命にかけて
普通の人なら、何を言っているのかわからない、とでも思うのだろうか?けれど、私には理解することができた。
愛しているから、成長させてやりたい。愛しているから、いじめてみたい。私はそうは思えないけれど、確かにそういう考え方をする人はいるのだ。特に、愛しているから許されるのでは、なんて思っている人は多い。私を含めて。
「そうですか。私には理解できませんが、そう考える人もいるのでしょうね。」
先ほどからどうしてかずっと笑顔を崩せない。相手が笑顔だからだろうか。ずっと笑うのは、やっぱり疲れる。体は疲れないのだが、心が、ね。
おっと。関係のないことを考えてしまった。余裕ができるのはいいことだが、隙ができてしまってはいけない。
「わかってくれたかい?なら、許してくれるかな?」
真悟はそう言って、銃を私たちからそらし、そのまま千春様に向けた。千春様は慣れてしまっているのだろうか?動揺することもなければ、何も反応しなかった。
「許すわけがないでしょう?」
許すわけがない。人を殺していないとはいえ、人を監禁し、人に銃を向けて、発砲までしたのだから。
すると、やっと笑顔を崩した真悟は、
「ふむ。」
と、声を出しながら私達の方に視線を向けた。
「さて、おしゃべりの時間は終わりだ。どうするのかね?」
おしゃべりの時間は終わり、か。何とか時間を稼ごうと話を伸ばそうとしていたのだが、それももうできないようだ。どうすればいい?どうすればいい?2人を起こせばいいのか?
私が知っている2人の起こし方はただ一つ。ちかづいて、名前を呼べば起きる。が、この距離では遠すぎる。これでは起きてくれない。
2人を起こすには、ここから離れなくてはいけない。そうしている間に、後ろの仲間を撃たれたら?私はどうすればいいの?
「お嬢様、行ってください。ここは我々が。」
最後尾を任せていたはずのウメとアイビーがいつの間にか後ろまで来ていて、私の背中を叩いた。
ここは我々が、と言っても、2人には銃弾を逸らしたり受け止められるスキルはない。盾になるつもりなのか、この子たちは。そんなことはさせない。私が守ってみせる。全部は守れなかったけど、もうちょっとくらい守らせてほしい。だって、私は、2人のお嬢様なんだから。
「いい。何とかする。」
私は銃を持ち直した。絶対に守ってみせる。私の命にかけて。




