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黒のメイド  作者: 藤本 寛那
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覚悟

 階段を踏み締めて登る。次は地下1階。これで最後のはずだ。そう思うと、なんだか緊張してくる。次はどんな試練が待っているのだろうか?

ヤミがゆっくりとドアを開けた。人の呼吸音が聞こえてくる。誰かいるんだ。けれど、うまく呼吸音を隠せていない。戦いに身を投じた者ではなさそうだ。

「……探たちは見ないほうがいいかもしれないな。」

ヤミが静かにそういった。ヤミからはそこに誰がいるのかが見えているのだろう。ということは、私たちの推理は予想どおりだったということか。……残念だ。

「なぜだ?」

ご主人様もヤミに合わせて小さな声で話す。後ろで進むのを待っている人たちには聞こえていないかもしれないくらいの、小さな声で。

「知らないほうがいいことってのはあるものさ。」

ヤミは音が立たないように静かにドアを閉じた。ヤミは優しさで言ったつもりなのだろう。確かに、こんな真実、知らなくて済むなら知らないほうがいいはずだ。けれど、ご主人様はそれに怒ってしまったようだ。顔が歪んでいる。

「どうしてだ?俺は真実に立ち向かうと決めたんだ。」

そんなのいつ決めたんだろう?でもね、ご主人様。世の中には知らないほうがみんなを幸せにできる事実っていうのは本当にあるものなんですよ?

「この事実はお前たちを不幸にする。」

ヤミは首を横に振った。

「ここは俺たちだけで言ったほうが……。」

「なめないで!私は行きます!」

ヤミの言葉を止めたのはご主人様ではなくお嬢様の小さくも、力強い声だった。

「そうだ。なめるな。俺たちはたとえそれがショックな事実でも、立ち向かいたいんだ。」

その目は真剣だった。おそらく、この事件に関わると決めたあの時から、ご主人様の心は決まっているのだろう。

「いいのですね?」

私がご主人様に最後の忠告をするも、ご主人様は私の目をしっかり見てうなずいた。……これでは連れて行くしかないじゃない。

「ヤミ。開けなさい。全員で立ち向かいましょう。」

人数は多いほうが心強い。信頼できる人は多いほうが心強い。たとえその人が弱くて脆い存在だったとしても、心は強くなれる。そう思ったから。

「開けなさい。」

私がもう一度そういうと、少し悩んでいたヤミも小さくではあるがうなづいてくれた。ドアノブに手をかける。そして、ゆっくりとドアが開けられた。

「……え?」

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