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原田が金田の携帯番号から突き止めたIPアドレスから、金田が出入りしている切断マニアのサイトを発見。
夏目は原田と一緒に吐きそうになりながら、コメントや個人的なやり取りを辿った所、AIMIと名乗る白川愛美らしき女を見つけ出した。
予想通り、白川は、本物の男を切ってくっつけて理想の男の人形を作りたいと金田に持ち掛けていた。
鋏で同級生の手を挟んだ快感が忘れられないとも言い、金田の関心を煽り、切る現場から全部見たいと言っている。
実際、金田の地下室から発見された被害者の殺害の様子を映したDVDは、固定カメラではなく、何者かが撮影していたと思われるアングルだった。
今度は幸田と吐きそうになりながら、丹念にDVDを何度も見返した夏目は、青龍刀に映る撮影者の画像を発見。
IPアドレスから買い物履歴等を洗い出し、白川愛美の住所を突き止め、踏み込んだ夏目が見た白川愛美の顔は、その撮影者だった。
訳の分からない甲高い叫び声を上げながら連行されて行く白川を横目で見た後、太宰と一緒に白川愛美のアパートを見た夏目は、思わず目を閉じてしまった。
白川愛美のベットには、おぞましい物が寝ていた。
第一被害者の頭部にくっ付けられた別人の身体。
この身体の持ち主は、金田の地下室から内臓と血液だけが発見されている行方不明者の物だろう。
腕の切られた第二被害者にくっ付けられた矢張り別人の両腕。
2体共、金田の適当な防腐処理と剥製化のお陰で、腐っては居ないようだが、肌の色は変色し、ミイラの様に皺々になっている。
人の尊厳など、完全に無視したあまりに惨い状態にされた被害者達の姿だった。
「酷すぎるな…。」
夏目にそう声を掛けた太宰も、目を伏せていた。
「人をこんな状態にして、人形遊び…。人間を…何だと思ってんだ!。」
夏目がここまで感情を表に出して怒るのは、初めての事だった。
それだけ、白川も金田も人の命も何もかも、軽んじているからだ。
子どもの遊びの延長の様に人を平然と殺している。
鬼畜以下の欲の為だけに。
「本当にな…。死んだ方がマシって位の取調べをしてやろう…。そして、絶対極刑になる様に、完璧な捜査をしよう…。
それが、仏さんへのせめてもの供養だ…。」
「はい…。」
だから夏目は怒っていた。
白川愛美の取調べに入る前から顔中に青筋が立っている。
しかも、ドスの効いたダミ声。
普通に話していたって、怒っているとか、機嫌が悪いとか言われてしまう男が全身で怒っているのだから、妄想癖、虚言癖の白川愛美でも、嘘も出ない程怯えて震え上がり、取調べはある意味、順調に進んだ。
「ぜっ…全部、金田がやったんです!。」
と言えば、
「本当だろうな?。嘘だったら、てめえ…。」
と言っただけで、ベラベラと聞いていない事まで喋る。
そして分かったのは、予想通りと言えばそれまでだが、夜から朝方に掛けて、夜間清掃の仕事をしている白川が、目星をつけたターゲットをストーキングし、名前、住所から生活形態等、全てを調べる。
実際に、被害者4名と北条貴也の盗撮映像も多数、携帯から発見されている。
そして金田に狙いやすい時間と場所を指示し、金田が地下室に運んだら、地下室へ行き、白川が指示した部位を金田が切り落とし、殺害する様子を録画し、金田の分をDVDに落とし、自分の分は携帯に入れる。
剥製処理が済んだ人形化した遺体を運んで貰い、またターゲットを探すと言った具合だ。
「北条貴也君はどこを切り落とす予定だったんだ。」
「ーあの子は、パーフェクトだから切らなくていいって言ったんです…。そしたら、金田がそれじゃつまらない、自分の楽しみが無いって言って…。」
「言って、なんだ。揉めたのか。」
「はい…。だから拉致も私がやるから、貴也君には手を出さないでって言ったから…。
あんな直ぐ捕まりそうな学校の前でなんかやったんだと思います…。」
つまり、金田は白川に先んじようと焦る余り、父と教師の前で拉致しようとするという、今までにない無謀な策に出たという事らしい。
白川も、金田も、余程北条貴也が欲しかったという事なのだろうが、夏目の腑は更に煮えくり返った。
「この変態の馬鹿女が…。
世の中んな甘く出来てねえんだよ。
てめえは良くて一生刑務所。
あそこは変態ってえのは、受刑者の中でも最低の扱いで、受刑者にも刑務官にも虐められるんだとよ。
周り全員に苛まれて、死ぬより辛い苦しみの中生きてろ。」
号泣し出す白川を一瞥し、立ち去り掛けた夏目は振り返ると、ニヤリと笑って言った。
「ああ、そうそう。てめえの親と爺さん婆さん、縁切るってよ。生き長らえても、誰も面会にも来てくれねえんだな。」
白川は真っ青になって固まると、震えながら机に突っ伏して泣き出した。
殆ど捨てられた様な状態だった様だが、人間ではない所業をしていても、絶縁されるというのは堪えるものらしい。
なんだか余計に腹立たしくなりながら、夏目は乱暴に扉を閉めて出て行った。
今度はそのまま、金田の取調べ室に入る。
今度は金田好みの優しげなイケメンに脅されるのではなく、整ってはいるが、鬼より怖そうな、体格のいい男が相手という事で、金田は身構えた。
連行して来た時は、夏目の圧にも屈せず、口を割らなかったが、既に好みの男性に罵倒された上、バレないと信じ込んでいた絶対的な自信も、粉々に砕かれた後だ。
夏目がドサっと不機嫌そうに座るだけで、ビクッとなっている。
「この女。」
夏目は結婚指輪の嵌まっている左手で白川の写真を持ち、金田の前にズイと出した。
「全部お前がやったとか言いやがったぞ。」
「う…嘘だ!。男の調べも、何処を切るとかも、全部アイツが!。」
「へ〜え。つまり、お前がぶった切って、殺したって事だな。」
「ーう…。」
夏目はここぞとばかりにデスクを両手で叩く。
「どうなんだ!。」
「ー僕が…。白川が調べた男を拉致して、切断し、殺しました…。人形にするところまでやりました…。
最初に拉致した2人の男は、1人は顔が駄目で、もう1人は腕だけ欲しいって言うので、腕を切った後は沢山切り刻んで…。」
「それを何処にやった。」
「地下室のない部分に埋めてあります…。」
別室のマジックミラーから聞いていた太宰は直ぐに捜査員を行かせる。
「なんで今回の2人は、目立つところに捨てた。」
「上手く切れたから、勿体無くて…。埋めちゃうのが…。誰かに見せて、怖がらせたかっ…。」
金田が途中から言葉が継げなくなったのは、夏目の、不動明王が発する様な怒りの炎を感じて、怯え切ったからだ。
それから、金田は全てを自供した。




