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ロリユーカイ(prototype)  作者: 冬時宇井好
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プロローグ 誘拐


ーーー 残念だったな、俺で!




人生、運が良ければ悪い日もある。

普段は気にしないが、今日は信じたくなった。

目隠しされ、椅子に拘束されている状況では。


ほんのすこし前、宝くじに高額当選したかのような幸運に複数恵まれた。


そのおかげで仕事を辞めることができ、己のやりたい事に対する時間を確保出来た。


・・・・・・と、思った。


幸運後すぐは問題なかったが、時間が経つにつれメッキが剥がれるように不運が舞い込んだ。


まぁ、それを現在語っても仕方ないので割愛するが、幸運と不運はバランスを取ろうとするなんていうアノマリーを信じたくなるには充分だった。


だから、気晴らしに旅行でも! と思ったら。


手足を縛られて、目隠しをされ、椅子に縛られ。

気分転換どころか、更なるトラブルに巻き込まれたようで絶望を叩きつけられる。


視覚が塞がれているので状況はわからないが、風や日差しを感じないことから室内なのだろう。座らされている椅子には高級感のある反発を感じ、その事実が恐怖を倍増させた。


拉致・・・・・・された?


気を失った時のことを思い出し、そう考える。


あの瞬間、死を覚悟していただけに生きていることには安堵するが、この先の出来事を想像して不安が襲いかかってきた。


それでも正気を失わず、冷静な部分を残している自身の思考に、幸運後の不運な出来事に対応してきた過去に感謝する。



すこしだけ冷静さを取り戻してきた。


だから現状を解決しようと手足を動かしてみるが縛る紐は解けず、目隠しを外してみようとするが動かない。それなら倒れ込み紐を切れるモノを探してみたり、床に顔を擦り付け目隠しを外してみようとも考えるが、倒れ込む床の状況が不明で怪我をするのは嫌なので保留する。


仕方なく人の気配を探るとーーー壁越しだろうか? 人が近づく気配を感じ、その後すぐに扉が開く音がして、複数人が会話しながら入ってきた。


一瞬身体が強張るが、取り乱さないように注意しながら寝たふりをする。


ーーーーー と、


自分の姿を見たのか興奮した誰かの声が響き、感情を発露させるように床を鳴らす。


言語が英語のため内容はわからないが、別の誰かが諭すように床を鳴らす人物へ話すと、はしゃいでいた人物が「 sorry、sorry 」と自分でも理解出来る言葉で謝った。


その後、二人とは別の一人も加わり話し出す。


内容は理解できないが、話題の中心が自分であろうことは推測できた。


まぁ、英語が理解できていないので間違っている可能性もあるが、こんな状況で自分とは関係ないことで盛り上がっていたらーーー泣ける。


それは杞憂だったようで、ひととおり会話したら三人のうちの誰かが近づき、目隠しを外す。


突然の明るさに目を細めたが、視界に映る金色の髪をした幼女の姿に驚き目を見開く。


純金を思わせる髪に、大きな瞳。


自分の顔を両手で包み、笑いながらはしゃぐ姿は子供そのものだったが、絵画から出てきたような美少女の姿に見惚れ、呼吸を一瞬忘れた。


そんな自分に、彼女は告げる。


「 My name is GOLD 」


彼女の名前らしいが、偽名だろう。

疑っていることを気にせず、彼女は話しを続けた。


「貴方は、私が誘拐したわ!」


そう日本語で言った彼女は近かった顔を更に近づけ、


「だから貴方は私の言うことを聞かないといけないし、ここで一緒に過ごさないといけない!」


と無邪気な笑顔のまま要求する。


だが続きを語る前に、彼女は表情を怪しげで妖艶な笑みへと変えると頬に触れていた左手を離し、男の大事な部分を握りしめた。


「逃げたりしないとは思うけど、もし逃げようなんて考えたらーーー貴方のアイスキャンデーを握り潰しちゃうかもよ♪ 」


下半身に走った痛みに顔を顰めてしまったのは、男としては仕方ないだろう。悲鳴をあげなかっただけ誉めてほしいくらいである。


その表情に満足したのか、彼女は無邪気な表情へと戻すと、これからを楽しみにするかのように見つめていた。


その視線を感じながら思う。


どうやら自分はーーーー目の前の金髪幼女に誘拐されてしまったらしい。


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