遊泳禁止海岸
百物語十五話になります
一一二九の怪談百物語↓
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隣町に行った時の話だ。
当時の俺たちは、ちょっとした有名人でね。町で一番大きな「暴走族」に入っていたんだ。その日は集会の予定もなく、仲の良い仲間2人と一緒に隣町の「N海岸」まで遊びに行くことにした。
N海岸は「遊泳禁止」の海岸だった。とにかく事故が多くて、毎年海で溺死する奴が多かったから遊泳禁止になったらしい。
俺たちはバイクを全速力で飛ばしながらN海岸を目指した。N海岸に到着したのは、夜中の2時過ぎだったと思う。俺たちは海岸の近くにバイクを止めると、缶コーヒーを飲みながら朝まで海岸で遊ぶことにした。
海岸を仲間たちと歩き回りながら、愚痴やバイクの話で盛り上がる。途中で泳ぐことも考えたが、めんどくさいと思ってやめたよ。
夜中の3時前になると、俺たちは近くのコンビニへ向かうために一度海岸を離れようとした。その時だった…
「おい、あれ見ろよ!子どもじゃねぇか?」
仲間の1人が慌てた様子で海の方を指さした。
「本当だ…子供が…泳いでる…?」
仲間が指さす方向を見てみると、海で泳ぐ小学生くらいの少年の姿があった。少年は俺たちを見つめながら、気持ちよさそうにぷかぷかと海に浮かんでいる。
「おいおい…もう夜中の3時だぞ?なんでこんな時間に子どもが海にいるんだよ…!?」
少年は俺たちを黙って見つめながら、潜っては浮かび、潜っては浮かびを繰り返していた。それをしばらく見ていると…
「おい!子どもが浮かんでこなくなったぞ!?」
「ま、まさか溺れたんじゃ…」
「は、早く助けないと!」
少年が海へ潜ったまま、急に浮かんでこなくなったのだ。混乱した俺たちは、上着を脱いで一目散に海へ向かった。そして勢いよく海へ飛び込もうとした瞬間、俺たちの後ろから誰かが声をかけてきた。
「こらっ!何しとるんだっ!」
夜釣りにきていた近所のおっさんたちだった。俺たちは慌てて少年が溺れていることをおっさんたちに伝えた。
「子どもが溺れてんだ!早く助けないと…!」
「お前ら落ち着けや!あれが子どもに見えるんか!?もう一度見ろっ!!」
おっさんたちは少年が溺れた場所を指さした。そこには…
「えっ?な、なんで…」
そこに少年の姿はなかった。俺たちが少年だと思って見ていたものは、ボロボロになった子どもの「マネキン人形」だった。
「この海岸はお前らみたいな若いのが毎年死んでるんだ。遊泳禁止なのに…入るんだよ、この海岸は…」
子どものマネキン人形は、悲しそうな目で俺たちをしばらく見つめていたが、すぐに真っ暗な海の中へ消えていった。