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黒のメイド  作者: 藤本 寛那
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我が主人

ガチャリと鍵の開く音がする。探が帰ってきたのだろうか?足音も立てずに、玄関に近づく。そこには、やはり予想通り、むすっとした顔をした探がいた。私を逃してしまって悔しいのだろう。開いたドアから風が入り込んで肌を撫でる。私は物陰からその様子を窺っていた。影から手のみを出し、ゆらゆらと手を振る。

「わっ!?」

ふふふ。かーわいい。人間の反応は、これだから面白い。

「だ、誰だ!?なぜ俺の家にいる!?」

あなたが従えというからわざわざこんな格好をしてまできたのに、誰とは失礼なものだ。ゆっくりと影から体を抜けさせ、月明かりの下に体をさらす。そして、にんやりと笑ってやった。

「め、黒のメイド……?」

探は驚いたような表情で私を見た。まだ私が誰かわからないようだ。

「まあ、酷いですね。あなたが従えとおっしゃったのに。」

少し、ヒントを与えてやろう。私が誰かわかるように。これから、ホワイトを潰すまで、私達はずっと一緒にいる事になるのだから。

「お、お前……怪盗天使か?」

誰かがいるかもしれないのにそんな事、言わないでほしい。誰かにバレて仕舞えば、私はここにいられなくなるかもしれないのだから、自分で自分の首を絞めない事だ。

しい、と自分の唇に指を当てる。

「よろしくお願いします、ご主人様。」


 赤い飲み物を口に運びながらふふふ、と笑う。ご主人様との出会いを、何度も何度も思い出す。あのあと私は、これからは私がご主人様、探様を守ることを告げ、夕食を作ってやった。今まで家事はすべて弟と妹に任せていたが、たまに練習していたのでメイドとして最低限のことはできるはずだ。

「ふふふ。」

笑いが止まらない。まさか、私が人間如きに使えるなんて。でも、そうしてみたいと思い、そう判断したのは私だ。だって、面白そうだったから。

「ああ、もう直ぐ夜明けですね。」

東の空がだんだんと明るくなっていく。明日は学校はまだないか。ご主人様の護衛のために、私も学校に生徒として通う事にしたのだ。学費くらいの貯金はあるし、同じクラスになるようにセイが手続きを済ませてくれたらしいので、これでご主人様を守りやすくなったはずだ。

ご主人様、か。

「ふふふ。」

どうせ仕えるのなら、本気で支えてみよう。母親のために暗殺者だとわかっている私たちに会いに来る、勇気のある方だ。そんな方になら、仕えてみるのも悪くない。

「よろしくお願いしますねえ、ご主人様。」

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