私の正体
「姉さん、姉さん、大丈夫ですか!?」
「すぐに助けるからな!」
体にゆっくりと感覚が戻っていく。体が動けるようになっていくのがわかる。どういうことだ?電源を切られたのでは?私の手がぴくりと動く。
「もしかして、起きているのか?そんな、馬鹿な。」
やっと耳障りな笑い声を発さなくなった真悟は、驚いたようにゆっくり私に近づいてきた。腹を刺されていて、あまり素早く動けないのだろう。う、う、と、苦しそうな声が聞こえてくる。
私一歩、というところまできたところで真悟はどさっと座り込んだ。
「姉貴!」
何とか動く手で、こっちに来るな、と伝える。何としてでも、人間のみんなを守り通せ、そう伝えるために。
「君はアンドロイドの割に、よく頑張るね。」
アンドロイドの割に?アンドロイドを馬鹿にしているのか?私の家族を、私を、馬鹿にしているのか?
「アンドロイドなのに、人間を守るなんて、よく頑張ったじゃないか。」
当然だ。弱いものを守るのは、強いものの役目だ。そう思っているのは私だけかもしれない。綺麗事かもしれない。けれど、それを守り抜こうとしてそれの何がおかしい?
「もう、いいんじゃないかい?」
真悟が甘く優しい声で私に悪魔のようにささやいた。
「もう、自由になってもいいんじゃないかい?」
自由に、なっても?私は、今まで、自由じゃ、なかったの?
「アンドロイドなんだから。」
そう、私はアンドロイド。今までのアンドロイドとして生は、全て正義のために注いできた。正しい人間を守るために。ひどい目にあった人間を守るために。私は今まで、何をしてきたんだろう?家族を危険な目に合わせて。そこまでして、正義であらなければならない理由なんて、どこにもない。正義でありたいというのは、ただの私の我儘だ。
「ね?」
うん。そうだね。真悟は私に手を差し伸べた。一緒においでよ。そう言いたいのだろうか?私がその手に手を伸ばそうとした時。
「姉さんはアンドロイドじゃない!」
セイがきつい声を出した。セイが大きな声で何かを叫ぶなんて、久しぶりだ。それに、敬語ではなくなっている。それだけ感情がこもって聞こえる。
「姉さんは人間よ!」
何を言っているの?私はアンドロイドじゃない。私は人間ではない。だから、今までこんなに苦しんできたのに。
「姉さんの体は、アンドロイドの体に人間の脳を移植したものなの!だから、姉さんは人間よ!」
うそ。だって、人間の私も、ちゃんと、生きて、死んで。私は、ただ記憶がコピーされた存在だって。




