05:敵国の騎士団長とご対面
アルファポリス版の方では騎士団長視点だったところをアリエス(アリー)視点に変更させていただきました。
私のことをじっと睨み、何かを考えこんでいる様子の騎士団長を案内した。
言語はお客様に合わせるのが礼儀!私は王太子妃教育の知識で帝国の言語を話した。
席に案内すると、騎士団長であるジークスレン様はメニューを手に取りすこし眉をひそめた。
きっと文字が読めなくて困っているのだろう。困っている姿は一見怖く見えるが、よく見るとかわいい。
だがさすがにメニューを読めないままにしておき、私が説明するわけにもいかないので即興で帝国語に変換した。
少し間違っているところもあるかもしれないが仕方ないのだ。もともとここは国境がある森なのだから帝国語のメニューも作っておくべきだったな、と少しばかり後悔した。
◇
私は注文を聞き、悩んでいる様子のジークスレン様にさりげなくパンケーキを進め、自慢げに笑う。するとジークスレン様は素直におすすめを聞き、パンケーキにしてくれた。わたしはなんだか楽しくなり、急いで、パンケーキを作り・・・
―――と、言っても魔法のおかげで時間がとっても短くなるから楽なのだが。
作った後、少しまだあったかいパンケーキを目の前のテーブルに差し出した。
その珍しい見た目、いちごやブルーベリーをあまり見ないのか、じっと見つめていた。
「毒とか入れてないよな?」
失礼だなあ、私は内心少しムッとしながら答えた。
「はぁ...カフェになぜ毒があるんですか」
そういうと、納得した様子でパンケーキをほおばっていた。
「―――!!」
そして予想以上においしかったのだろう、目を見開いて食べている。
「うまいな」
その言葉を聞いて何よりもうれしくなった。
思わず笑顔になってしまったのはそのせいだろう。
私はここに来てやっと自己紹介をするのを忘れていたことに気づく。
まあ店員と客で自己紹介する必要がないのはわかっていたが、これも何かの縁だ。こんな森に来てくれた大切なお客様。せめて名前だけ、いや、この森に少し変わったカフェがあったな、なんて覚えてくれるだけでいいから。
私は少し息を吸ってから名前を告げた。
「私、アリーって言います。貴方は?」
もう知ってるけど、なんて言葉は声に出さずに笑顔で聞いた。
「ジークスレンだ。」
「かっこいい名前ですね!」
名前を聞いたから、何か返さなければと思い、思っていたことをそのまま口に出した。
――が、後悔。
「アリー...さんも可愛いぞ」
帰ってきたのはお礼の言葉ではなく・・・。
少し照れた誉め言葉だった。
それだけで私の顔はみるみる真っ赤に染まり、俯いてしまったのだった。
――さすが、イケメン・・・イケメンって怖い・・・。