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パーン・パーン・パーン! ー飛空艇事故の真実と真相ー  作者: 鈴本恭一
クレインフライ飛空353便エンジン故障事故
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クレインフライ飛空353便エンジン故障事故⑪:着陸開始


○ゴンベー=ジョン=チャンスミスリー(カカナ連邦 海洋大気観測会社『カオティックブルー』社員。副操縦士)


『フンド・タワー、こちらカオティックブルー、事前通達の通りクレインフライ353の予定進入コースから滑走路34R上空を通過し、旋回待機します』

『カオティックブルー、空中待機を許可。ありがとう』


 空港の管制官の許可を貰い、僕らはフンド空港の滑走路へは降りず、空港上空で旋回待機しました。


 クレインフライ353の着陸リハーサルとして滑走路へ実際に降りてみることも考えましたが、もし万が一僕らが着陸に失敗して滑走路が使えなくなったら大問題になるので、上空で様子を見守ることにしました。

 もちろん緊急事態発生なので、滑走路の情報は最優先でクレインフライ353便に送られてました。

 他の便は全て退避させてあります。滑走路34Rはクレインフライ353専用のものでした。


 空港では消防ゴーレムも医療チームも待機済みで、完全な臨戦態勢。

 僕らも気象探知ゴーレムや対空探知ゴーレム、観測ゴーレムを使って空港とその周りを監視しました。強い風も霧もなくて、今のクレインフライ353、オーディシアス号型の性能なら問題なく着陸できる状況でした。


《クレインフライ353、誘導魔法ローカライザーの範囲内に入りました。フンド・タワーとの通信に切り替えて下さい》

《フンド・アプローチ、フンド・タワーと通信します、クレインフライ353》


 通信魔法を拾い上げ、353便が着陸コースに入ったことを知りました。


『大丈夫だよね、ここまで来れれば』


 僕はフレッドとエヌエヌ、2人の魔術師に訊きました。

 フレッドは平板な声で『なんとも言えない』と言いました。


『オーディシアス号型の自己診断機能はかなり高い。状態確認は何度も行っているだろう。それで今以上の異常報告がないのだから、353便自体にはもう問題は起きない』

『なら』

『懸念するべきは、あの不明領域だ』

『その物質の、光魔法観測ゴーレムの簡易解析が終わりました。ガラスや鉱物を含む、魔力を纏った生物由来物質です』


 幾つもの魔導卓に囲まれた観測室から、エヌエヌが大仰な手振りを伴って言ってきました。


『……生物由来? 血とか肉とか?』


 僕は彼女の言葉に首を傾げました。


『どっちかと言うと皮膚に近いです。脱皮、あるいは換毛とかそういうの。特徴的なのは、捨てられた皮や毛の中にガラスや鉱物を多く含んでることです』

『ああ、火山灰に近いとか言ってたやつね』

『そうですそうです。その生き物は皮膚、または肉体がマグマのそれに近い可能性があります。生きた火山です』

『こわっ』


 僕は思わず呟いて、あれ? と更に首を捻りました。


『そいつはどこから来たの?』


 僕の疑問に、エヌエヌはフレッドを見ました。僕も彼のスキンヘッドを見ました。

 フレッドは補助魔導卓をいじり、地図を出しました。


『最も可能性が高いのは、ずっと南、タラムマ王国のスンスス山だ』

『火山?』

『そうだ。以前から火山活動の活性化と警告が出ていた』

『で、今日、ついに噴火したと』

『だが、その噴火は妙だった。噴火した位置はタラムマの気象局が予想した位置とはまるで関係ない場所だったそうだ、カカナ連邦気象局が受けた情報連携によれば』

『しかもその謎の噴火による降灰範囲とは全然違うところで、あの擬似的な空中噴火が起きてます。気象探知、火山灰探知、汎用探知といった探知魔法の全てを掻い潜って、突然に』

『……それってつまりさ』


 僕は魔術師たちの言葉を聞いて、さらに疑問を口にしました。


『火山みたいなやつが、いつどこに現れてもおかしくないってこと?』


 この空港とかでも? と訊こうとしたとき、


『エヌエヌ、今までで分かった解析物で、生き物除けの魔法を組める? 簡単なんでいいからさ』


 ブルーが言ったんです。


『ええっと、はい、問題の生物の魔力解析が一応出来てるので、簡易的ですが作れます。

 けど実物サンプルを相手にした反応の確認が出来ないので、大声で喚くのとあまり変わらないものになりますけど』

『充分充分、それでいいよ。出来上がったら教えて。ゴンベー、エヌエヌの魔法が出来上がったら管制に連絡しといて』

『なにをさ』


 僕が訊くと、ブルーは353便との清らかな声が嘘だったみたいな、悪戯っ子そのものの表情で、



『空港で魔法をぶっ放すかも、って』














○ロック=ダイアクラブ(クレインフライ飛空353便 副操縦士(当時))の証言



『ローカライザー及びグライドスロープをキャプチャー』

『チェック』


 10カイリ(1.8キロ)を切った頃、機長が滑走路からの誘導魔法を受けたことを報告し、私も計器で確認しました。


 ローカライザーは滑走路への方角、グライドスロープは効果に最適な高度を誘導してくれます。

 この誘導は魔導卓に表示され、それに従って飛ぶことで安全に着陸できます。


『クレインフライ353、魔導誘導34Rを許可』

『フンド・タワー、魔導誘導34Rを許可、クレインフライ353了解』


 管制官から魔導誘導に従って降下していい許可が下りました。

 飛空ゴーレムに降下を指示しました。

 オーディシアス号型がゆっくり高度を下げていきます。


 私達は着陸前の儀式を進めました。


『着陸前儀式を執行』

『了解、着陸前儀式を執行』

『チェック、エアスピード、フラップフル』

『フラップフル』

『チェック、エアスピード、ギアダウン』

『ギアダウン』


 フラップを展開し、着陸ギアを下ろしました。

 3本の着陸ギアが下りる大きな音と、無事に展開できた緑の点灯は、心強さと安心感を与えてくれました。少なくても脚は降りているんだ、と。


 着陸前儀式では何の問題も出なかったので、あとは空港から許可を貰うだけでした。

 そしてそれはすぐに来ました。


『クレインフライ353、フンド・タワー、滑走路34Rへの魔導誘導での着陸を許可します』

『フンド・タワー、滑走路34R魔導誘導での着陸を許可、クレインフライ353了解。消防隊は待機していますか?』

『クレインフライ353、消防および緊急救助隊を配置済みです。幸運を』

『フンド・タワー、了解です。ありがとう』


 ついに着陸の時が来ました。

 フンド空港の34R滑走路がはっきり正面に見えていました。

 自動操縦ゴーレムの動きも正確でした。

 高度は1,200フィート、着陸まで2分と掛かりません。

 滑走路はすぐそこでした。





○モトタカ=ウラベ(四魔協 (四大陸魔剣士協会) エデ大陸王者。魔剣士)の証言


『―――間もなく当機はフンド国際空港に着陸致します。万全を期しますが想定されない事態も予想されますので、皆様どうかシートベルトを着用し、客室乗務員の指示に従って下さい』


 操縦士のアナウンスが流れ、窓の外には懐かしい帝国の夜景が広がっていました。

 エンジンが復活して以来、あの謎の光も消え去り、旅は正常さを取り戻していました。

 夜のオーエデ湾には漁り火を灯した漁船が多く、候補生時代によく夜釣りをしていたのを思い出しました。懐かしさに浸る余裕さえあったのです。


『よくここまで飛んでくれた……』


 私は機長たち操縦士に感謝しました。無事に空港で魔剣に再会したら、操縦士らのことを伝えようと思ってました。君とまた会えたのも彼らのおかげなんだぞ、と。


 が、しかし、


『……なんだ?』


 脱力していた私の皮膚を、何かがひりつかせました。

 毛が逆立つような危機感です。

 しかも既視感のあるそれでした。

 それがすぐ近くにいる。

 根拠は無いのに確信だけがある、あの霊感に似たものが、私を動かしました。

 シートベルトを外し、出来るだけ機内の先頭へ駆けました。客室乗務員が慌てて『席にお戻り下さい』と制するのを留め、力の限り叫びました。


『目を閉じろォッ!!!』


 直後に。


 閃光と轟音が、機体を包みました。


 赤い稲光。

 そして




 ―――――――――ケェエエェエェエエエエェエエェエエエエ!!!!!!!!!!










○ゴンベー=ジョン=チャンスミスリー(カカナ連邦 海洋大気観測会社『カオティックブルー』社員。副操縦士)



『魔力反応、急増! 方位170!』


 突然、エヌエヌが叫びように言いました。


『やはり来たか』


 フレッドが目まぐるしくゴーレム群を操作し始めました。

 彼は例の生き物用に簡易的な探知魔法を作っていて、それで空港周辺を警戒してたんです。


『高度は500から1,000フィート、距離は2,000から3,000メートルの範囲内だ』


 僕は魔術師たちの報告に、やばいなと思い、


『ブルー、まずい、その方向はクレインフライの』

『支援行動に移るよ。ゴンベー、管制に連絡したら、エンジンモードを戦闘に』

『了解』


 ブルーは旋回待機を解除してクレインフライ353便を助ける行動を始めました。

 僕は指示通りに空港へ連絡した後、カオティックブルー号の設定を戦闘態勢に切り替えました。

 4基のターボプロップエンジンが唸りを上げて吠え立てました。


『ボス、対空探知画面に不明領域が発生、353便を探知できん』

『光魔法観測ゴーレムが例の物質の反応波長を観測しました、濃度も増大中!』

『おいでなすった。全員マスクつけ――――――』



  ケェエエェエェエエエエェエエェエエエエ!!!!!!!!!!



 ブルーの言葉を、何かの啼き声が掻き消しました。

 聞いたことのない声でした。

 エンジン音を貫くほど強烈な大音声に、思わず体が震え、唇がつり上がりました。僕はブルーに言いました。


『行こう、ブルー! そこにいる! 僕らが一番槍だ!』


 ブルーは優しく頷き、クレインフライ353便へ急行しました。

 獲物はすぐそこでした。




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