息子のためのゲームと千春様
真悟がポケットから取り出した銃を構える。
「1人ずつ殺してやろう。」
私たちアンドロイドは安心だ。けれど、人間のみんなはどうか?そうは行かない。3人でドアを前に庇うように立ち塞がる。手を広げ、ご主人様たちを隠す。絶対に後ろのみんなには当たらないように。そして、きっ、と、真悟を睨んだ。
ご主人様は未だ放心状態だ。自分の父親が敵で、しかも自分に銃を向けている。その事実が信じられないのだろう。
「父親のすることではありませんね。」
大きな隙ができないかな、なんて淡い期待をしながらそう声をかける。ご主人様の、息子の顔を見る価値もない、その男に。
「そうかな?私は息子のためにこのゲームを用意したのだが。」
確かにこのゲームは、私たちがいれば簡単だっただろう。敵だって私たちが倒せばいいし、問題だって私たちが解けばいい。真悟は私たちがいることを知っていたし、私たちがご主人様や真悟を探しに行くことを想定していればかなりぬるいゲームだろう。
けれど、やっぱり危険はあった。それなのに、危険な目に合わせておいてそれが息子のため?とてもではないが理解できない。
「あなたの言っていることが本当に正しいかは、あなた自身の頭でもう一度考えてみてください。」
探偵をやっていた真悟。敵のボスをしていた真悟。私たちにうまくヒントを与えてきた真悟。頭が悪いはずがない。それなのに、どうしてわからない?
「考える必要はないさ。」
もう片方の手を、天井に向ける。その動作に、いったい何の今があるのかと考えている間に、慎吾の後ろから白いワンピースを着た誰かと、男の人が出てきた。
……千春、様?
「かあ、さん?母さんなのか?」
いや、間違いない。あれはアンドロイドではない。機械特有の音がしない。本物の、人間の千春様だ。
こっちにゆっくりと近づいてくる。その頭には、横に並んでいる男に銃が向けられている。……人質か。
「このために、探が5歳の時から準備していたのだから。」
5歳の時。つまり、千春様がさらわれた時か。あの時から、ご主人様が大きくなった時のことを想定していた?そのためだけに、今、人質にするためだけに何年も前にさらったの?
「もちろん、これを閉じ込めていたのは他にも意味がある。」
私たちから目を離すことなくそう言いながら笑った。
「おかしいな、と、疑問を持たせるためだよ。疑問を持たせて、私の正体を知るように、方向を教えてやる。最高じゃないか。」
何を言っているのか。少々理解しかねる。真悟は息子に絶望を与えたかっただけなのではないだろうか?馬鹿みたいだ。自分の息子にそんなことをして、何が楽しいというのか。私には到底理解できない。




