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セールーン飛空1990便墜落事故⑩:魔剣使いたち

○ガウリイ=ラファエフ(四魔協(四大陸魔剣士協会) セールーン市魔剣士協会代表。魔剣士)の証言


 事故の後、当たり前なんですけど俺たちはみんな重傷で、車椅子を使えるまで一ヶ月はかかりました。

 その後リハビリに励んで、なんとか自分の足で立てるようになりました。


 けどその頃には、決勝戦の延期はそれ以上不可能になってました。

 辞退するしかありません。

 事故前の状態に戻すのだって、どれくらいかかるのか分からないんですから。

 ましてや相手は、あのリナ=シャブラニグドゥスです。

 こんな状態で挑みたくはありません。

 チームみんなで話し合って、辞退を決めました。


 けど、ちょうどそのとき、四魔協から連絡があったんです。



『チーム『ルビーアイ』は決勝戦を辞退する旨、通達があった。四魔協はこれを受理。

 よって『ジャスティスセールーン』を今期の団体リーグ優勝チームとする』



 ……そのときの気持ちは、なんて言えばいいのか、今でも分かりません。

 なんせ、リナ=シャブラニグドゥスが敗れたのは、そのときだけなんですから。


 優勝の賞金はちゃんと貰えました。

 そのおかげでリハビリもチームの立て直しも不安なく出来ました。

 腕の良い治療士も雇えましたから、事故から三ヶ月で、セールーンに帰れました。凱旋でした。みんな俺たちの無事を祝ってくれました。


 ただ、事故の原因が竜によるものだって分かったときは、少なからずショックでしたね。


『せめて魔剣があれば……』


 チームメイトのアメも悔しそうでした。みんなそうでした。真っ当にやり合って、4人がちゃんと魔剣を持って、それで竜に敗れたならともかく。

 この悔しさをどこにもぶつけられず、俺たちは無心で修行に励みました。



 その後、四魔協は俺たちの状態を良好と見て、団体リーグの表彰式を行うことにしたんです。

 ジャスティスセールーンが優勝、ルビーアイが準優勝。

 だからシャブラニグドゥスも呼ばれてます。

 事故のとき以来、シャブラニグドゥスとは会っていません。彼女の試合もありませんでしたから、映像越しの姿さえ見てないんです。


 やっと会えると思いました。会ったら何を伝えようかとあれこれ考えてました。

 そして、またワッサタウンに着いたんです。今度はなんの事故もなく。

 表彰式をする闘技場に着いたときでした。

 四魔協の人が、血の気の無い顔で叫びました。


『シャブラニグドゥスが雲竜を倒した! 竜を殺した! ドラゴンスレイヤーだ! でも意識不明の重体!!』


 ……いや、もう、本当に。

 俺は泣きそうになりました。


 魔剣士を倒せるのは魔剣士だけです。

 リナ=シャブラニグドゥスは、魔剣士は竜に勝てない、という不名誉から俺たちを守ってくれたんです。


 あの事件で、魔術師が雲竜の死体を欲しがってるから竜を殺したって言う人もいましたけど、たぶん違います。魔剣士でない人間には理解できなかったと思います。


   『魔剣士が、魔剣以外で倒れる不名誉を、私は許さない』


 彼女はその言葉通りのことをしたんです。それだけです。






 俺たちは、リナ=シャブラニグドゥスの入院してる病院で面会することを許されました。


 翼人用のベッドで、全身包帯でぐるぐる巻きになっても魔剣を手放さない彼女は、俺たちに、


『お、お加減はその後いかがでしょうか……?』


 って恐る恐る聞いてきたんです。竜さえ破る斬撃の主とは思えない口調で。

 いやそれこっちが聞きたいんですよって思って、吹き出しました。みんなも笑ってしまって、一気に打ち解けました。

 そこでシャブラニグドゥスに、


『どうしてあのとき空港にいたんですか?』


 って聞いてみたんです。

 そしたら恥ずかしそうに、


『……き、きれいだったので』


 って顔を真っ赤にしてました。

 あなたの方がきれいですよ、って思いました。







 事故の翌年、リナ=シャブラニグドゥスは完全に復帰しました。

 俺たち『ジャスティスセールーン』も再始動して、団体リーグの決勝戦へ再び出場しました。

 対戦相手はもちろん『ルビーアイ』


 その時の勝敗は、ご存じの通りです。

 彼女が負けたのは、あの不戦敗のときだけなんですから。




(完)


お読み頂きありがとうございます。


今回のエピソードは、デルタ航空191便墜落事故をベースに、ラミア航空2933便墜落事故のサッカー要素を混ぜ、また初めての幻想生物による航空事故となりました。


前回は初めてなので手堅く人間だけの要素にしましたが、ファンタジーならではの事故を描きたく、ファンタジー代表のドラゴンをお呼びしました。


これがなかなか難産で、強すぎて解決策が思い付かず、高名なドラゴンキラーのお名前を拝借してなんとか話を畳んだ次第です。

無難にハーピーストライクとかにすれば良かったと後悔しています。人の手に負えないからドラゴンなんだぜ、とある親方の名言が刺さります。


メーデーらしい話の収束とはいきませんでしたが、楽しんでいただけたのなら幸いです。


もし今回のお話が面白いと思っていただけましたら、評価・ブックマーク・感想を頂けると、ウキウキになって別の案件を書くと思います。

それでは、良い一日を。

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