4.神の子(シェルフィー視点)
今日王宮で行われた私的な茶会。この茶会は幼馴染であり近衛騎士団の団長であるアルベルト・ローレル公爵の末の娘のお披露目をする為のただの茶会の筈だった。
精霊達の様子がおかしいなど初めから何か違和感があったがそれでも気にも止めない程度だった。
本当に予想外な事が起こったのは私と契約している聖獣『風天馬のシド』を呼んだあたりからだった。
『シド。おいで』
私は念話でシドに話しかける。
『ん……?しょうがないなー』
まったく……。シドはのんびり屋さんだな。
『来た……よ……?えっ!?えっ!?もしかして!』
『どうした』
『え、あの子って……!!』
おい。ルマがどうしたんだ!ちょ、突っ込んでいくな!落ち着け!
私はシドが少しでも落ち着くようにと優しく背中を撫でながら話を聞く。いつものんびり屋だが、同時に賢いシドがここまで冷静さを欠けるなんて……本当にどうしたんだ?
『……あの子はルマって言うの?あの子《神の愛し子》だよ。まぁ、正しくは神の力を使える者ってとこかな?』
『なに!?』
神の力を使える者……。それは……どういうことだ?いずれにせよこんなことが世間に知られたらルマは狙われるな……。まぁ、ローレル家ならそんな奴ら闇に葬りそうだが……。
『ちょっとルマまで近づいてもいい?』
シドからそう聞かれた私はアルベルト達に確認をする。……巨下モードになったアルベルト達からは貴族、王族の鏡とも言える答えが帰ってきた。
またシドが暴走気味にならないように私も一緒に付いてルマの元へ行く。
ルマの側まで来ると唐突にシドはルマの長い服の袖を咥えて引っ張った。
あらわになったルマの可愛らしい小さな右手の甲。そこには蝶の形をした痣があった。
!?
蝶の痣だと……。まさか……。
『やっぱりあった……。シェルももちろん知ってるでしょあの言い伝え』
『【天から黒蝶の子舞い降りる。その時代神は何かを滅ぼさん】……か』
この世界では黒蝶は神の力を宿している生き物と言われている。
やはり、ルマは何か使命を背負っているのだろうか……。これはアルベルト達とも詳しく相談する必要があるな。そう思い皆にシドが教えてくれた説明をしたすぐに……。
『来る!』
来るとは何がだ?何のことを言っている?我が相棒のことながら今のシドはどこかいつもと違い何を考えてくるのかよく分からない。
!?
陽の方向に何か見える……真っ白な……虎?闇空虎か!?
闇空虎はその白い見た目からは想像できないが闇と雷を操る立派な聖獣だ。普通人は闇魔法は使えないし、人は闇を怖がる傾向にある。だから闇空虎は聖獣ながら怖いものだと恐れられている。
……。
いったい闇や影のどこが怖いのだろうか。確かに一人真っ暗な夜に目覚めると世界にたった一人残されたようで不安になる事もある。しかし、闇や影がなければ光があることはあり得ないのに……。人は愚かだ……。
天から黒蝶が送られてきた今、神は今度は人を滅ぼそうとしているのかも知れない。
シドと二人がかりで闇空虎に話しかけるが返事は帰ってこない。ただジッとルマの瞳を見つめている。会話してるのか?……いや、ルマはまだ1歳にもならない赤子だ。あり得ない。
暫くすると闇空虎はさらにルマに近づいていくと優しく触れた。
『……あーあ。契約しちゃった。ルマは僕が守ってあげようと思ったのにー↓』
は!?契約したのか!?ルマはまだ赤子だぞ?
……。
ん?ルマが目で何かを追って……え。ルマの目線の先にいるのは精霊達だけなんだが……?見えるようになったのか!?闇空虎!「あぁ、契約した」って……軽すぎだろ!?
ほら、皆も呆れて……って、シド!しょぼくれ過ぎじゃないか!?闇空虎に契約されたとしても守れるだろ?え、独り占めしたかったって……子供じゃあるまいし……!
!!
はっ、なんだかんだで私もだいぶ取り乱してしまった……。落ち着け……ふぅーはぁー。私は我が国ジセル国の王だ。ルマのためそれ以上に国を守る為に何が最善なのかを考えなくてはいけない。
……。
何度も言うがルマはまだ赤子だ。こんな子が聖獣と契約した……ましてや神の力を持っているなど世間にバレたら大変な混乱を生んでしまう。
――ルマが大きくなるまで力を隠す。
これが今出来る最善策か……。この子はこれから学ばなくてはいけないことが増えたな……。いや、賢くならなければ生き残れないだろう。
そして私も聖獣の契約者として超えた道だ。それでもこの子のほうがずっと大変なことになるだろう。
『王として国のことを第一に考えなくてはならないが出来る範囲で手を貸してやろう』そう私は決意した。
第2話、3話のシェルフィー視点です。
以外な性格をしてるシェルフィーでした。可愛く感じるのは私だけですかねwww
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