003-3 彼女達
「はい、あ〜〜ん」
そういって悠はドリンクのストローをゴールドの口に運ぶ。
それを彼女はゲームから目を離すことなく咥え、コントローラー操作をとめることなく飲む。
画面に映し出されるのはFPSゲームで、ゴールドが操作するキャラクターがスキルを使いフィールドを駆け、銃弾を敵へばら撒く。
金髪幼女の操作で、次々と敵が沈んでいく。
悠はFPSが苦手で、あまり遊んだりしない。どちらかというとサンドボックス系やRPGゲームのような自分のペースで操作できるゲームのほうが好きだ。
ゴールドは上手いのだろう、フィールド移動や視線の移動などが洗練されている。こっちは、その操作画面を見ているだけで目がチカチカする。
すこしばかり画面酔いしそうだ。
現在、ゴールドを挟むように悠とカッパーが、多目的エリアーーという名の趣味部屋ーーのソファに座り、彼女のゲームを眺めていた。
そんな3人の前には、テーブルに置かれた料理と飲み物が並ぶ。
料理はシルバーが用意してくれていた昼食で、カッパーがここまで運んできてくれた。
並ぶ料理はサンドイッチやカップサラダなどといった、ゲームしながらつまむには丁度よさげな献立で、
「悠、ア〜」
といった感じでゴールドが口をあけてせがむので、あいまあいまに料理を口に運ぶ。
最初、食べさせて!というゴールドにカッパーへと視線を向けると、『まかせるっす!』といった様子で親指をたてられた。
なので、仕方なくゴールドの口への給仕に励む。
その合間に自分も食べるが、ただのサンドイッチのはずなのに美味しく、ますますシルバーの評価が爆上がりする。
そういえば、一緒に置かれたドリンクのペットボトルが日本にはない大きさで驚いた。そして、改めてココが米国なんだと認識する。
『よし、チャンピオン!」
最後の1人になったことでゴールドの優勝が決まり、彼女はガッツポーズをして喜ぶ。
「みて、みて、悠ーーーチャンピオン!」
はしゃぐ姿が可愛いらしく、悠とカッパーの2人で拍手をして勝利を祝う。
それに満足したのか「ふふん♪」と上機嫌になり、次のゲームマッチ部屋に入っていった。
マッチングはすぐに決まり、次のゲームへ。
ゲーム配信などで慣れているので画面を眺めているだけでも楽しめるが……と、あることに気づいて悠は話題を振ることにする。
「そういえば、仕事ためてたっていってた割には戻ってくるの早かったけど、ちゃんと全部終わらせてきたの?」
カッパーも気づいたのかノッてきた。
「お嬢様は仕事が終わってないのにゲームに興じたりしないっすよ。そうですよね!」
2人の言葉に、操作ミスで答える金髪幼女。
「そ、そうだよ〜。終わらせてきたよ〜」
あきらかにゲームパフォーマンスが落ち、キャラに前試合のようなキレがなくなる。
「だよね。まさかシルバーに嘘ついてココでゲームなんてしないよね、ゴールドは」
「そうっすよ。シルバーに仕事を押しつけてゲームにふける上司じゃないっすよ、お嬢様は」
あ、キャラが完全に止まった。
かと思うと金髪幼女が怒った。
「もお!せっかく楽しんでいのに、なんで水を差すようなこと言うの!」
そういって自分達を見てくるので、2人は親切にゴールドの見えていない後ろを指差してあげる。
「お嬢様、コチラにいらしたんですね」
その声に “はっ!” としたゴールドは、まるで油を注し忘れてしまったブリキ人形のように、ギギギと後ろを振り返った。
振り返ったさきにいる、シルバー。
ゴールドと視線があった彼女はニッコリと笑っているが、その奥底にある怒りの感情を部外者の自分も感じ、肌がピリピリする。
「バカな! 早すぎる!」
「ノーレッジ様のところで打ち合わせをすると言われていましたが、嫌な予感がして確認しに行ったところ……いらっしゃらなかったので、コチラかと思い、馳せ参じました」
「いや〜、ちょっとだけ。ちょっとだけ休憩してただけだから」
「そうですかーーーでは」
逃げようとするゴールドを、自分とカッパーで掴み逃げられないように捕縛。
しっかりと続くシルバーの言葉を聞いてもらう。
「今度こそ、仕事をしてもらいますね!」
助けを求めるように自分達へ視線を向けるが、自分もカッパーも『諦めろ』と首を横に振ることしかできなかった。




