2.波乱なお茶会
うん。本当に赤ちゃんの成長は早かった。
うん。でもね?いくらなんでも生後一ヶ月も経たずに首がすわるのはおかしくね?確か早くても二ヶ月くらいからだったよね?
もしかして、この世界の赤ちゃんは成長スピードが地球の子より早いのかな。
まぁ、首がすわったってことで『初☆お出かけ』できることに。お出かけ先は王宮。え、なんで王宮!?公園とかじゃないの!?って私は思わず叫びましたよ。あ、勿論心の中でね。
なんでも家、ローレル家は王家と深い繋がりのある家だし、王宮はお父さんの仕事場だからお披露目も兼ねて王様達とお茶会しよう!ってなったんだって。
なんとお父さんはこの国の近衛騎士団の団長でめちゃくちゃ強いんだって!!
あと、めちゃ賢くて交渉とかもできるから騎士団のブレイン的な存在でもあるんだって!
火の特級術師であることから『煉獄の騎士』って渾名まであるらしいし!まったく驚きだよ!
……。
王様かぁー。王様ってどんな人なんだろ〜。やっぱりおデブで髭ぼうぼうなのかな?
すいません!本当にごめんなさい!!私は心の中でnow絶賛土下座中です!
お茶会当日。向かった王宮の庭園。そこに居たのは……。
ちょーぜつイケメン×2とちょーぜつ美人×2でした。
王様すいません!おデブで髭ぼうぼうって言って。もう一度謝ります!すいません!
……。
イケメン王様は深い蒼の髪に金色の瞳。もう一人のイケメン(王太子かな?)は王様と同じ配色で王様を若くした感じ。でも王様も充分若くみえるよ!
で、美人は王妃様と王女様かな?この二人も同じ配色で透き通るような水色の髪に金色の瞳だね。
なんか王太子と王女……王様の子供二人は凄く気が強そう。眼力が強いからかな?
お母さん達がそれぞれ礼をする。臣下の礼ってやつかな?ほら、海外映画とかで貴族がしてそうなやつ。絶対きついよこれ……。こんなのしたくないぃ……。
「楽にせよ」
王様が許可をだすと一斉に布が擦れる音がした。王族は特別。許可が出るまで顔を崇拝することは出来ないんだって。まぁ、私はガン見してたけどね。中身はともかく見た目は赤ちゃんの姿だしー。
「陛下。この子が産まれた娘です。ルシェマと言います」
「今日の茶会はルシェマと顔を合わせるための私的なものだ。畏まらなくても良い」
「…………はいはい。分かりましたよシェル。ルマこの人がこの国の王様だよ」
え、お父さん急に砕けた口調になったよ!?王様と騎士団長ってこんな感じでいいの!?
「ふふっ、私はシェルフィー・ビレ・ジゼル。ここジゼル国の王をやっている。宜しく頼むよ可愛い小さな姫君。そこの君の父親とは幼馴染でね。よく助けてもらっているよ。そこに居る王子のエルはルマのお兄さんと王女のカナアはルマのお姉さんと同級生だよ。……私も是非ルマと呼んでもいいかな?」
なる程。お父さんとは幼馴染だったんだね!通りで砕けた関係で……てかこの国の名前初めて知ったわ。ジゼル国って言うんだね!
んで、王族は自分の国の名前が名字にあたる部分になるのかー。
え?愛称呼び?全然良いですよ〜!むしろウェルカ……
「駄目です」
ム……。え!?なんでお父さんが断っちゃうの!?
「お前には聞いてないんだが?」
そうだ、そうだ!決定権は私にある!
「この子はまだ赤ん坊です。喋れませんよね?なので親が答えるのは正しい事でしょう」
うっ……。確かに喋れねぇーわ。
「……くぅ」
うっわぁ。お父さん性格悪っ!どこぞの神様と張り合えるんじゃない?
「あら?でしたら返事をするのは私でも良いですわよね?私だってルマの母親ですもの。陛下、是非ルマと呼んでやってくださいな」
「……はぁーあ」
「あぁ!ルマ改めてこれから宜しく頼むよ!」
あ、お父さんがお母さんに負けた。お母さん実は我が家で最強だったりして……。王様は許可が出てキラッキラの良い笑顔ですな。
「まったく。陛下もローレルもいつもこれなんですから」
「まったくですわ」
ころころと笑う王妃様と王女様。そうなんですか……。これがいつもとか周りの人達、気の毒だな。
「おやおや、ルマが驚いているようですよ」
おっ!王太子は気の強そうな見た目とは違って優しそう!
「ふふっ、どっかの妹とは違って可愛いですね」
「なんですって?お兄様?」
「何でもない、何でもない」
と、思ったら王太子も良い性格をしておいでなようです。王族貴族ってみんなこんななのか……。
「ふふっ、妹は我が家のアイドルですもの」
「うんうん!」
兄よ!姉よ!シスコンは前世だけで充分なんです……!せめて家だけにして!恥ずかしいよ……!!
「あぁ、そうだルマ。私と契約している聖獣様を呼ぼうか」
え、聖獣?王様契約してるの!?いや、生き物は良いですってば!?苦手……ハッキリ言って大嫌いなんです……!!
「風天馬のシドだよ」
いや、良いですって!?
あぁー!!神様にこんだけ私の望みと逆の展開にされて来てるのにどうしてあんなに嫌がった生き物が出て来ないのだろうって思っとけばよかった……!!学習しとけよ私……!!
……。
あれ……?あんまり嫌いじゃない?馬の聖獣かな?毛がふわっ!つやっ!さらーっ!で気持ち良さそう……触ってみたいな……。
……。
ん?触ってみたいなって言った私!?やっぱり神様に性格いじられた!?
あーあ。もう抵抗する気力ないわー。もう良いや。いや……むしろ私が抵抗しないのは神様にとって予想外のはず……抵抗しないのが一番の抵抗だったりして。よしっそれで行こう。
「風天馬はね、風と水の聖獣なんだ」
……。
通りで透き通った毛色で常にふわふわ毛が揺れてるのね……。風と水のせいでしたか……。
「ん?シド?」
「どうかしましたか?シェル?」
「いや、シドの様子がおかしい……。精霊達も」
「!なにか異常が?」
「いや、悪いことではなさそうなんだが。……シドに精霊達よ……落ち着け」
「フシューっ!」
鼻息荒っ!……って!こっちに来るんですけど!?
「シド!どうした!ルマがどうかしたのか!」
え、え、えー!?私なんかやらかしました!?私のヲタク知識によると聖獣って契約者の害になるものは排除するんだったよね!?私何も企んでないよ!?てかまだ赤ちゃんだし!しようにもできないし!
陛下ー!自分の契約者どうにかしてくださいよ!!
私の心からの叫びに陛下が気付いてくれたのかどうかは知らないが風天馬のシドを撫でながら話しかけて落ち着かせてくれた。
「シド落ち着きなさい。君がそんなに慌てるなんてどうしたのかい?ゆっくり話してくれ」
「ヒヒーン!」
「……。精霊達も落ち着いてくれないかな?シドの声が聞こえない。あとルマから少し離れてくれ。姿が見えない」
え
姿が見えないって……そんなに群がられてるの!?
手でペシペシ空気を叩いてみる。……やっぱり何も分かんないかぁー。聖獣と契約したら見えるとかそういう事なのかな?
「何?どういう事だ?」
「陛下?聖獣様はなんと……ルマがどうかしたのですか?」
お父さんが臣下モードに戻った……。
てか、シドや見えないけど精霊達がへんになったのっておおかた私が神の愛し子だからだよね……。ほんとに面倒くさい……。
「……いや。シドとルマに近づいてもいいか?危害は絶対に与えない」
お父さんとお母さんが顔を見合わせて同時に頷く。
「私達はこの国を守る責任がある立場である貴族です。私達は守られるのではなく守る側。まだ赤子だとしてもこの子も例外ではありません」
かっこいいな……。今この人達の間にあるのは明確な主従の関係。でもどちらも国を守る立場というのは変わらない。
お兄ちゃんもお姉ちゃんも当然という顔をしてピンっと背筋を伸ばして立っている。
「……あぁ。そうだな……シド来い」
!
ちょっ、服の袖を咥えて引っ張らないでよ……!今日の私の服装は赤ちゃんにこんなの着せて大丈夫!?って心配になるくらい真っ白でかつ、ふわふわの物。
何故か毎回手まですっぽり隠れるくらい袖の長いの着せられるんだよね……ってほんとにやめてよ!シド!
「!これは……」
「ヒヒーンッ」
シドに袖を引っ張られて出た私の右手の甲。
――そこには蝶の様な形をした奇妙な痣があった。
頑張れ!神様に負けるなルマ!!
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