私の電源
普通の人間ならきっと銃を向けられれば怖いだろう。けれど、私は怖がらなくてもいいはずなのに。なぜだろう、本能が告げている危険だって。逃げろって。逃げればいい。壊れければ逃げればいいのに足が動かなかった。そんなことをしているうちに、真悟は私に近寄ってきて、私を抱きしめるように捕まえて、銃を私の頭に突き付けた。
「姉さん!」
「姉貴!」
体はみんなの方を向きながら、声と頭だけは私の方を向いていた。伸ばされた手をつかもうと必死に手を伸ばすのだが、届くわけがない。
「ほら、大人しくしないか。」
まるで子供をあやすようにニヤニヤと笑いながら私を腕で押さえ込む。こんなの振り払って、早く戻らなくちゃ。そう思うのに、体に力が入らない。どうして、どうして、どうして。
「力が入らないのかな?仕方がないことだよ、諦めなさい。」
諦められるものか。どうして力が入らないの?いつも冷静でいられる、アンドロイドのはずなのに。
カタカタと震えている。どうしてだろう。自分の身に危険が迫ってくることに関しては恐怖なんて感じなかったのに。頭の銃を向けられることだけはどうしても怖く感じる。私の体に、何が起こっているの?今、何が起こっているの?
やめろ、私。怯えるな。勇気を出せ。早く逃げろ。間違っても、家族の足手まといなんかなるな。お前は、2人の主人だろう?信頼しあっている家族だろう?
私は勇気を振り絞って真悟の腕を振り払った。払い退けた腕が帰ってくる前に、2人の、仲間のもとへ向かって走り出す。早く、早く、早く。あそこまでいけば安全だから。だから。
「がっ!?」
今の声は、なに?え、私?私だ。私の声だ。なにが起こった?攻撃された?
全身の力が入らない。私はゆっくりとその場に崩れ落ちていった。
「お嬢様!」
ウメの声がボーッとしている私の頭の中に響く。
体が全く動かない。が、目は見えるし耳は聞こえる。どうなっているの?私の体になにが起こっているの?意識も薄い。あまりはっきりとしない。
「……死んだか?」
吐き捨てるように真悟はそう言ってまた笑った。死んではいない。何とか助かったみたいだ。何をされたんだ?
「姉さんに何を!?」
憎らしい声が聞こえてくる。セイの顔は、この角度からでは見えないが、さぞ起こった顔をしているのだろう。
「まあ、所詮はアンドロイドだな。」
機械なら壊れる、何かをされたのだ。なら、どうして私は意識を失っていない?
「強制的についている電源を切る電波だよ。先ほども使った。面白いだろう?」
真悟はそう言って醜い声で笑った。
何も面白くない。それにしても、おかしい。私の脳は機械でできているはずなのに、どうして意識がなくならないる耳が機能しているんだ?目が機能しているんだ?




