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第十話 初クエスト

お久しぶりです。

サボっていた訳ではありません。

ただ仕事が忙しくなったのと、剣盾ランクマッチに潜っていただけです。仕方ないのです。


今回は説明回になるので、ちょっとテンポ悪いかなと。

 ギルドの机で四人の男が座る。彼らの中には、青年と言うより、まだ少年というべき年齢も混じっていた。


「俺はアイル! こっちのノッポがヴァイスで、そこのチビがライな」


 周囲を紹介しているのが、俺に手を差し伸べてくれた栗毛の青年。先のチンピラに引けを取らない整った顔立ちで、大きな目と優しそうな表情から、爽やかさも感じる好青年だ。流石にあのチンピラと比べてはならんな。


「ヴァイスです」


 と、黒髪茶色ローブのメガネを掛けたやせ形の男。ちょっと気怠そうな目をしている。


「ライッス!」


 と、身体の小さな少年。俺と同じように真っ赤に燃える赤髪に、ギザギザした歯を持つ活発そうな少年だ。


「マザランだ」


 そう言って、一人一人と握手をする。

 握手でコミュニケーションが取れるのはこの世界でも同じようで安心した。


「かなり雑な紹介だったが、それでいいのか?」


 文句も言わずに受け入れていた二人。


「いつものことだし、ツッコムのも面倒くさいし」


「ま、そういうことッス」


「そういうこと!」


「そ、そうか」


 それでいいのか? と思える程細かいことを気にしない集団だが、それほど仲が良いということだろう。


「どうして俺をスカウトしてくれたんだ?」


 アイルに伺う。


「そりゃ、さっきの見てたら仲間に欲しくなるっしょ! アンタ、どうやったらそんなに強くなれんだ!?」


「そ、そんなこと言われてもな……」


 圧が、圧が強すぎる。前のめりになった彼の瞳はキラキラ輝く。こんな目で頼まれては断るに断れない。いや、人手が必要である以上、願ったり叶ったりではあるのだが……。


「俺は強くなんかないぞ」


 恐らく、レベルは彼らの方が高いだろう。魔物一匹狩ることにすら手こずるのだ。そもそも、俺は怪人化していない状態だと物凄く弱く、魔物を殺すことはできない。何故かは知らないが。

 だが、俺のそんな気持ちなど知らぬよう。


「強いうえに謙虚。素晴らしいです」


 メガネをクイッと上げ、震えるヴァイス。何故そうなる。


「魔物に苦戦するほどレベルが低いって話だ」


「おお! それだけ強いモンスターと戦ってきたってことッスね!」


「……やれやれ」


 頭痛を覚えて蟀谷を押さえた。



「で、さっそくパーティ登録してきたから、クエストに向かおうぜ!」


 アイルはサムズアップして歯を光らせる。なんとも仕事の早い男だ。


「そのクエストと言うのは……?」


 腕を組み、ニマニマするリーダー。かなり嬉しそうだ。余程いい依頼が取れたのだろう。


「聞いて驚け! Bランクのはぐれ魔物、『森の怪猪(フォレストボア)』さ!」


 そう言って、猪の絵が描かれた紙を広げた。どうやらこれが『森の怪猪』らしい。ただの猪にしか見えないが。

 だが、パーティメンバーの反応は違った。


「森の怪猪!? マジッスか!」


「四人だとこんなのも受けられるのですね!」


 彼らは文字通り跳ねていた。それほどまでに大きな依頼なのか。


「その、森の怪猪とやらは強いのか? Bランクとか言っていたし……」


「ふふん! 新米冒険者のマザラン君にはわからんだろう! ヴァイス!」


 振られたヴァイスはメガネをクイッと上げ、


「マザラン殿。魔物についてはどこまでご存知か?」


 と、こちらを覗う。


「あー、魔界に住んでいて、人を襲ったりする化け物ということだな。普通の動物より知性があるようにも感じたが」


 それを聞いて、「知性持ちってスゲー!」と小さく喜んでいるライとアイルを尻目に、ヴァイスは頷く。


「なるほど。では、まずはランクについてですね」


 魔物にはランク付けがされているらしく、下はDから上はAまでが基本的に一つのパーティで対処できる程度だそうだ。それ以上になるとS、SSと上がり、SSSは今まで出現記録はないらしい。そのSランク以上になると、複数のパーティで対処が必要になるとか。レベルに関してはランクが高い程上がる傾向ではあるが、厳密には比例していないらしい。


「そのBランクを受けてきたわけだが、大丈夫なのか?」


「それに関しては大丈夫でしょう。Bランクの中でも最下層に位置する魔物ですから。我々が受けられたことがその証拠です」


「ほう?」


 依頼は危険度に応じて人数制限がかかるが、パーティのランクによって受けられる依頼も変わるらしい。基本的にはCランクパーティで受けられる依頼はCランクの魔物討伐というように。


「で、このパーティのランクは?」


「Cです!」


 自信満々である。そのCランクは高いのだろうか。


「CなのにBの依頼を受けられるのか?」


「そうなんです!」


 一つ上のランクの依頼も場合によっては受けられるらしい。

 今回の様に。


「で、これを完了すれば晴れてBランクパーティってわけ!」


 リーダーはずっとハイテンションだ。不安になる。


「一つ上のランクを受ければパーティランクが上がるのか?」


「いえ、誰でも受けられるわけではありません。必要なレベルも設けられていますので」


 どうやら、条件も色々あるらしい。パーティメンバーの最も高いレベルが一定以上であることや、依頼をこなした数等々。一度に覚えきれなさそうだったので、話はここらで遮った。

話を聞くに、必ずしも無理のある相手ではないということだ。


「なら、今回の魔物は倒せそうだということだな」


「ええ、余裕でしょう!」


 どこからその自信が沸くのか心配だ。


「逆にマザランは心配し過ぎッス! 俺達もなんだかんだ言ってCランクパーティッスから!」


「そ、そうか……」


 かつての部下にも、よくわからない自信過剰な奴らがちらほらいたか。そういう奴に限って死んだんだ。最期は何と言っていたか……。思い出した。『俺がアイツを倒せば、昇格ッスね!』だった。ダメだ。かなり被る。


「……やれやれ」


 いつでも撤退できる準備は必要か。



「いろいろ道具を貸してもらって悪いな」


 出現場所へ向かう前に、彼らからいろいろな道具を借りた。

 剣、鎖帷子、バックパックに干し肉や乾パンといった軽食と動物の胃袋で作った水筒。

 どれも彼らのお下がりではあるが、これだけあると非常に助かる。

 併せて、赤い宝石の埋まった指輪も渡された。これは同じパーティということを示すものだそうだ。


「いつかこの恩は必ず返そう」


「いえいえ! むしろ、こちらがお世話になる側なんで!」


「たぶん、負んぶに抱っこだと思うぞ……」


「またまたぁ……」


 相変わらず高く買われてしまっている。暫くはこのままかもしれない。

 半ば呆れながら進む。


「そういえば、君らは冒険者をやって長いのか?」


「もうすぐ一年ってところッスね。まだまだうちらも新米ッスよ」


 そう言ってケタケタ笑う少年。


「一年の割には、本格的な装備だな。それに、パーティのランクも上げているのだろう?」


 あの後聞いた話では、パーティに関してはEランクスタートだった筈だ。

 本来どれぐらいのスピードで上がるのかは知らないが、二つもランクを上げるのは凄いことじゃなかろうか。


「勢いだけなら他のチームに負けてはないよ。かなり早いってギルドからも驚かれてたよな。ただ……」


「ただ?」


 アイルの顔が曇る。


「目立つってことはその分目を付けられやすくもなるということです。依頼を横取りされたり、嫌味を言われたり」


 勢いのある新人は目を付けられやすかったりするものだ。

 部下の中にも、そんなつまらないことで文句をいう奴もいたか。そういう奴に限って実力が伴っていなかったりして、俺の言うことを聞かなかったり、無謀に敵に突っ込み戦死したりとロクな目に遭わなかったが。

 今回だと心当たりのある奴がいる。


「さっき俺にちょっかいをかけてきたアイツらとか?」


「うん。アイツらが一番酷かったね。だから、さっきのアレはスカッとしたよ!」


 辛そうな表情で笑っていた。

 彼らのような若手には伸びて欲しいと思うが、そういうのに限ってすぐ無茶をしてしまう。そこで痛い目を見て覚えるものだが、この世界だとそれが死に直結する可能性が高いと思うと冷や冷やする。


「さて、そろそろ目撃情報のあった地点ですよ」


 森のど真ん中。ヴァイスが地図を確認しながら進んでいたが、俺には違いがいまいちわからない。


「ここで登場するのがこちら!」


 アイルがカバンをゴソゴソ。包みから取り出したのは、一欠けのキノコ。


「これは?」


 独特な香りがするそれをヴァイスに尋ねる。


「これは森の怪猪が好むキノコの一種です。独特な香りがするでしょう。これを仕掛けておびき寄せようかと思います」


「それに加えて、この魔石ッス」


 ライが取り出したのは真っ赤な石。


「これも一緒に仕掛けて、爆発させるッス」


 簡易的な手作り罠を一緒に設置する。


「魔石?」


「そうッス。衝撃を加えると爆発する不思議な石ッス。これならレベルが低くてもダメージは通るッスよ! 出血大サービスッスね!」


 なるほど、そういうアイテムもあるのか。


「後は、バレないように待とう」


 各々のポジションを決め、身を潜ませる。もちろん、臭いでバレない様にこれまた独特な臭いの草汁を擦り込んだうえで、だ。


 そして、その時を待つ。

 ――来た。


 緑色の体毛を持つ、巨大な猪が、ゆっくり、ゆっくりと周囲を警戒しながらキノコへと向かう。そして、罠に足がかかり、爆発した。


「やったか!?」


 アイルが声を発した。


「まだです!」


 爆煙を切り裂き、巨体がアイル目掛けて駆け出す。


「――っ!?」


 間一髪、アイルのいた場所にあった木はへし折られてゆっくりと倒れた。


「とんでもない威力だな」


 各々武器を構えて猪へ向く。

 奴もまた、体毛の一部が焦げたぐらいで、あまりダメージは入っていなさそうだった。

 格上の相手。心躍る相手ではないか。


「いざ、参る」


 今、戦いの火蓋が切って落とされる。


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