002-オマケ Kidnapping life started
「君は、なぜ俺を誘拐したの?」
それに答えたくなくて、寝たふりをしたゴールド。
ふざけて密着度合いを強めると、悠が体を固くするので面白かったが、緊張しすぎて疲れたのか少しすると悠から寝息が聞こえてきた。
起こさないように気をつけつつ、目を開け、眠った悠を見る。
彼が目の前に現れた時は嬉しかったし、本当に夢を見ているようだった。
それと同時に怖くもあった。
誘拐をして感情のまま怒られるかもと思ったし、嫌われて拒絶さらてしまうのではないかとも思った。
だから、どこかスンナリと受け入れた悠に拍子抜けしつつもーーー安心した。
この誘拐は、私のエゴもある。
けれど彼の反応に、誘拐は間違ってもいなかったんだとも思った。
彼の存在を確認するように、頬をつつく。
「んん?」
一瞬、起こしたか?と思ったが杞憂だった。
彼が隣にいる。それだけで安心感があった。
もっと彼を感じたくて、さらに密着する。
そして、これから一緒に過ごせる日々に思いを馳せながら眠りについた。
★
シルバーは、悠の荷物を前に不安になる。
自室の机に並べているのは、彼の貴重品である財布に端末。着替えなんかは彼がお風呂に入っている内にお嬢様のクローゼットに運んでいた。
誘拐については、問題なく完遂。
だが、シルバーにとっては問題なく完遂したことが……してしまったことが不安だった。
こちらの勝手な事情で誘拐したというのに、彼は冷静に受け入れている。
普通の人なら感情のまま怒りをぶつけてきたり、揉めたり、慌てたり、怯えたりするはずなのに、彼は冷静だった。
それどころか誘拐されたという事実を受け入れ、そこから更にコチラの許容値をうかがうような素ぶりで会話をする。
そんな取り乱さない彼が………正直、怖い。
「大丈夫、よね」
まだ誘拐生活は1日目。
お嬢様が何故、彼を誘拐したかは理解している。協力することを決めたのも自分自身で考えてから決断したことだ。
けれど、彼の様子を見ていると心配になる。
(なにかあったら、お嬢様だけは全力で守ろう)
彼の端末をタップして画面を表示させるが、着信やメッセージなんかは届いてない。
当初の目的では処分する予定だったが、少し悩み、まだ残しておくことにした。
すぐに音信不通になってしまうと怪しまれるかもしれない。
そんな詭弁で不安を紛らわせるように、不安を締め出すように、財布と端末を机の引き出しに仕舞った。
「はぁーーー」
そして、これから彼と過ごす日々に不安を募らせながら、深い溜め息を吐き出すのだった。




