでミーティングを終え、旅行代理店に行って、旅行プランを検討しようかなと考えていたのが数日前。