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満月の夜3  作者: 桐生初
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4人が大田区の現場に着いた時、ブルーシートの囲いに入った瞬間から、むせかえる様な血の臭いを感じた。


「凄いっすよ、課長…。滑らない様、気を付けて下さい…。」


顔色を失くした一課の捜査員が、太宰にそう言って、説明しながら案内してくれるが、その意味は直ぐに分かった。

開け放たれた玄関から既に血の海だ。

靴の上から履いたビニールでは尚更血で滑るだろう。


「全く同じかい?。」


捜査員に太宰が聞くと、コクッと頷いた。


「家族構成まで同じです。

父親、母親に、中学生の長男、小学生の女の子と…。」


現場の状況も、2年前の事件と殆ど変わらなかった。


先ず、応対に出て来たと思われる父親が玄関先で、正面から斧の様な物でパックリと頭を割られて仰向けに倒れている。


続けて、犯人はスニーカーで父親の肩を抑える様に踏み付けた状態で斧を抜いていると見られた。


この時に、大量の返り血を浴びていると思われ、二階に向かうスニーカーの足跡や、手すりにもべったりと血が着いている。


そのまま、迷う事なく、スニーカーの足跡は中学3年生の長男の部屋に向かっている。


長男は、後頭部から同じ斧状の凶器で頭を割られた状態で、机に突っ伏す様にして絶命していた。


ヘッドホンが側に転がり、そこから大音量の音楽が流れていた事から察するに、何が起きたか気付かない内に殺害されている様だ。


その後、犯人は矢張り迷う事なく風呂場に向かっている。


入浴していたと思われる、小学2年生の女児は、浴槽の中で絶命している。


丁度、柊木が女児を診ていた。


珍しくハートマークも出さず、苦虫を噛み潰した様な渋面で検死をしている。


彼は子どもの死体だけは、どんな状態であろうとも、嫌なのだそうだ。


「柊木…。どう…。」


「逃げる娘の髪の毛掴んで、後ろから右の首筋から斧で斬りつけてる。

恐らくだが、その前に別の人間の方を左側頭部から斧で思いっきり殴って気絶させてる。

ここからリビングまで引き摺られてる水の跡から察するに、この人物は母親だな。」


娘を庇おうと、両手で庇った無防備な母親を殴って気絶させてから、女児の殺しに取り掛かったのだろう。

これも、2年前の事件と全く同様の手口だ。


「ー母親の方は、やっぱり同じか…。」


「おう…。そのまんま、リビングに寝かせてあるぜ…。」


リビングの床には、全裸の母親が、血塗れになって仰向けに横たわっている。


他の3人よりも殊更血塗れなのは、傷が多数に渡るからだ。


犯人はここで凶器を斧からナイフに替えている。


胸や脚、太腿等に浅く刺しながらレイプし、最後に首を切り、絶命させていた。

柊木が全く同じだと言うのだから、恐らくは死後もレイプしている。


犯人の物と思われる衣服も脱ぎ捨てられて、そのままそこにある。


そして、この犯人の気味悪さは、更にこの後だ。


血の足跡はキッチンに向かっていて、手を洗った形跡もある。


ダイニングテーブルに食べ散らかした物は、今回も恐らく犯人の物だろう。


カレーを食べ切った皿。

アイスクリームのパッケージのゴミ。

スナック菓子の空き袋。

飲み掛けの1リットルパックのジュース。


それらが、雑然と残されている。


そして犯人は玄関に戻り、来客用のスリッパを手に風呂場に向かい、次女が浮かんでいる浴槽のある風呂場で血を洗い流している。


血の足跡を辿ると、来客用スリッパを履いて、夫婦の寝室に行き、クローゼットを物色し、恐らく、父親の服を着ている。

スリッパの足跡はそのまま玄関に続く。

開けっ放しの下駄箱には、靴一足分の不自然なスペースがある事から、恐らくは靴も拝借して立ち去っていると思われた。


実際、犯人の物らしき、返り血を浴び、そこら中を歩いたと思われる血染めのスニーカーはリビングにあるからだ。


詳しい検死や鑑識の結果は待たねばならないが、恐らく同一犯の犯行と思って間違いないだろう。


こうして、表面的な事を見ただけでも、全く同じな上、犯人が母親を切り刻みながらレイプした事や、犯行後に飲み食いをした事は公表されていない。


全てが2年前の事件と全く同じだった。


もっと早く着手出来て居れば防げたのではないかと、4人の誰もが思い、被害者に手を合わせた。


次回から毎日午後6時に掲載する予定です。

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