13 増えるヤンデレ
※軽いですがGL要素ありなのでご注意を。
悠李が目を覚ますと、そこは見たこともない豪華な天井だった。
ふと、両手に暖かい感触。
(……生きてる。そして、なぜ2人が私の手を握ってるんだ)
悠李が横たわる寝台の両脇に、レミと愛が突っ伏す形で寝ている。2人は両手でしっかりと悠李の手を握りしめていた。
(そうか私、レミと愛さんを庇って)
故に、責任を感じたのだろう、と悠李は納得する。
金細工で出来たベッドフレームの柱越しに、悠李は窓を見た。薄暗い外から射す白い光で、今が早朝だとわかる。
(夜通しずっと、心配してくれていたんだ)
なんだかむず痒くなって、悠李は顔を綻ばせた。すると、衣擦れの音。レミがゆっくりと体を起こし、目を擦った。
「……ユウリ様! 良かった。どこか痛むところはない?」
「大、丈夫」
発した声が思ったより掠れていたので、悠李は驚いた。
それを分かって、レミが眉を下げる。お労しい、とでも言いたそうな表情に、悠李は苦笑した。
「ちょっと待ってね。蜂蜜入りの水があるんだ」
そう言うと、レミが掌を宙に差し出す。そこから淡い光が輝いて、水入りのコップが出現した。レミがその水を差しだしたので、悠李は有難く受け取る事にする。
(なんでもありね)
水を含めば、ほのかな甘さが口いっぱいに広がった。
ほっと息をつくと、またごそごそと布の音。愛が起きたのだ。
「悠李さん!」
愛は目が覚めた途端、物凄い勢いで悠李に抱き着いた。
「うっ」
「アイ様! ユウリ様はまだ傷が塞がってないんだよ、離れて」
「ううう、ごめんなさい」
耳が合ったらしな垂れていそうな落ち込み様に、悠李は怒る気さえ起きない。愛はその大きな美しい黒目から、ぽろぽろと大粒の涙をこぼした。
「悠李さん、私を庇って、ごめんね」
「……出来たから、そうしただけですよ」
「だからって、簡単にできることじゃない」
愛が悠李ににじり寄る。
「私、命がけで誰かに守られたの、初めて」
その頬は赤く、瞳は恍惚とした様で何かに取り付かれているかのようだ。
(んえ?)
「こんな気持ち、アサンさんにさえ抱かなかった。私、私――」
「言わせませんよ」
レミが身を乗り出して愛の口を塞いだ。それでもなお愛は何かを言いたげにレミを睨みつける。2人の間にまるでバチバチと電流が走ってるかのようだ。悠李は間に挟まれて困惑した。
その時、バタバタと誰かの走る音が出入り口のドア付近で聞こえた。扉越しに声が掛けられる。
「お休み中のところ失礼いたします、急ぎ聖女様にお目通り致したく」
「無礼な、何事です」
「我らの主、ファウ騎士団長のご容態が芳しくなく、どうか聖女様のお力をお借りしたいのです」
「……!」
その場の空気は一変し、3人は目を見合わせた。
「ファウが……」
「私、行きます。愛さんは一緒に行って力を使うフリをしてください」
「でも悠李さんは、まだ傷が塞がってないでしょう?」
「この通り、問題ないですよ。ファウ様の命にかかわる事でしたら行かないと」
「ユウリ様、貴方様は、本当に得難い人」
レミが涙ぐみつつ悠李を見つめた。
悠李は不思議だった。この世界に召喚され、キャラたちに接する中で――。ゲームの中の登場人物だとしても、そこに魂を感じたのだ。
だから、自然と体が動いた。元の世界では自分が傷ついたり死ぬ危険などない日々だったし、これからもないと思っていけれど。この世界で、出会ったことのない自分を見つけた気がした。
(助けたい、守ってあげたい)
それはきっと悠李の本質だった。
時には自分さえ犠牲にしても、誰かに手を差し伸べること。
「行きましょう」
痛む傷を軽く手で押さえ、悠李は身を起こしたのだった。




